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『そんな事するわけないじゃない!』
思わず大きな声が出た。
『大体そなたは時継様の事をどう思っているのだ?』
『それは・・・。』
『好きなのか?』
真っ直ぐこちらを睨む千代から目を離す事が出来なかった。ちゃんと、言わないと。そう、伝えたい事があってここに来たのだから。
私はゆっくりしゃがみ込み手と膝をつき、頭を床につけ土下座の態勢になった。
『な・・・』
一瞬千代の動揺した声が上から聞こえてきた。
『・・・本当に申し訳ございません。最初の段階で時継様にはあなたという許嫁がいる事は聞いておりました。だから時継様を男性として見る事などないと思っておりました。』
屋敷で初めて時継様に会った時の事を思い出した。あの時、見ず知らずの怪しい私を見ても動揺せずにすぐに優しく手を差し伸べてくれた。
違う世界から来たと言う私の話を真面目に聞いてくれてお地蔵様の元に連れて行ってくれた。
青い光を見た事で怯えている私を抱きしめてくれた。信じると言ってくれた。
思えば世界のほとんどは冷たくて、運命とは時に残酷でそれでもなんとか生きていかなきゃいけないものだと思っていた。
何も自分で動こうともせずにただ自分の人生はきっとこの冷たい温度のままで過ぎていくんだろうと思っていた。
でも、違った。
時継様と出会えて人が温かい事を知った。誰かを大切に想う事を知った。誰かに大切に想われる事を知った。
はたからみたらそれは最低な事かもしれない。けど結末がどうであれ今出来る事をやらないと、伝えないと絶対後悔する。
『この世界で毎日を過ごすうちにいつからか・・・いつも優しく接してくれる時継様の事が・・・好きなってしまいました。』
震える身体と共に泣きそうになるのをぐっとこらえた。
『は・・・なんだそれは・・・そなた自分が言っている事がわかっているのか?じゃあ何か、知らないうちに時継様とゆきは惹かれあっていてわらわが邪魔になったから二人して謝罪して許してもらおうとしているということか!そんな・・・謝ればなんでも許されるわけなかろう!人を馬鹿にするのもたいがいにしろ!わらわが時継様をどれだけ好きかなんて初めからわかっていただろうに!なんで今になってどこから来たのかもわからない得体の知れない女に大切な人を奪われなければならないのだ!それに・・・二人が惹かれあっていたからといって事実を告げたらわらわだけでなく周りがどう思うか。わらわの父上や母上は納得しないだろうし、名家の娘を傷物にしたとなれば霧島家としての名誉も地に落ちるだろうな。』
『・・・・・。』
『そなたはどうせ自分の想いしか考えてないのだろう。時継様が背負っているものも知らずに、なんて浅はかな女だ。わらわではなくそなたが少しは頭を冷やしたほうがいいのではないか?』




