46 【千代視点】
『そ、それは・・・』
『どのようにしてたぶらかしたのだ?怖い女じゃ、あらかた時継様の優しさにつけ込んで変な薬でも飲ませたか、不可解な術でも使ったのだろう。でなければ時継様が急にあんな事を言い出すはずがないのだから!』
時継様の瞳を思い出し、鼓動が早くなるのを感じた。そうだ、きっと時継様もこのおかしい女に変なまやかしを見せられているに違いない。
『そんな事するわけないじゃない!』
ゆきの大きな声が一層わらわを不快にさせた、引き続きゆきに冷たい視線を向けた。
『大体そなたは時継様の事をどう思っているのだ?』
『それは・・・。』
『好きなのか?』
わらわは確信をつくことにした。すると突然ゆっくり動き出し、床に頭をつけて土下座してきたではないか。
『な・・・』
ゆきに土下座などしてもらっても何も嬉しくはない。それどころかわらわに謝ってきた時継様の姿と重なってしまい、身体中に鳥肌が立った。
『・・・本当に申し訳ございません。最初の段階で時継様にはあなたという許嫁がいる事は聞いておりました。だから時継様を男性として見る事などないと思っておりました。』
ゆきの背中が震えているのが見えた。
『この世界で毎日を過ごすうちにいつからか・・・いつも優しく接してくれる時継様の事が・・・好きなってしまいました。』
よく考えてみよ、泣きたいのはわらわのほうだとは思わんか?悍ましい程のゆきに対する憎しみをこちらはなんとか堪えているというのに。こんなにも自分本位の女に、わらわは負けているというのか?・・・なぜに?
『は・・・なんだそれは・・・そなた自分が言っている事がわかっているのか?じゃあ何か、知らないうちに時継様とゆきは惹かれあっていてわらわが邪魔になったから二人して謝罪して許してもらおうとしているということか!そんな・・・謝ればなんでも許されるわけなかろう!人を馬鹿にするのもたいがいにしろ!わらわが時継様をどれだけ好きかなんて初めからわかっていただろうに!なんで今になってどこから来たのかもわからない得体の知れない女に大切な人を奪われなければならないのだ!それに・・・二人が惹かれあっていたからといって事実を告げたらわらわだけでなく周りがどう思うか。わらわの父上や母上は納得しないだろうし、名家の娘を傷物にしたとなれば霧島家としての名誉も地に落ちるだろうな。』
『・・・・・。』
『そなたはどうせ自分の想いしか考えてないのだろう。時継様が背負っているものも知らずに、なんて浅はかな女だ。わらわではなくそなたが少しは頭を冷やしたほうがいいのではないか?』
軽蔑にも似た気持ちでわらわはそう言い捨てた。




