気功
あの後混乱したまま、森の木をもう三本ほど破壊しながら家に帰った俺は、今までの修行の成果なのか、
家に着くころには異常な力の扱いにも慣れてきて、家に着いてからはドアノブと箸、テレビのリモコンを壊すだけで済んだ。
できるだけ家への被害を少なくするため、夕食後急いで部屋へとこもり、あの青い光とこの異常な力について眉間にしわを寄せながら必死に考えてみたが、
結局、光が異常な力の原因だろうということくらいしか、はっきりと言えそうなことはなかった。
「はぁ……まったく何なんだよ、まあ、とりあえず明日は休んだ方がいいだろうな、」
(この異常な力のコントロールが完全にできるようになるまでは、あまり人と会わない方がいいかもしれない。吹き飛んだ森の木を見る限り、ちょっと肩をたたいたら粉砕骨折なんてことになりかねないな。)
なんて律が考えていると、居間の方からじいさんの声が聞こえてきた。
「なんじゃこりゃぁ?」
まあおそらく律がグッシャグシャにしたリモコンに驚いたとかそんなことろだろうが、
じいさんの足音がずんずんとこちらに近づいてくるのが分かったので、ひとまず俺はランニングへ行くと置手紙を残し、窓から飛び降りて力を試すために再び真夜中の森へとくりだした。
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「戻ってきたはいいもののあの光はもうないな」
光があった場所に戻ってきても、今度は普通の森があるだけだった。
戻って来ればなんとなく何かが分かるかもしれないという淡い期待が打ち砕かれたが、今はとりあえず力のコントロールの練習だ。
「体が仕組みから変わったって感じではないんだよな、気を付ければ今まで通り動けてるわけだし」
型通りに体を動かしながら、体の操作の微調整をしてゆく。筋肉量が増えてマッチョになったというわけでもない。
「だがそうなるとどうして力が強くなったのかがわからないぞ」
「体も変えず、筋肉も増やさずパワーアップとなると、パワードスーツ的な何かか……?」
体を動かしながらも深まってゆく謎に顔をしかめつつ、少しずつ強く力を籠める動きを組み合わせてゆくと、律はあることに気づいた。
「光ってる、のか?」
よくよく目を凝らしてみてみると体の表面がうっすらと青いベールのようなものに包まれているのが見えた。力を込めた場所はより濃く、脱力している場所は薄く、たしかに光っていることが分かる。
「……もしや気功の類の何かか、?」
古くからある健康法や武術として気功があるが、その中に体を極端に強くする物があったという話もある。
気功の達人は寿命を超越し仙人となるような伝説もあった気がするが、
「まさかな」
(でも、現時点では一番それっぽいのが気功なんだよな・・)
気功は万物に宿っているなんて考え方もあるくらいだ。空気に宿っていたとしても何もおかしなことではないのかもしれないが、
「とにかく、この光を自分の意志で消せるようになるまで頑張るしかないな」
ひとまず、延々と考えていても仕方がないので律は集中して力のコントロールに取り組むことにした。