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ガラッ。扉が閉まる。
・・・あれ?
建物の中はほとんど何も無く、至る所に埃がかぶっていてどうやら使われていない空き屋のようだった。
『あのここって・・・うっ!』
不思議に思ってお侍さんに話しかけようとした瞬間にお腹を殴られ、うずくまっているところを身体ごと思いっきり突き飛ばされた。
その衝撃で床にゴロゴロ転がり壁に激突した。打ちどころが悪かったのか呼吸が苦しい。
『え・・・な、なんで・・・?』
『悪く思うな。』
そう言うとお侍さんに大声を出せないように素早くの口を布で縛られた。抵抗も虚しく私は足を持たれ後ろ向きに肩に担がれた状態で外に出される。そしてそのままお侍さんは街とは反対の山の方へ歩きだした。
ど、どうしよう。一体このまま私をどこに連れて行くつもりなんだろう。助けを呼ぼうにも口を塞がれているし、暴れようとするとさっき殴られたどころがズキンと痛んだ。その他にも壁に激突した衝撃であちこちが痛い。
そ、そうだ・・・。
時継様にあげようしていた首飾りを一旦自分の首から下げていたのを思いだした。
こういう時、何か自分が辿った証を残せば誰かが見つけてくれるかもしれないし、この先隙を見つけて逃げ出せたらそれを辿って自分で戻ってこれるかもしれない。
首からシロツメクサの首飾りをとった私は音を立てないように慎重にシロツメクサの花を一つずつ道に落としていった。
しばらく歩いていくとお侍さんは道があった場所から草むらのある方向へと曲がり進み始めた。
まずいな・・・草むらの中ではシロツメクサも同化して見えなくなってしまう。もうしょうがない、一か八かだ!
そう考えた私は残りのシロツメクサの首飾りの残骸をそのまま道へと置くことにした。
お願い、誰かこれに気付いて!!
それからしばらく山を登ったところに小さな小屋があり私はそこに放り投げられた。衝撃でごほっ、ごほっと咳き込む。
『私の仕事はここまでだ。このような山道の途中に使われてない小屋があることは誰も知るまい。そなたも身分をわきまえて過ごせばよかったものを・・・時継様に色目など使うから千代様の逆鱗に触れてこのようなことになるのだ。悪いことは言わん。この金で何処か違う街にでも行って慎ましく生活するんだな。』
そう言ってお侍さんはお金が入った小袋を私の方に投げた。
何言ってんのこの人。私が時継様に色目?ちょっと待って、って事は最初から千代はグルで嵌められたってこと!?
パニックなっている私をよそにお侍さんはさっさとその場からいなくなってしまった。追いかけようとしても身体のあちこちが痛くて素早く動けそうに無い。
やっとの事でなんとか小屋の外へでると辺り一面木々に囲まれている。これじゃあ一体どの方角からここに登ってきたのか全然分からない。
もうすぐ日が暗くなってくるだろう。身体の痛みを考えても今すぐここから動く事は得策ではなかった。
とりあえず、今日はここにいるしかないな・・・そうして私は一晩山の中で怯えながら夜を過ごす事になった。




