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赤い橋を渡りお地蔵さんの近くまで来た千代は青い光ギリギリの所で立ち止まりこっちを見据えていた。
『千代、そっちは危ないの。お願いだからこっちへ戻ってきて!』
『・・・・・ここに落とし穴があるというのか?』
『そうよ!落ちたらどうなるかわからない。私みたいに別の世界に飛ばされるかもしれないの!だからここから早く逃げないと!』
『・・・・・。』
千代は振り返り落とし穴の方を見続けている。そして大きくため息をついた。
『・・・危ないと思うならあなたがここへ来て私を引っ張りなさいよ。』
『・・・え?』
『聞こえなかった?あなたがここに来て私を落とし穴から遠ざければいいんじゃないって言ったの。』
目の前に立っているのは千代のはずなのになんだか絶妙な違和感が漂っていた。
『あなた・・・まさか、落とし穴が見えるの?』
『・・・ああ、これ?なんか近くで見るとすごい迫力、確かに怖いよね。』
『千代・・・じゃない・・・あなた一体何者なの?さっきまでの千代は?いつから千代と入れ替わったの!?』
『入れ替わった?やだな、なんの事?私はあなたに初めて会った日から千代だし、その前からも千代として過ごしてきたんだけど。』
『だ、だって喋り方が・・・。』
『・・・まあ記憶が戻るのがゆっくりだったからね。その間に覚えたんだ、この喋り方。』
・・・覚えた?・・・喋り方を?ダメだ、突飛な事過ぎて理解が追いつかない。時継様を傷つけてしまった事で千代は頭がおかしくなったのかもしれない。
『と、とにかく千代、わかっているのかもしれないけどこのままじゃ危ないの。そこから離れて私達と一緒に逃げましょう!』
『・・・逃げる?嫌よ。』
『な、なんで!?』
『逃げたりしたらバッドエンドじゃない。また一からやるつもり?初めからやったとしても今度もどのくらい覚えてるのかわからないよ?めんどうな事してないで、ほら、私はここで消えないと。』
『・・・バッドエンド?何言ってるの?』
『ああ、もうめんどくさいな。この落とし穴の様子じゃゆっくり説明している時間なんてないんだよ!あんたが私をこの落とし穴に突き飛ばせばハッピーエンド、めでたしめでたし、それで終わりなの!いろいろはしょったかもしれないけどそれは私だって記憶が中途半端だったんだからしょうがないじゃない!終わりよければすべてよしでしょ、しのごの言わずに私の言う通りやってくれればいいの!』
目の前で意味不明な言葉を発している千代はかなり焦っているように見えた。
『ゆき、千代、大丈夫か!?』
少し後ろで時継様と秋道さんが待っていてくれてる。それはそうだ、二人には落とし穴が見えないのだから迂闊に近寄れないだろう。
そして私達がやりとりしている間に宴の場所からみんながこちらに向かってきて何事かとザワザワしだしていた。
・・・ああ・・・もう・・・どうしたら・・・。
そしてそんなカオスな状態の中、落とし穴は一際眩しい青い光を放った。
『あーあ、言わんこっちゃない。』




