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親睦


「はぁ、かなり警戒されてるな」

律は森に入り食料を探しながら悩んでいた。


「お、いいところに猪がいる」

律は『気』で手を覆い、斬撃を飛ばし一撃で仕留めた。

「おいしくいただきます」


「どうしたら警戒を解いてくれるだろうか……」

手際よく解体の作業をしながら、律は思考する。

「これで美味しい料理を作ればいいのでは?」

表情を柔らかくした律は、急いで四人のもとへ戻っていった。



ーーーーーーーーーーーー


「どうも、ただいま戻りました。何もありませんでしたか?」

律は解体が完了した獲物を手にもって戻ってきていた。


「ええ、特に何もありませんでしたよ。」

泉は野営用のテントの中から出てきながらこたえた。

「それは良かった。ところで、良い獲物が取れたので、一緒にどうですか?もちろん、料理は私がします。」

律はなるべく柔和な態度で提案した。

「私は、喜んで。他の三人にも話してきますね。」

泉はそう言ってテントの中に入って行った。律は焚火(たきび)の火を使って、猪の魔物の肉を焼いていく。


「なんか、美味しそうなにおいがする。」

丹野がテントから這い出てきた。

「ああ、そろそろ焼きあがりますよ。」

律は、森暮らしの中で作成し、影に保存しておいた秘蔵のタレをかけ、皿によそって丹野に渡した。

「おいしい……聖域外でこんな料理が食べれるとは、」

丹野はさらっと一皿食べ終えると、お代わりしたそうに律のことを見つめた。

「お代わりなら、セルフサービスでどうぞ、」

律がそう言うと、ものすごい勢いで焼いてある肉に飛びついた。しばらく無言で調理していると、テントの中から他の三人がぞろぞろと出てきた。


「私もいいだろうか?」

泉がそう言うと、それに西城と黒井も続いた。

「俺もいいですかね、お腹すいちゃって……」

「私もいただきたい」


「ああ、どうぞ。焼いていくので取っていってください」

律はにこやかに焼きあがった肉をすすめた。どうやら律の仲良し作戦はうまくいったようだ。


「おいしい、夜桜さんは何か料理関係のスキル持ってるの?」

丹野が興味津々といった様子で話しかけてきた。

「ああ、私は『料理』スキルをもってますよ」

律はなんてことないようにこたえたが、四人の表情は驚愕に染まっていた。

「『料理』スキル、」

「料理系スキルの最高峰の一つ……」


「どうかされましたか?」

律は様子がおかしくなった四人を不思議そうに眺めながら言った。

「どうかしたって、『料理』スキルは『加熱』『味付け』などの料理系スキルを獲得した先で獲得できる、上位スキルですよ?」

「それぞれの消費SP(スキルポイント)は大したことはないが、全部取るとかなりSPを消費する」


「戦闘職で取ってる人はかなりの変わり者、」

「『料理』スキルは調理道具を使わない料理技術が、『調理』スキルは調理道具を活用する料理の技術が向上する。」

四人は肉を口に運びながら代わる代わる説明した。


「そう、でしたね。そうでした。」

律はごまかすような笑みを浮かべ、どんどん肉を進めた。





ーーーーーーーーーーーー


二時間後


「眠ってしまった。いくら俺がいるとはいえ、油断しすぎでは、、?」

夕食を終えた律の前には、気持ちよさそうにいびきをかいて眠りにつく四人の姿があった。

「霊樹もいないし、魔物は普通に来るんだが……」


(今日は眠れそうにないな。仙人だから大丈夫だけど)


律はめんどくさそうに立ち上がると、周囲から様子をうかがっている魔物の反応を確認した。


「はぁ」

律がため息をつくと同時に、律の影から大量の桜の花びらが飛び出し、眠りこけている四人を守るように半球状に広がる。桜の花びらは、淡い蒼の光を纏い空中に停滞する。

「面倒だ、かかってくるなら一気に来てほしいな。」


(堕ちてしまった化物(ばけもの)に、言葉が通じるはずもなし、か、)


律が抜刀しながら『気』を放出し始めると、周囲には息もできなくなるような重圧がのしかかった。


「「!!グギァ!」」


生まれて初めて感じた感覚に正気を失い、周囲の魔物は一斉に飛び掛かってくる。


「【桜吹雪(さくらふぶき)】」

半球状に広がっていた桜の花びらが高速回転し始め、無策で飛び掛かってきた魔物達を細切れにする。


「刀は必要なかったかな。ここの魔物も弱いな」

律が退屈そうに刀をしまおうとすると、森の奥の方から大きな足音が響いてきた。距離はあるが、魔物は律のことをはっきり認識しているようだ。


(霊樹がいなくなってできた空白地帯に魔物が寄ってきてるんだな)


律は少し楽しそうに笑みを浮かべる。


「なんにしても。退屈しっぱなしってわけでもなさそうだ」

律は、四人を守るように桜を残したまま、影から追加の桜の花びらを放出し、森の中へゆっくりと進んでいった。


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