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倒れたお侍さんは他の見張りの人達に運んでもらい布団に寝かせてもらった。
『大丈夫ですか!?しっかりしてください!』
水で濡らした手ぬぐいを頭に乗せてお侍さんを励ましていた。
『手ぬぐいあと何枚かありますか!?寒そうですね・・・布団か、無かったら生地の厚い服を持ってきてください!』
見張りの人達もこの屋敷の人ではないんだろう。どこに何があるか全て把握出来ているわけじゃなく、必要な物を伝えたら皆必死に探してくれた。
そうしてバタバタしているとお侍さんは少し意識を取り戻したのか薄目を開けて私に喋りかけてきた。
『何故だ・・・。』
『?』
『何故あんな酷い事をそなたにしたというのに・・・そうやって懸命に私を看病する?』
『そ、それは・・・。』
『私が憎くないのか?』
『・・・それはまあやられた事に対しての怒りはありますよ。普通に痛かったし、アザだってまだ身体にうっすら残っているんですからね!でも、今は話が別です。このままじゃ命に関わるって秋道さんが言ってたし・・・。』
それにお侍さんは気付いていないみたいだが腕にあった紫の斑点がどんどん広がってきている。
『と、とにかくその話はまた後で。今はゆっくり休んでください。』
『かたじけない・・・。』
冷たい手ぬぐいを首と脇の大きい血管が通っている所に当てると少し楽になったみたいだった。布団をもう一枚かけ、食欲が無いみたいだからとりあえず飲めるだけお水を飲ませて眠ってもらった。
出来る事はやったけど・・・たぶん時間が経てば経つほど毒が身体に周ってしまうんだと思う。
眠りについたお侍さんの姿を見て思った。そういえば私がうなされて起きた時秋道さんがそばにいてくれたよね・・・こうやってずっと起きるまで心配してくれていたのかな。薬草、どうか見つかりますように・・・。
ここに来て自分の無力さを痛感していた。こうやってお願いする事しかできない弱くてちっぽけな自分は・・・。
自分は時継様の隣にいるには相応しくないんだな・・・千代の言っていた言葉が頭に浮かんだ。
時継様の背負っているものも何も知らない。どうやったら助けられるのか、どうやったら楽なのか考えても考えても何も思いつかなかった。私は時継様の事を何も知らない、ただ好きという想いがあるだけ。
それだけじゃダメなのかな・・・私が隣にいても時継様を幸せには出来ないのかな・・・。
もしかしたら、これで良かったのかもしれない。
そう思い時継様から離れようとする自分
と時継様の姿を思い出しては胸が苦しくなる自分が喧嘩していた。
秋道さんが帰ってくるまで手ぬぐいを絞り直したりしながら延々と今後の自分について考えていた。




