51 【秋道視点】
『どうか、手を貸してくれないか。そなたはゆきとの未来の為に。わらわは時継様との未来の為に。』
ゆきとの未来・・・か。
千代様が口にした言葉に心が騒めいた。
それは二人が抱き合っているのをを見た日に諦めたはずの想いだった。
これが自分にとってゆきに想いを伝えられる最後のチャンスだろう。どのみちゆきを連れて屋敷を出たのだから時継様の怒りをかうのは間違いない。ゆきと過ごせるのであれば霧島家を出ていく覚悟は出来ていた。
『・・・わかりました。』
『そうか!決断してくれて嬉しいぞ!』
千代様は嬉しそうに私に握手してきた。
その後私は伝えられていたように後から殴られて揉み合う演技をしながらゆきに逃げるように指示した。前に二人で出かけた時に遭遇した泥棒への態度を見ればゆきが身動き出来なくなるだろうという事は想定していた。
ゆきに麻袋がかけられたのを確認した私達はわざと壁を蹴ったり、そのへんにあった物を地面に叩きつけ激戦を装った。
『秋道さん、大丈夫!?ちょっと、離してください!』
抵抗しようとするゆきを見て自然と助けようと動いてしまう私を手で制し、千代様はゆきの元へゆっくり歩いていった。
『哀れだな。所詮力がある者が勝つようになっておる。』
千代様・・・作戦に乗ったとはいえ千代様のゆきに対する憎しみには気をつけなければならないだろう。今は手を組むとしても今後ゆきに直接危害を加える事の無いよう私が守らなければ。
『秋道を連れてくるとは想定外だったが・・・まあいい、連れていけ!』
『はっ!』
担ぎ上げられるゆきに罪悪感を感じながらも私は黙って見ているしかなかった。
『ちょっとやめてください!秋道さんは!?秋道さんは無事なんですか!?私が悪いんです!秋道さんは道案内してくれただけで何も関係ありません!私はどうなってもいいから、せめて秋道さんだけでも助けてください!』
『黙れ。お前の言う事など誰が聞くか。いちいち耳障りな・・・生きてるだけでありがたいと思え。』
千代様はそう言うと野武士の一人に顎で合図をし野武士はゆきに近づくと首筋を叩いて意識を失わせた。
『ゆき・・・すまない・・・。』
やりすぎだとは思ったが起きたままではゆきは暴れるだろうし、私の事を心配するだろう。
『私にゆきを運ばせてくれ。』
そう言って意識がなくなったゆきを抱き抱え千代様らについて山道を歩き始めた。
『着いたぞ。屋敷は自由に使え。周りは見張りをつけるようにするから上手く言うんだぞ。わらわはとりあえず実家に戻り色々と準備を整える。ゆきには祝言の事など思い出させないように長くここで過ごすのだ。式さえ挙げてしまえば後々ゆきが出戻りしようがわらわと時継様の間に入ってくることはできまい。』
そう言って千代様は実家に戻って行った。
『頼みがある・・・何発か殴って貰えまいか。』
それから残った野武士の一人ににそう頼み込んだ。
『あれだけ芝居をして私が無傷だったら変に思われるだろう。』
『しかし』
『遠慮はいらん。身体は人一倍丈夫に出来ているからな。』
そうして顔と身体を何発か殴ってもらいゆきが起きるのを待ったのだ。




