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 俺とじいさんが家を出たとき、至る所から無事を確かめる声や、泣き声がきこえてきた。狼に破られたのか塀が壊されている家がたくさんある。


「これは……」

俺は思った以上に状況が悪いことを悟る。


「はやく行くぞ。途中でできるだけ救助にも加わりながら行く」

じいさんはそう言うと、手が足りなそうなことろへ小走りで駆けて行った。


「あ、ああ」

そう言って俺も急いで駆け出した。


ーーーーーーーーーーーー



「律、そろそろ北署に向かうぞ。」

ひと段落ついて、じいさんが俺に話しかけてきた。


「わかった」


「どうやらかなりの被害が出ているようじゃ。再び奴らが来たらもっと被害が拡大するかもしれん。」


「そういえば、ほかの区はどうなってるんだ?」


「その辺も含めて署の人間に聞かねばならん。」


 そうこうしているうちに北区警察署に着いた。警察署は区役所と隣接しており、多くの職員がせわしなく動き回って、怒号が飛び交っていた。


 中ではこの間家に来ていた五十嵐刑事と、区役所の人と思われる男性が言い争っていた。


「じゃあ一体どうすりゃいいってんだ!」


「だから今すぐ区民に非常電源がある場所に避難してもらうべきだと言っている。電力の供給が途切れた今、区民を守るにはそれしかないだろう」


「そんなことはわかってる!だが、区役所の上層部が全て行方不明な今、この場に責任を取り切れるやつがいないんだよ!」


「そんなことを言っている場合ではないだろう。それに責任なら私がとる。」


「いち刑事のお前に責任がとり切れるわけないだろう!」


「いい加減にしろ、今は非常時なんだぞ! 区民の命がかかってる。責任だどうだと言っている場合ではないだろう!」


 五十嵐が我慢ならないという感じで怒鳴り、役人はたじろぐ。その場に張り詰めたような嫌な雰囲気が流れる。


「わかった、できるだけのことはやろう。区民に自主避難を口頭で呼びかけるくらいであればいいだろう。だが、現実問題として区民を完全に収容できるほど電気のある避難所のキャパシティは大きくないんだよ。」

 役人が疲れたように言い放つ。続けて


「確実に避難所からあぶれる人が出てくる。

 現状、昨日の狼への有効な対抗手段は光だけだ。このままでは避難を促しておいて我々は多くの人に、やっぱり受け入れられないので外で死んでくれと言うことになってしまう。

 こんな時に区民同士の争いを生んでしまいかねない。」


難しい顔をしたまま役人は言った。


 五十嵐が難しい顔をして口をつぐんで、また何か言おうと口を開きかけたとき、突然頭に声が響いた。


<<該当種族に恩恵『ステータス』の効果を反映>>


<<全人類にスキル『簡易鑑定』を付与>>

<<聖域を展開>>

<<人類の聖域への転送を開始>>


「この声は……」

俺がこうつぶやいたとき、俺の周りには人が誰一人いなくなっていた。




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