65 【時継視点】
あれから時が経ち、数日後には千代との祝言の日が迫っている。
自分と屋敷の者総出で街中探したのだがゆきの姿も秋道の姿も見つからなかった。
一体二人に何があったというのか・・・?あの日、何か特別な事があっただろうか。あるとすれば前日の夜に千代に自分の気持ちを打ち明けた事くらいだ。
千代に・・・か、まさかな・・・。
『・・・きつぐさま!時継様!』
ぼんやりと考えているとそこには久しぶりに会う千代の姿があった。
『・・・千代。』
『時継様、ただいま戻りました。わがままで屋敷を出てしまい申し訳ございませんでした。』
『いや・・・体調は大丈夫なのか?』
『ええ、だいぶ良くなりました。』
『そうか・・・それはよかった・・・千代、聞いているとは思うがゆきと秋道がいなくなってしまった。思い当たる場所は手当たり次第みんなで探したのだが・・・未だ見つかっておらん。』
『聞いております。心配ですね・・・一体何処へ行ってしまったんでしょうか?』
『二人がいなくなったのは丁度千代が屋敷から実家へと戻った日だったのだ・・・何か・・・二人の居場所に心当たりは無いか?』
『時継様、まさか千代を疑ってらっしゃるのですか?それは酷すぎます・・・わらわはあの時屋敷を出て自分の気持ちを整理するのに必死だったのですよ!二人の居場所など知るわけがないじゃないですか!』
『あ、ああ・・・そうだよな・・・疑ってすまない。』
あまりの剣幕で怒る千代の姿を見てこれはやましい事など何もないのだろうと思った。
『ゆきからしたら千代を許せないと思うかもしれませんね・・・。』
『・・・え?』
『本当ならばゆきが時継様と結ばれるはずだったのですから・・・。』
千代の言葉を聞いて心苦しく感じた私を千代は真っ直ぐな瞳で見つめた。
『気持ちの整理はつけてまいりました。ゆきと秋道が何処に消えたのか・・・耳にした事がある落とし穴というのが知らぬ間に現れて二人共落ちてしまったのか・・・わらわには真実はわかりません。ゆきは千代を恨んでいるかも知れませんが・・・それでも構いません。千代は小さき頃から時継様、あなたを、あなただけを見てきました。ゆきなき今、時継様と夫婦になれるのであれば今時継様の想いが千代に無くてもこれから必ず振り向かせてみせます。』
迷いのない千代の瞳に吸い込まれそうになりながらも頭の中ではゆきの事を考えてしまう自分がいた。
ゆき・・・そなたは本当にもうこの世界にはいないのか?元の世界に戻ってしまったというのか?
短い期間だったかもしれないがゆきとの楽しい時間が全部夢だったなんて私は信じたくない。
ふと空を見上げると空には綺麗な月が出ていた。
もうすぐ、満月か・・・。




