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お侍さんが目を覚ました事に安堵した私達は襖の外でよかったよかったと喜びあっていた。
すると一人だけ隅っこに浮かない顔をした別のお侍さんが立っていた。
『・・・何かあったんですか?』
あまりにも暗い顔をしていたので思わず話しかけてしまった。
『・・・いや・・・まあ・・・。』
『あ、すみません・・・私になんて話したくないですよね。なんか辛そうだったのでつい。』
『・・・・・。』
気まずくなったので素早く立ち去ろうとしたその時だった。
『・・・待て。』
『・・・?』
今、呼び止められたよね?
『・・・いや、こちらこそすまない。その・・・実は千代様からの御命令を預かってきていて。』
千代からの、命令?
『誠に言いにくいのだが・・・そなたと秋道殿をその・・・牢屋の方に閉じ込めておくようにと。』
お侍さんがかなり言いづらそうに話したその言葉に私も秋道様も周りのお侍さん達も一斉にザワザワし出した。
『え・・・牢屋に・・・。』
『な、なんと・・・この屋敷の中にいるだけではダメなのか・・・。』
『千代様は一体何を企んでおられるのだ。確かに金さえ貰えれば私達は大体の事は手伝うが・・・それにしても・・・。』
すると千代からの命令を伝えてくれたお侍さんが意を決してこう言ってくれた。
『拙者も色々考えたのだが・・・わざわざ二人を牢屋に入れるなど・・・もうしなくてもいいのではないだろうか?少なくとも目の前で苦しむ人を助けてくれたお方だ。千代様はもうこの屋敷に出向く事は無さそうだし、という事は牢屋の中にいても外にいてもわからないわけで・・・。』
『・・・・・。』
お侍さんがそう言い終わった途端辺りは一瞬沈黙に包まれたけど他のお侍さんも続けて言ってくれた。
『・・・そ、そうだそうだ!それにもしここに来る事があったら先回りしてその時に入ってもらえばいいじゃないか。何も閉じ込めるなどしなくてもよかろう。この先いつまでこの生活が続くのか我々も知らされておらん。ならこの場所で皆で楽しくやればよい!』
お侍さん達は私と秋道さんが高熱を出したお侍さんを助けに動いた事でだいぶ心を開いてくれた。そしてその事で千代の命令を無視してくれる流れに自然となった。
『ありがとうございます!』
ここで長い間皆と仲良く暮らす事は私には出来ないと心の中では思っていた。だけど牢屋に閉じ込められていたら益々何も動けなかった事実もある。
複雑な気持ちのまま時継様と千代の祝言の日は刻々と近づいていた。




