忘れていた魔法の言葉
今回は前回と違い、友達がいない女の子が主人公です
私がこの学校に転校してきたのは、一年の初めの夏休み直前のタイミングだった。
もうクラスメイトは各グループで予定を決めていて、私は完全にクラスで浮いてしまう。
このタイミングで転校させた親が、少し憎い。
まあ、友達の作り方も分からない私は、どのみち浮いていただろう。
新学期になった今も一人でお昼を食べて、本屋によって帰る。
ただその繰り返し……
そんな日常に嫌気がさした私は本屋で買った本をカバンに入れて、とあるセルフタイプのカフェにやってきていた。
私とは違うタイプのギャルやサラリーマン、窓際でパソコンを触っているよく分からない人が入口からも見えている。
「いらしゃいませ」
カフェに入るとレジカウンターの店員さんが明るく声をかけてきた。
「あ、アイスカフェラテお願いします」
その店員さんの前に行き、注文をします。
「サイズはどうしますか?」
「……」
そう言われた私は、メニュー表を見て固まってしまいました。
(ショート? トール? グランデ? ペンティ? Мサイズって言っていいのかな)
「ご注文を繰り返します。バニラクリームフラペチーノのトール、エクストラホイップ、モカシロップで、チョコレートソースをダブルで追加、アーモンドトフィーシロップを追加ですね?」
「うい」
横のレジで何やら呪文と、それを頼んだ山姥メイクの子の返事が耳に入ってきます。
(え……何、今の呪文? 回復系なの? 分からない……私にはやはり、お洒落なカフェはまだ早かったかな)
「お客様?」
私が黙り込んでしまっていると店員さんが不思議そうな声で聞いてきた。
「すみません。普通の……Мサイズってどれでしょうか?」
「それでしたら、トールくらいがそれになると思いますよ? トッピングのカスタムは私のおすすめでもいいですか?」
店員さんは笑顔のまま、お勧めのトッピングまで申し出てくれる。
「ありがとうございます。お願いします」
注文を無事に? 終えた私は端の方の席に座り、パフェにしか見えない飲み物を横目に小説を取り出した。
「この量のトッピングが無料なんだ……」
凄い量の生クリームをつつきながら、声を漏らしてしまう。
ただ、飲み始めるといい感じの甘さでかなり美味しい。
「……!」
私は読み始めた小説のとあるセリフを見て、驚きました。
(そうか……こんな簡単なことだったんだ。この店の注文より簡単だ)
「……」
私は小説にのめりこんで、最後まで読んでしまう。
今日買った本は、留学生が友達を作ってゲームセンターにくりだしていく話だった。
カフェラテを飲み切った私は足早に帰宅し、明日の備えを万全にし眠りにつきます。
・・・・・・ ・・・・・・
次の日の昼休み、私は依然読んだことがある本を読んでいる子を見かけて、声をかけることにしました。
「えっと、久坂さんだよね?」
その子は本を閉じ私の方を見て、そう確認するように言ってきます。
「はい。その、私もその本を読んだことがあったので、感想とか言い合えたらなって」
「そうなんだ。でも以外、久坂さんいつも一人でいるからてっきり人と関わりたくないのかと思ってたよ」
そのクラスメートの子はけらけらと笑い、そう言ってくる。
「そんなことないですよ。それで__」
「私と友達になってください」
いいタイミングだと思い息を整えて、昨日憶えた友達を作る呪文をくり出します。
「!? 何それ、そんな言葉、小学生以来聞いてないよ」
その子はいっそ笑って__
「いいよて、言うだっけ。私は陽子狩野よろしく」
そう言って、握手をしてくれました。
カフェの注文より簡単な“友達になってください”という何時しか忘れていた簡単な言葉。
たったその一言、それだけで友達ができました。
(完)