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それからしばらくして時継様は隣町の当主との会合に出席するために出掛ける事になった。というのは表向きの話で実際は私とお出掛けするためになんとかこじつけで理由を作ってくれたらしい。
『秋道だけで宜しいのですか?他のお付きも連れて行ったほうが・・・。』
『大丈夫だ。秋道さえいれば心強い。それに向こうに行くのにあまり大人数で行ってもかえって気を遣わせてしまい失礼にあたるだろう。』
千代は時継様を信じて純粋に心配しているようだった。その姿を見て少し心が痛む。まあでもやられた事に比べれば私なんて可愛いもんだろう・・・とりあえずそう前向きに考える事にした。
時継様が出発してしばらくしてからお手伝いさんの買い物のお付きとして出掛ける手はずになっていた。このお手伝いさんは私が千代に水をかけられたのを見てしまった方だ。今回内内に協力してくれる事になった。
街を少し外れたところで時継様と秋道さんと待ち合わせる。
『おお、来たか!』
目立たないように時継様はいつものキラキラの着物から秋道さんの目立たない着物にお着替え済み。でもどんな着物を着ていようとカッコイイのは全然誤魔化せていない。帽子みたいなのを被って顔を隠した方がいいんじゃないだろうか・・・。
『では私はこれで・・・。』
お手伝いさんはそそくさと帰ろうとしていた。
『待て。手を煩わせて申し訳無かった。また夕方以降ここで待ち合わせしよう。これで何処かで待機していてくれ。』
時継様はお金が沢山入った袋を胸から取り出した。
『そ、そんな!時継様、さすがにこんなにはいただけません!』
どれくらいの価値かは分からないけど明らかに重そうなくらい大金が入っている袋をお手伝いさんに渡すものだからお手伝いさんもかなり困惑してしまったようだった。
『まあ、よいではないか。気にするな。あまり人目に付かずゆっくり休んでくれ。』
きっと何を言っても下げるつもりのない時継様を悟ってかお手伝いさんはそれを手に取ると深くお辞儀をして何処かへ行ってしまった。
『・・・さて、この街ではこの格好をしていても顔が知れていて見つかるやもしれん。話にあったように本当に隣街まで歩こうと思う。少し遠くまで歩くがゆきはそれで大丈夫か?』
『あ、はい、大丈夫です!』
本当に時継様と屋敷の外で会えるなんて・・・悪い事をしているとは思いつつテンションが上がってしまうのは抑えられない。
そんな私の姿を見て秋道さんが複雑な心境だったって事はこの時は知る由もなかった。




