22 【千代視点】
・・・今頃あの女は土地勘の無い遠くの山小屋に捨てられているのか、いい気味だ。わらわの大切な時継様に手を出そうとするからバチが当たったのだ。
あれからどうやってゆきを時継様から離そうか色々考えた。わらわの側にはいつも家来達がついている。直接手を下すことはなかなか難しい。慎重に動かねば。
そこで秘密裏にお金でなんでも請け負ってくれるという野武士を雇ったのだ。
『いいか、痛めつけて自分のした過ちを反省させ出来るだけ遠くに身柄を捨ててくるのだ。もう二度とこの街に戻ってくる事が無いよう念を押すのだぞ!捨てた後はお前も足がつかないようにこれで遠くにお逃げ。』
そう言って沢山のお金が入った袋を渡した。
暗くなり屋敷内ではゆきが夜遅くまで帰って来ない事にざわざわし始めていた。
『千代!ゆきが帰ってないみたいだ、何か知らんか?』
『時継様、ゆきはわらわの代わりに昼間買い物に出かけてもらいました。その後帰ってないのですか?わらわのお付きも一人付けたのですが・・・その者も未だ帰ってきておりません。何かあったんでしょうか・・・心配ですわ。』
『そうか・・・。』
時継様がゆきを心配する顔をしているのを見て思わず嫌な気分になった。あんな女どうなったっていいのに。ともかくこれで時間が経てば時継様もゆきの事など忘れるだろう。
そう思い安心した時だった。
『と、時継様!』
一人の家来がベラベラと興奮して喋り始めたのだ。
『実は私、今日の日中二人が街の中を歩いているのを見たのです。街からどんどん離れた方に歩いていたのでなんとなく気になって・・・そのままこっそり跡をつけました。』
『おお、そうか!それで、二人は何処に!?』
『そ、それが・・・なんとも言いにくいのですが二人は人気のない場所の空き屋に入って行きまして・・・その・・・確証は無いのですが二人が逢引きしていたのを見てしまったのではないかと思い・・・びっくりしてそのまま帰ってきた次第です。』
『ゆきが・・・屋敷の人間と・・・逢引き?』
時継様は言葉を失っているようだったのでわらわはこれ幸いと畳み掛けた。
『な、なんと・・・ゆきとやらも大胆な事をする娘ですね。でもその方と無事に結ばれたのならよかったのではないですか?屋敷の生活が窮屈になって自ら家出をしたのかもしれませんよ?』
『そのような事を・・・本当に・・・ゆきが?』
何を喋り始めるかヒヤヒヤしたがこれで時継様もゆきの事など頭から消える事だろう。
これで心置きなく祝言の日が迎えられるというものだ。




