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『ご馳走様でした!』
お団子を食べ終えた私達は再び歩き始めた。
『ここを真っ直ぐ行けば大通りに出る。そこはいろんな物が売っているぞ。』
『ちょっとここで待っててもらってもいいですか?』
秋道さんは不思議な顔をしてたけど私は構わず石橋の近くにあった階段を下った。
川の近くにシロツメクサが咲いているのが見えたのだ。
シロツメクサは本来寒い時期に花を咲かせる植物ではないはずだ。
もしかして見た目そっくりだけどシロツメクサでは無いのかな?それとも私の知ってる世界とは違う場所だからシロツメクサも寒い時期に花が咲くとか?
『何をしておるのだ?』
秋道さんも下に降りて来てしまった。
『秋道さんはこの草花知っていますか?シロツメクサっていって、私がいた国では割と有名な草花なんですよ。』
『ほう、そうなのか・・・そなたは花が好きなのか?』
『・・・ゆきです。』
『???』
『私の名前です。お主とかそなたとか知っているのに名前で呼んでくれないのって私がいた世界では結構失礼なんですよ?だから、これからはゆきって呼んでくださいね!』
私はお前さぁ、みたいな呼ばれ方は嫌いなのだ。
『あ、ああ・・・。』
秋道さんは若干引いているように見えたが私は全然気にしなかった。
もともと花がそんなに好きな訳ではない。それでもしばらくそこにしゃがんで黙々と作り始めた。
『よし、出来ました!時間が無いからちょっと小さいですけど!』
秋道さんは何のことだかわからずにポカーンとしている。
『本当はもう少し大きく作れたら花冠とか首飾りとかにしたかったんですけど、小さいサイズなんでしょうがないですね。秋道さん、手を出してください!』
言われるがまま手を出してくれる秋道さんの手首に今完成したばかりのシロツメクサの腕輪をつけてあげた。
『お団子のお礼です!さあ、先に進みましょう。』
これでお団子の分はチャラになった気でいた。
城下町とでもいったらいいのか大通りには木造の建物がずらっと並んでいて道端でも風車とかかんざしとか手鏡とか小物を置く売店もちらほら見かけた。
街を歩いている人々はとても楽しそうにしており、和やかなムードが漂っている。
平和な時代・・・なのかな。
『あの、この辺には神社とかないんですかね?』
『神社?ああ、もう少し山の方へ歩いた所にあるが・・・。』
『じゃあそこに行きたいです!』
『街を、見たかったんじゃないのか?』
『えっと、それもそうなんですけど。』
私は何か物が欲しくて街に出たんじゃない。この世界をもう少し詳しく見てみる必要があると思ったんだ。
神社とか、神様に近い場所に行けば何か手がかりが見つかるかもしれない。
『まあ、いいだろう、着いて来なさい。』
こうして私は秋道さんに神社まで連れて行ってもらった。