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青春  作者: 狸寝入り
4/6

バレンタイン

バレンタインの青春です。この話だけでも楽しめます

「よし!」


 玄関に置いてある鏡を見ながら、淡いピンクのリップをぬって、気合いをいれる。


 2月14日、バレンタインデー。


 私はこの日のために、チョコを作ったのだ。


 それを鞄にいれて、家を出る。


 すぐ向かいの幼馴染みの孝君の家にいく。


「はーい。宮ちゃん。今日も迎えにきてくれてありがとう」


 インターホンを鳴らすとすぐに、おばさんが出迎えてくれた。


「いえいえ。すみません、孝君まだ寝てますか?」


「そうなのよ、毎日困ったものよね? 起こしてあげて」


「あ、はい」


 許可を得て、家に上がる。


 高校にはいってからはこれが日課になっていた。


「うん~」


 孝君の部屋にはいると、孝君がうなされています。


 どんな夢見てるんだろう?


 少し観察してみることにしました。


「宮――」


 私?


「そんなことしても、胸はでかくならないぞ?」


「せいやー!」


 寝ている孝君のお腹に正拳突きをきめます。


「ぐっぅぅっ」


 孝君が、くの字に飛び上がりました。


「おはよう 孝君」


 私はニコッと笑みを浮かべて挨拶をします。


「……お、おはようございます。大佐」


「誰が大佐よ! アホなのといってないで、学校行くよ?」


「イエスマム!」


 ふざけているのか敬礼をしてきたので、チョップいれて部屋からでました。


「あら、起きた? コーンスープ飲んでく?」


「あ、おばさん。ありがとうございます、いただきます」 


 廊下に出ると洗濯物を抱えたおばさんがそう聞いてくれたので、いただくことにします。


「リビングで待ってて」


 おばさんはそう言って、パタパタと早足で歩いていきました。


 手伝いたいけど、孝君の下着は……


 想像して、顔が暑くなってきました。


「何に突っ立てんだ?」


「ひゃぅ! た、孝君。着替えたんだね」


 突然声をかけられて、変な声を出してしまいます。


 いつのまにか私の後ろに、制服に着替えた孝君がいました。


「朝食食べるから、少し待っててくれ」


「う、うん。私もスープ飲むから、リビングに行こ?」


 孝君は制服がとっても似合います。


 孝君の短いボサボサの髪を見ながら、リビングに一緒に行きました。


 朝食を終えたあと、私たちは学校に向かいます。


 ここからが勝負。


 チョコを渡して、あわよくば……です。


「何時も悪いな、起こしてもらって」


「いや、私は別にいいよ? ただ、大人になるまでには、起きれるようにならないとね?」


「ああ、そっか、宮が起こしてくれないのか?」


 なんだかがっくりした感じで言われました。


 そんなに私と居たいと思ってくれてるのかな?


「どうしてもって、言うなら起こしてあげるわよ?」


嬉しかったので、そう言ってあげます。


「ウーン、殴らないなら、頼みたいかな?」


「それは、孝君が悪いんだよ!」


 私は胸が小さいことを気にしているのに、あんなことを言うなんて。


「俺が悪いのか? まあ、起きてないのはそうだな」


 違うよ、覚えてないのかな?


「はぁ、まあ良いけどさ。それより今日何の日か知ってる?」


「え? あー、煮干しの日だっけ? おやつにもいいよな」


 マニアック! 知らないよ! そうなの? 普通に考えて、バレンタインデーだろう。



 心の中で、激しくツッコミをいれてしまいます。


「そうなの? それは知らなかったな」


「お、予想外の回答だったか? これ以外だと……」


 顎に手を当てて、考える仕草をとりました。


 バレンタインデーだよ。てか、その仕草も格好いいな~。


「分かった?」


「いや、分からん」


 きっぱりと言われた。


 男らしすぎる。


「そ、そっか」


「ああ、正解は?」


「え~と、放課後まで待って」


 タイミング的に今は渡すべきではないと、私はそれだけ言って走りました。


「え、あ、待てよ」


 ・・・・・・・・・・


「リア充爆発しろ、こんな日は地獄だ。そうだろ、山田」


「へ? ああ、そうでござるな」


 教室に入ると、入口で男子二人がそう喋っているのが耳に入ってくる。


 これはチャンスでは? 孝君も意識するはず。


「はぁはぁ……宮、早いぞ」


 後ろから息を切らした孝君が、追い付いてきました。


「ごめん、ごめん」


 どうやら息を整えるのに夢中で、周りの声は聞こえてないみたいだ。


 そこからは予想外の連続です。


 放課後まで完全に気付くチャンスはあったのに、孝君からはバレンタインデーのバの字も出てくる事はありませんでした。


「なぁ、放課後になったぞ?」


 一人、教室の自分の席で座っていると孝君がそう入口から声をかけてきます。


「え? うん。あれ? さきに帰ったんじゃなかったの?」


 私は今日用事があるって言ってたのに、どうしたのかな?


「いや、放課後になったら教えてくれるんだろ?」


 あ、そう言えばそう言ってたな。


「そうだったね……孝君」


 私は立ち上がって、ゆっくりと孝君の方に歩いて行きます。


「おう」


「今日はね――バレンタインデーだよ? 本当に気付いていなかったの?」


「え? あぁー、そう言われたらそうだな。まったくもって忘れていた」


「ふふ、孝君らしいね」


「だからみんな、お菓子をくれたのか……」


「え? もらったの?」


 私は驚いて、歩く足を止めました。


 後ろ手に隠したチョコを、強く握ります。


「ああ、告白してきたやつもいたな」


 そうなんだ……出遅れちゃったな……


「どうしたんだ?」


 黙ってしまった私に、孝君は心配そうな声で、そう聞いてくれました。


「ううん。それは良かったね」


 涙を吞み込んで、精一杯の笑みを浮かべて祝福をします。


「え? 断ったぞ? 俺、好きなやついるし」


 それはそれで、私は失恋しちゃったな。


「そうだったんだ。知らなかった。どんな子?」


「え~、髪がショートで、明るくって――」


 聞くのは辛いのに、何故だか聞いてしまいました。息を殺して、うつむいて聞きます。


「朝起こしてくれる。宮、お前が好きだ」


「え?」


「俺なんかに好かれても嫌かな? ずっと好きだったんだ。高校に上がったら、告白しようって決めてたんだ」


「遅いよバカ! バカ、バカ」


 多感の側に駈け寄って胸を叩きました。


「悪いって、返事を聞かせてくれないか?」


「そんなのいいに決まってんじゃん! 私もずっと好きだったんだから」


 私は手に持っていたチョコの袋を開けて、チョコを一つ取り出し孝君の口に押し込みます。


「うぉ、え?」


 孝君が目を白黒させて、驚いた顔を浮かべました。


 私は少し背伸びして、その口を自分の口でふさぎます。


「ハッピーバレンタイン。孝君」


 私のファーストキスは、チョコと幸せの味でした。








久々の更新ですね(笑)青春ポイントたまりましたか?


このシリーズは青春ぽい一幕を書き連ねているだけなので、ショートオムニバスのような話になっています。


更新は不定期ですが、私の進化(笑)共々今後ともよろしくお願いいたします

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