迷宮
「ここが迷宮か」
無事に迷宮にたどり着き、入ることができた律は、迷宮を下っていた。
(迷宮の魔物が出てくるのは三層からだから、この階段を降りたらだな。じいさんからの情報だと一桁階層のやつらは弱いって話だったよな)
「『気』でどの辺にいるか確かめてみるか」
律は『気』を練り、どんどん階層に広げてゆく。
「少ししかいないなぁ~。もう狩り尽されてるのか?」
『気』を全身に纏った律は、近くの敵の前まで駆ける。
「いた」
律の目線の先には、真っ黒のゴブリンがいた。
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種族:ゴブリン(幽魔)
Lv.2
【魔力】1
【体力】20
【筋力】15
【視力】10
【回復力】10
【俊敏性】10
【柔軟性】5
ーースキル
【殴打Lv.3】
ーー種族スキル
【無性生殖】
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「幽魔、か。域外のゴブリンとほぼ同じだな」
律の影から、先程買ったばかりの薙刀が這い出てくる。
ゴブリンは律を見つけると、滅茶苦茶な走り方で奇声をあげながら飛び掛かってくる。
(はじめて魔物を見る門下にとっては、これは怖いだろうな)
律は足を一歩下げ、ゴブリンの攻撃を避けながら、ゴブリンの足に薙刀をひっかけて転ばせる。
「弱い者いじめしてるみたいで申し訳ない。」
律は弧を描くように薙刀を振り下ろし、ゴブリンの息の根を絶った。
「この階層はゴブリンばっかりいるみたいだな」
そうつぶやいた律は、ぞろぞろと現れた5体のゴブリンと対峙する。
「グギャアァァ!」
一斉に飛び掛かってくるゴブリンは、高速で振るわれた刃に裂かれ、絶命した。
「前の世界じゃこの薙刀をあの値段では買えなかった……」
律は満足したように手元の薙刀を見ると、影にしまった。
「素手でどのくらいステータス持ちとやれるか試してみないと」
強い『気』を全身に巡らせた律は次の階層へと進んでいった。
「これは強すぎるか」
『気』を強く纏った律の手によって顔の上半分が吹き飛ばされた魔物は、電池が切れたロボットのように地に崩れ落ちる。
律は迷宮の魔物で、実験をするように感触を確かめていた。相手のステータスを確認し、ステータスの数値に丁度良い『気』の量を探る、という作業を淡々と繰り返す。
「強すぎる『気』を籠めるとスプラッタだな。稽古のとき気を付けよ……」
(域外だと倒すことしか考えてなかったからなぁ。。)
律はため息をつきながらどんどん深層へと降ってゆく。
「10階くらい下がったか?」
(遭遇する人も少なくなってきたし、技の研究の方に移るか)
律は影から飛針をすべて取り出すと、慎重に『気』を籠め、『蒼』の力で浮かばせながら操作し始めた。
「桜の攻撃の中に混ぜれば殺傷能力上がるよな……。離れすぎると操作性落ちるのが一番の課題かな」
「お、きたか」
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種族:リジェネレイトゴブリン(幽魔)
Lv.32
【魔力】50
【体力】100
【筋力】50
【視力】5
【回復力】500
【俊敏性】10
【柔軟性】5
ーースキル
【打擲Lv.5】
【魔力認識Lv.5】【魔力操作Lv.5】
【魔力放出Lv.3】【魔力身体強化Lv.2】【魔力纏Lv.1】
ーー種族スキル
【無性生殖】
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「だいぶ強くなってきたな」
律はニヤリと口角をあげて、浮遊する飛針を敵の方に向ける。
「グギャ」
今回の敵は律の様子を伺い、魔力による身体強化を行った。
「なんかやったな?雰囲気が変わった」
リジェネレイトゴブリンは、律に飛び掛かるが、律の手刀によって腕を落とされ、飛針で脳天を貫かれる。
「思ったより大したことないか?」
律がそうつぶやいた瞬間、リジェネレイトゴブリンの腕が生えるように再生し、切り落とされた方の腕からは、胴体が生えてきて、二体に増えた。
「まじか」
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種族:リジェネレイトゴブリン(幽魔)
Lv.10
【魔力】10
【体力】50
【筋力】20
【視力】5
【回復力】140
【俊敏性】10
【柔軟性】5
ーースキル
【殴打Lv.1】
【魔力認識Lv.1】【魔力操作Lv.1】
ーー種族スキル
【無性生殖】
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「無茶苦茶な増え方する魔物だな、、、細切れにしたら倒せるのか?」
律は飛針をしまいながら、桜を影から取り出す。
「訓練もかねて、頑張ってみるか」
桜が律の周囲を高速で旋回する。
「まずは小手調べということで」
「【桜吹雪】」
桜の半球の大きさが拡大し、リジェネレイトゴブリンたちを飲み込む。
悲鳴も上げられずに、ぼろぼろの蜂の巣になったゴブリンは、その場に倒れこむ。
「普通のゴブリンだったら、ただの液体になるんだけどな、そこは上位種か」
「グギャ、ガ」
リジェネレイトゴブリンは傷口から蒸気をあげながら、再び立ち上がり、飛び散った四肢はそれぞれ新しいリジェネレイトゴブリンになる。
「頑丈だなぁ。でも細かいのは増殖しないんだな。全部液体になれば復活しなさそうだな」
無造作に空間を漂っていた桜が、本体のゴブリンの周囲に集まり、徐々にゴブリンを包み込むような大きな桜の花びらが形作られてゆく。
(桜の花の中央からゴブリンが生えてるみたいだな)
「【血染桜】」
大きな桜の花が、ゴブリンを閉じ込めるように閉じる。閉じた花の内部では、花びらがミキサーのようにゴブリンを切り裂き続ける。
しばらくすると、内側が紅色に染まった桜が花開いた。
「倒せたみたいだな。次はお前らだぞ?」
律は増殖したゴブリンに笑いかける。
「【血染桜】」




