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秋道さんと二人での生活が始まった。
ご飯は何処かからか見張りの人が毎食持って来てくれた。食べた後食器を片付けて山道に入っていく見張りの人の後ろををついて行ければいいんだけど・・・。
着るものはご丁寧に綺麗な着物が沢山用意されていた。普通に暮らす分には何も困らない状態ではあるけどこんなところに閉じ込めて千代は私と秋道さんをどうするつもりなんだろうか?
見るつもりは無かったんだけど秋道さんが着物を着替えている時にたまたま遭遇してしまった。そしてその際チラッと見た上半身の胸や脇腹には痛々しい殴られたであろう跡があった。私を守る為に出来た傷跡。
『秋道さん・・・。』
『どうした?具合でも悪いのか?』
『私は大丈夫ですけど、秋道さんこそ大丈夫ですか?身体も・・・怪我してますよね?』
『ああ、まあ別にこれくらいならたいしたことないさ。』
秋道さんは苦笑いしたように見えた。本当は痛いんじゃないかな・・・色々と無理をさせてしまって・・・。
『あの、ちゃんと言わないとと思って。』
秋道さんは不思議そうな顔をしていた。
『今回もというか・・・いつも、色々助けてくれてありがとうございます。秋道さんが助けてくれなかったら今頃私は知らない場所で一人ぼっち、途方に暮れていたと思います。迷惑かけてばっかりで本当に申し訳なくて・・・。』
そうして下を向いて気まずいなあと思っていると秋道さんが優しく頭を撫でてくれた。
『・・・ゆきが謝る事はないさ。』
温かい秋道さんの手。秋道さんの優しさに安堵した私は疑問だった事を聞いてみることにした。
『山小屋で・・・千代とはどんな話をしたんですか?』
『・・・・・。』
そう聞いた途端に秋道さんの顔が暗くなった気がした。そりゃそうだよね、私と時継様の話なんて秋道さんからしたら目を背けたい話に違いないだろう。これまで時継様や千代の近くにずっといて二人を見てきたんだから。今更二人が離れるなんて話、聞きたくないよね・・・。
『ゆきに伝えねばならぬ話があるのだ。』
『話?・・・どんな話ですか?』
『・・・実は』
『おいっ!大丈夫か!?』
秋道さんが何か話し始めようとした途端、外でドサッという音と共に見張りの人の動揺した声が聞こえてきた。
『おいっ、しっかりしろ!』
驚いた私達が外に出ると見張りの一人が苦しそうに倒れていた。
『これは・・・凄い熱じゃないか!?』
『い、いや、気にするな。す、少し休めばすぐに良くなるだろう・・・ゔゔっ。』
そう言って失神したのは私と因縁があるあのお侍さんだった。顔色が悪いし汗が滝のように出ている。
『この症状はまさか!?』
秋道さんがすぐに駆け寄ってお侍さんの袖を捲ると腕に紫色の小さい斑点が沢山あって真ん中はぷくっと膨れていた。
『毒虫にやられたんだろう。早く薬草を煎じたものを飲ませないと命に関わるぞ。』
『そ、そんな・・・。』
『この辺にその薬草が生えているかは分からないがとにかく、探して来る!ゆきはここで待って看病してやってくれ!』
『は、はい!』
『しかし、そんな事を言ってそなたに逃げられたら』
『何を言っておる!人の命がかかっているのだぞ、そんな事を言っている場合か!』
そう言って周りに指示を出し秋道さんは山道を走って行った。
秋道さん・・・凄いなあ・・・瞬時に色々判断出来て私だけじゃなく皆を助けてくれる。
頼り甲斐がある秋道さんを素直にカッコイイと思った。




