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千代の言葉は重く突き刺さり返す言葉が見つからなかった。確かに時継様はあの大きなお屋敷のトップにいるお方。単位が町なのか県なのかは分からないけどそれ相応の責任ある立場にいるはずだ。
そんなお方が婚約破棄するだけでも大事なのに更にどこから来たのかも分からない相手と一緒になると言ったら皆すんなりとは納得出来ないだろうし混乱を招いてしまうだろう。
そうだよね・・・ただ好きってだけで一緒になれるような相手じゃないんだよね・・・。
浮かれていた想いとは裏腹に突き付けられた現実。
山道を登る私にはただ時継様を好きだという想いと謝罪の言葉、千代からどんな酷い事を言われてもとにかく謝り続けなければという頭しかなかった。
難しくてもなんとかした先には時継様との未来があるのだと・・・でも千代の言葉を聞いて自分の考えがとても甘くて浅はかだったと思い知らされる。完全に自分にいいように夢を見ていたんだ。頭を鈍器で殴られたような衝撃で夢から覚めた感覚に襲われた。
『ここには・・・秋道と来たようだな。』
茫然と頭を下げ続けている私の上から千代が冷めた口調で話かけてきた。
『そうだな・・・そなたでは話にならない故、少し秋道と2人で話をしよう。外で待っていなさい。』
・・・なんでここで秋道さん?一体何を話すつもりなんだろう?
そう思ったけど反論出来る気力も残ってなく一度外の空気を吸って冷静になりたかった。私はそのまま千代に従う形になり静かに外に出た。
『ゆき!大丈夫か!?・・・二人で何を話したんだ・・・千代様は無事か?』
近くで待っていた秋道さんはすぐに駆け寄ってきてくれた。
『私は大丈夫です・・・あの、秋道さんと話がしたいとおっしゃっています。』
『千代様が私と?』
『はい。話の内容はちょっと分からないんですけど・・・』
千代は秋道さんに何を話すんだろうか?私と時継様の事だとは思うけど、この事をどう伝えるんだろう?そしてそれを聞いて秋道さんはどう思うんだろうか・・・?
どうしよう、けしからん!みたいになって今まで沢山助けてくれた秋道さんに今度はどこかに捨てられる立場になっちゃったり・・・でもまあ・・・それも仕方ないのかな。
よくよく考えれば優しい秋道さんがそんな事するなんてあるはずないのに。これからについて暗い妄想ばかり浮かんでしまっていた。
・・・この時の私は時継様と自分の事を考えてばかりだった。
秋道さんの想いも知らず、曇り空の下で木々に囲まれながらしゃがみ込んで千代と秋道さんが話終わるのを待っていた。




