霊樹
「不自然なくらい魔物がいないな」
警戒を強めながら森の中を進むと、木々が開けて光が差し込んでいる場所にたどり着いた。そこには静かな『気功』を纏った木が一本立っていた。
ーーーーーーーー
種族:霊樹
ーースキル
『鑑定』
『防護』
『念話』
ーー種族スキル
『気功』
<色>
『銀』
『魔除け』
『広域感知』
ーーーーーーーー
「『念話』?話せるのか?」
霊樹に近づきながら疑問を口にする。
((話せるとも))
「!!はなせるのか!?」
((ああ。だが人間と話すのは、久しぶりだ))
「人間と話したことがあるのか?」
初めての手掛かりに少し興奮しながら疑問を口にした。
((夜桜律、君は聖域から来た人間ではないのだな。まさか聖域外で人間が生き残っているとは。君の異質なステータスにも納得できる))
「聖域について何か知っているのか?」
((ああ。聖域からは一年に一回ほど人が来る。))
霊樹に顔などないが少し微笑んでいるように感じた。
「お前たちはどこから来たんだ、?聖域とはなんだ、?あと、聖域はどこにあるんだ?」
俺は長いこと不思議に思っていたが、考えないようにしていたことをきいた。
((私たちは幻世の住人だった。幻世は現世の上位にある世界だ。現世は君たちが暮らしていた世界だよ。))
「なぜ突然現れたんだ?」
俺は突然の情報を処理しきれず、額を抑えながら言った。
((それを説明するには長い時間が必要だ。))
「かまわない」
((いいだろう。ここには魔物はよってこない。座ってきくといい))
霊樹の枝が動き、椅子のような座る場所が作られた。
「ああ」
俺はパンクしそうになった頭をおさえながら枝の椅子に腰かけた。
((幻世とは、現世における理想や空想を具現化した世界だ。幻世の生物は、現世の理性を持った生物の想像を糧に生まれる。
その糧のことを『存在値』という。現世の生物は、日々、想像・空想をすることで『存在値』を消費する。このため現世の生物には基本的に寿命が存在する。日々『存在値』を消費するからだ。
一方で幻世の生物には寿命がない。これは幻世の生物は『存在値』を消費しないからだ。ここまで、理解したか?))
「幻世には空想の生物がいるってことでいいか?」
俺は話の後半を全く理解できていなかったが、なんとなくで答えた。
((そうだ。とりあえずはそれでいい。続きを話すぞ。
幻世の生物には寿命がない。そのため永い時を生き、強大な力を付けた生物が複数誕生した。これらが大きな力を持ったことで、幻世が歪み、支えがきかなくなり、幻世は現世に落ちた。))
「やけに説明に慣れてるな、、」
俺は親切に区切って説明をする霊樹を不審に思い問いかけた。
((聖域から来た人間も同じようなことをきいてきた))
霊樹は葉を揺らしながらこたえた。
((にしても、50年もの間一人で生き残るとは、夜桜よ、お前は聖域の中の人類にとってかなり異質の存在になるだろうな))
「50年?」
((ああ、聖域ができてから、50年程経っただろう……?))
「いや、せいぜい4年だろう。俺はそんなに長いこと森にいたつもりはない。」
俺は混乱しながら枝の椅子から立ちか上がる。
((いや、たしかに50年だ。聖域の者たちはそう言っていたぞ。))
霊樹はもう一度葉を揺らした。
((ああ、霊獣や仙人というのは時間感覚が人間とはかなり違う。ずっと一人でいたならば、あり得ない話ではないな))
「それは、、じゃあ、じいさんは、」
俺がもたもたしていたせいでじいさんと二度と会えなくなるのか、?
((人間には寿命があるが、ステータスのLVを200以上にすると寿命の限界はほとんどなくなる。希望はなくはない。50年で200LVまで行けるかはあやしいところだが))
「そう、か……」
俺は自分の心があまり揺れていないことに違和感を覚える。
「これも、仙人族の特性なのか、、」
((聖域から人が来るのは7か月後くらいだ。それまでここにいればいい。入れ違いになるのは嫌だろう。))
霊樹は自身の木の上に小さな家を作り、そこへ入るように促してきた。
俺が入ろうとすると
((ここに住む条件と言ってはなんだが、一つ頼みごとがある))
「なんだ?」
俺は霊樹が作った家の中に入り、枝に腰かけた。
((幻世の生物が現世に落ちるとき、現世に適応できたものは霊樹や霊獣になり、できなかったものは魔物となった。私は適応できたと思っていたが、そろそろ限界だ。いつ魔物になるかわからん。魔物になったら、お前が倒してくれ。))
「そんなことが。そうか、わかった」
((私からはステータスの隠し方と、この世界のことを教えてやろう。聖域に入るときに必要になるだろう。))
霊樹は少しうれしそうに葉を揺らし、木の枝で人の手形を作り、握手を求めてきた。
((人間の挨拶だよ))
「ああ、よろしく頼む」




