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宣言通り秋道さんは私を待っていてくれた。
『お待たせしました。』
・・・?
なんか一瞬秋道さんが動揺したように見えたけど?
『・・・いくぞっ!』
やっぱり気のせいだったようだ。
履き慣れてない草履でただでさえ歩きづらいのに秋道さんは気にもとめずスタスタと早足で行ってしまう。
あれじゃあ私着いてけなくて迷子になっちゃうんですけど・・・まあ今ぐらいの道なら流石に覚えてるし、一人でも帰れるでしょ。秋道さんめんどくさそうだからはぐれたことにして一人で楽しんでもいいかな・・・そう思った時だった。
『な、何しておるのだ!』
秋道さんが走って戻ってきた。
『着物にスニーカーは合わないので草履にしたんですが・・・あ、スニーカーっていうのは私が最初に履いていた履物です!でも草履はあまり履いて歩いた事がないので歩きづらくて・・・早く歩けません。』
『そ、そうか、なら早く言えばいいものを!』
言う前にスタスタ行ってしまったのは秋道さんじゃないかとは思ったけどここで口論しても始まらないので我慢した。
ふと前を見ると椅子に座って三色団子を食べている人が見えた。
あ、あれはまさしく時代劇でよくあるシーンじゃないか!
グゥー。
興奮すると共にお腹が鳴ってしまった。
『なんだ、腹が減ってるのか?』
これは普通に恥ずかしい・・・お団子は食べたいけどそういえばよくよく考えたら私はお金を持っていなかった。見切り発車もいいとこだな。
私が途方に暮れていると秋道さんは店員さんに話しかけていた。
『おい、お主、ここに座れ。』
秋道さんは椅子をポンポンして私を呼び寄せる。え、ま、まさか・・・。
すぐに店員さんがお団子とお茶を二つずつ持ってきてくれた。
『ほら、食べろ。』
『いいんですか?私、お金持って無くて・・・。』
恐る恐る聞いてみる。
『なんだそんなことか。お金のことは心配しなくてもよい。何か街で欲しいものがあれば私に言え。』
え、そうなの・・・前言撤回、秋道さんとはぐれなくてよかった・・・。
でも、秋道さんに借りを作るのはどうなんだろうか?なんかまずい気がするんだよな・・・ま、いいか。危うく無銭飲食から逃れた私はるんるんでお団子を食べ始めた。
『美味しいか?』
『はい、ご馳走していただきありがとうございます!』
お店の前には大きな川が流れていて少し行った所には石橋がかかっている。川のせせらぎ眺めながら私は久しぶりに癒されていた。
屋敷の中は安全だけどみんなから見れば私が不審者な事には変わりない。常に誰かに全ての行動を監視されていて気が休まる時がなかった。
まあ完全に一人っていうわけにはいかなかったけどそれでもここで外の空気を吸えた事は大きかった。