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街に着き早速3人でお団子を食べ始める。秋道さんとお団子を食べた時以来、この世界に来てからはご飯を食べる時は基本1人だったのでなんだか嬉しい。
『秋道、食べ終わったらしばしゆきと2人きりにしてくれまいか。』
『なっ!?も、もし何かありましたら!』
時継様は何回か見たことある有無を言わせない視線を秋道さんに向けていた。
『し、承知致しました・・・しかし、何が起こるかわかりません。私は少し遠目に付いております!』
『うむ、そうか・・・まあよい。』
街には露店がいくつか並んでいて私は時継様と色々見ながら歩きまわった。そこで息を吹きかけたら回る風車や橙色のお花が書いてある漆塗りの黒い櫛を買ってもらった。
普通に2人で並んで歩けるのも少し離れた街だからこそ出来る事。そしてもしかしたらこんな事が出来るのはこれが最後かもしれない。そんな事を考えながら歩いていると小さな川が流れているふもとにシロツメクサが咲いているのが見えた。
『時継様、そういえばずっとお渡ししたかったものがあります!』
そう言って私は道端にしゃがみシロツメクサを編み始めた。時継様はそれを見て優しく寄り添ってくれる。
『編むのはどこで習ったのだ?』
『たぶん・・・お母さんからだったと思います。手先が器用な人で小さい頃は身につけるものを手作りで私に色々作ってくれました。今思えばその時に色々習っておけばよかったなと思います。』
『そうか。私も今思えば父上からもっと積極的に武術など習えばよかったかもしれないな。』
触れて来なかったけど屋敷に来てからは時継様のお父さんやお母さんにお会いした事が無い。きっと何かしらあるんだろうとは思っていたけど口に出して聞いてみた事はなかった。
『よし、出来ましたよ!』
話を遮ろうとシロツメクサの首飾りを時継様にかけてあげた。
『前も時継様にと作ったことあったんですよ!でもその時はちょっと思いがけずダメになっちゃって・・・やっと渡せましたね!』
そう笑顔で時継様に伝えた瞬間、フワッと温かい感触に包まれた。
『え・・・。』
驚いて身体が瞬時に固まった。私、今、時継様に抱きしめられてる・・・よね?
『ゆき、こんなに細く小さい身体で今までよく頑張って一生懸命生きてきたな。』
それは誰にも言われた事が無かった言葉。そして本当は誰かに言って貰いたかった言葉。
ああ、私はずっと誰かに認めて貰いたかったんだな。そう改めて気づかされた途端瞳からポタポタと涙が溢れ出してきた。
『時継様・・・ありがとう。』
この言葉を言って貰えただけでこの世界に落ちてきてしまった事にも意味があると思えた。




