訓練
次の日ーーー
俺は学校を休んで、この異常な力のコントロールの訓練を続けている。訓練の中でいくつか分かったことがある。
まず、気功(ひとまず気功と呼ぶことにする)は強く纏えば纏うほど体の強度が上がるということ。
次に、気功は目に見える形で纏わなくとも筋力の強化が可能だということ。
さらに、気功が筋力だけでなく、疲労回復や体力へも作用するということ。
「凄まじい力だ、それだけにコントロールがかなり難しいが」
短期間でこれだけ気功をものにできているのは、ひとえに今までの修行のおかげだろう。ここは素直にじいさんに感謝しなければならない。
訓練を続けるほど、本当に昔話に出てくるような気功のようだと思えてきてならない。
気功は、内気功と外気功に分けられる。内気功は気功を体内に循環させ、気の質やコントロールを高めてゆくもの、外気功は悪い気を追い出したり、気を発するなどして何かしらの形で外部に作用するものである、らしい。
「そのことを考えると、内気功と外気功の両方の修行が必要になるだろうな。
内気功は体内だけで完結するから、ある程度まではそこまで難しくないだろうが」
外気功は体に纏う程度ならば簡単にできるが、ひとたび体から離れてしまえば気の操作は非常に難しくなる。
つまり、しっかりと会得しようと思えばかなりの苦労が予想される。
「まあ、ひとまず学校に行く程度であれば気を外に出さないようにするだけで問題ないか」
「外気功はこのくらいにしてとりあえず、内気功を最小限にする訓練をしないと」
抑える訓練をしないと周りに怪我をさせてしまう可能性もある。
俺はなんとなく座禅をして、体内の気を強く意識する。すると、この間までは確実になかった『気』の存在を、確かに感じることができた。
(これを何とかして鎮めないと……)
じっとりと額に汗がにじんできた。背中にはTシャツがぴったりと張り付いている。
そして二時間ほどが経過した、
「これは少し内気功を舐め過ぎてた」
循環だけではさほど難しくはないが、効果を弱めるように、流す『気』を少なくしてゆくのはかなり難しかった。
「これはもしかすると明日も学校、行けないかもしれないな」
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<東都所轄北警察署内>
「五十嵐先輩!出ますよ!事件っす!」
黒いスーツを着た糸目の刑事、田代がやたらとガタイの良い男に向かって叫ぶ。
「おう、待ってろ、」
五十嵐は冷静な様子で返事をし、車に向かって足早に歩く。
「出せ、」
東都にサイレンの音を響かせながら、一つの車が道路を駆け抜けてゆくーーーー