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ゆきへ
例の山小屋で待っている
一人で来るように
千代より
例の山小屋とは私が投げ飛ばされて怪我をしたときに最終的に置いて行かれたあの場所だろう。記憶を辿れば道なりに行くとこまでは分かる。
でも、草むらに入ってからの道は流石に覚えてないな・・・。手紙を見ながらしばらく考えた。もしかしたらこれは罠かもしれないし、また危ない目に遭う可能性は高い。そう考えると1人で山を登るのは得策とは言えないな。
時継様に言おうか・・・いや、余計な心配はかけたくないし千代も時継様には言って欲しくないだろう。
いずれにせよ私達はきちんと話し合うべきだと思う。
『ゆき、どうしたのだ?』
これからどうしようか迷っているとふいに声をかけられた。
『秋道さん・・・。』
そうだ、もし秋道さんが側にいてくれればこの前のような事があってもきっと戦って守ってくれる。それに山小屋から助けてくれたのも秋道さんだし、道に迷う確率も低いだろう。
そう考え私は意を決して秋道さんに手紙を見せた。
『なっ、これは!?まさか、本当に1人で行くつもりではあるまいな!千代様が何をお考えでどのように待ち構えているかはわからん。とにかく時継様に』
『時継様には言わないでください!』
秋道さんが言い終わる前に私は懇願した。
『千代が一番傷つくのは時継様に知られる事だと思うんです。それに私達、ちゃんと2人きりで話し合わなければいけないことがあるんです。きっと千代もそれを望んでいるはずです』
『し、しかし・・・。』
『どうか、言わないでください。お願いします。』
私は必死に秋道さんに頭を下げて頼みこんだ。
『うむ・・・ならば、もしもの事を考えて私も一緒に山小屋までついていこう。小屋に着いてから2人が話し合っている間は外で待っている。それならよかろう?』
秋道さんはかなり困惑していたけどこうしてなんとか時継様に秘密にしてくれる事になった。それに自らついて来てくれるなんて心強い・・・。
後からバレて時継様にはひどく叱られるかもしれないな。でも、そうなってしまったらそれまでだ。秋道さんには申し訳ないけど・・・結局また助けてもらう形になってしまった。
『山小屋までは遠いし、山道はかなり急だが覚悟は出来ているか?』
『はい、大丈夫です!』
私は足袋にスニーカーを履いて準備をする。この際見た目なんて気にしてられない。屋敷内がざわざわしている中で私達は裏口からコソッと抜け出した。
時継様と千代は一体どんなやりとりをしたんだろう。そして千代は何を想い、私と時継様に手紙を書いたんだろう。
息が切れる中、私は必死になりながら山を登る事になった。




