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旧友


「だいぶ暗くなってしまったな。ここが、夜桜総合病院か。」

律は、祖父の龍玄に渡されたメモに書いてあった夜桜総合病院に来ていた。

(病院か、俺の知り合いが入院でもしてるのか?普通だったらもう高齢だもんな)


「1105号室か、少し遠い」

律はメモにある部屋のある病棟へと進んでゆく。


「そこの人~!勝手に入らないでここで受付してってください~!」

律が病棟に入ろうとすると、看護師のような人物が律を引き止めた。

「あ、すみません。」


「この面会票に記入してください。」

律は面会票に記入し始めるが、患者さんの氏名の欄が書けずに筆が止まっていた。

「1105号室の人に届け物があって、名前は分からないんですが」


「え~?名前が分からない?」

看護師は怪しむように律のことを見る。

「はい。すみません。祖父のお使いで来たので」


「ふ~ん……なるほどお使いですか。」


「分かりました。では外に出るまでは必ずこれを首にかけてください」

首かけストラップを受け取った律は建物を登り始めた。

「はい。わかりました。」







部屋の前に着いた律は部屋のネームプレートを見て目を丸くしていた。

「瀧谷、健二。健二のことだったのか」

部屋をノックした律は中からの返事を待つ。

「はい。どうぞ」


「健二……。」

律はベッドに座り外を眺める健二を見て、思わず言葉を失った。

「……まさか、律」

健二は律の顔を見て長い時間考えた後に、律の名前を呼んだ。


「そうか、ようやく帰ってきたのか……お前は」

健二は律にやさしく微笑みかけると、自分の隣の席を軽くたたいて、座るように言った。

「ああ、随分長い間外にいてしまったみたいだ。自分では4年くらいだと思ってたんだけどな、間抜けな話だ。」

律は椅子に座りながら健二に話しかける。

「そうか、修行バカのお前なら外でも生きていけると思っていたが、ほとんど年も取ってないとは、さすがだな。私、いや、俺は、寄る年波には逆らえなかった。この通り、もう立派な、おじいちゃんだよ。」

健二は、律の知る頃の面影を残した顔で笑いかけた。

「バカとはなんだ、バカとは。あのイケメンもこうなると普通のおじいちゃんだな。」

律はやわらかな表情で健二を見る。


「だが、おじいちゃん、と呼ばれるのもそんなに悪くない気分だよ、律。お前の祖父の龍玄様と肩を並べていられないことを悔やむ気持ちを抱くこともあったが、年を取るのも悪くない」


「そうか。もう孫がいるのか、、?なんだか先を越された気分だな」

律は肩をすくめて笑いかける。

「ああ、7年程前に生まれたんだよ。腕の中に抱いたときは、今までの悩みが全て吹き飛ぶような気分だった。……こっちは先に行き過ぎてしまった、という気分だがね」

健二は棚の引き出しから一枚の写真を取り出し、律に見せながら言った。


「そうか。おめでとう。」

律は写真を見ながら、健二に笑いかけた。

「ありがとう。最初の頃はね、お前を若い姿のまま迎えれるように、レベル上げに勤しんだものだが。私……俺にも大切な人ができてね。前線から離れたんだ。今前線に残っている前の世界を知る者達は、正真正銘の強者、体もそうだが、心が何より強い人たちだ」

健二は何かを思い出すように、寂しそうな表情で律に話しかけた。


「そうか。そんなことを考えてくれてたなんてな。ありがとう。」

律は窓から外を眺めながら言った。

「前の世界を知る人たちは、もう少数だ。……この綺麗な街並みは、色んな犠牲の上で成り立っている。」

健二は続けてつぶやく。

「私は心配だ。四大流派の長たちはいずれも休むことなく戦い続けてきた方々。いつか壊れてしまわないだろうか。」


「…………」


「これからは代替わりの時代だと思っている。期待できる若者たちが次々に出てくるだろう。彼らを導けるのはお前だけだ。」

健二は少し困惑している律を見る。

「難しいことではない。お前はそのままでいれば、彼らはお前の背中から多くを学ぶだろう。」


「…………」

律は言葉を紡げずに健二を見る。


「俺はまだ生きるつもりだが、何かあれば孫のこともよろしく頼むよ」

健二は冗談っぽく律に笑いかけた。

「ああ、任せろ。今度紹介してくれよ」

律も健二に笑いかける。


「心強いな。今度紹介するよ。今日はもう遅い、名残惜しいがそろそろ終わりにしないと。また来てくれ」


「わかった。また来るよ。」

律は、部屋を立ち去った。



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