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街から街への道はほとんどが田んぼ道で道端にはシロツメクサを始め色んな草花が生えていた。
天気も良くスズメの鳴き声が聞こえてくる一本道は歩いていてとても清々しい。私は大きく深呼吸した。そういえば私の実家の近くも最寄駅から離れるとすぐにこのような何もない田んぼ道が広がっていたっけ。
私が小さい頃に両親は離婚し私は母子家庭で育てられた。お父さんの存在は本当にうっすら頭の中にあるくらいで顔はよく覚えていない。そして私を一生懸命育ててくれたお母さんも私がやっと独り立ちしたと思ったくらいに急性心筋梗塞で倒れて亡くなってしまった。苦労をかけてきた分これから親孝行しようと思っていた矢先だった。ボーナスが出たら一緒に温泉旅行に行こうと計画を立てていた。
いつか自分が死んだらきっとお母さんに会える。そう思うと死ぬ事も少し怖くなくなった。もしお母さんが生きていたら私は元の世界にすぐ戻りたいと思っただろうし、落とし穴に落ちる勇気を出すことが出来たのかもしれない。
まあでも実際お母さんどころか知り合いが誰もいない謎の世界に降り立ってしまったと思うと・・・やっぱり私は死んでる訳じゃ無さそうな気もする。
一人ぼっちになってからはより仕事に没頭する日々を送るようになった。下手に暇な時間が出来てしまうと色々とマイナスな事を考えてしまったり、実は殺伐とした日々にも助けられていた事も多かったな。仕事と会社の往復で私は狭い人間関係しか持っていなかった。
この世界に来て最初は屋敷にいる全員にかなり警戒されていたけど一部の例外を除いては日に日にみんな優しく接してくれるようになっていた。ストレスや孤独感から解放された日々をまさかこのよく分からない世界で送れるとは・・・。
『ゆき、大丈夫か?さっきからボーっとしているように見えたが何を考えていたのだ?』
『す、すみません、ちょっと母の事を考えていて。』
『そうだな、あちらの世界から急にゆきがいなくなったら家族もさぞ心配している事だろう。』
『私・・・父とは疎遠で連絡をとってなくて、母は数年前に亡くなったので・・・私がいなくなっても心配してくれる家族はいないんです。』
『そ、そうか・・・すまない、辛い話をさせてしまった・・・。』
時継様は立ち止まってとても悲しそうな顔をして私を見ていた。後ろにいる秋道さんも神妙な面持ちだ。
『あ、全然大丈夫です!気にしないで下さい!もしかしたら向こうで一人ぼっちだった私が可哀想で母がこちらの世界に送ってくれたのかもしれませんし・・・なんて。』
どうしよう、暗い話をしたかった訳じゃないのになんだか二人に気を遣わせてしまう結果になってしまった。
『あ!』
なんとか話を変えようと遠くを見ると丁度良く隣街が見えてきた。
『お腹すいたんで3人でお団子食べませんか?』




