遊園地
遊園地に来た忠信の運命やいかに
(約束の時間は五分前、つまり小生は騙されていたでござるな)
忠信はそう結論付け、一人、チケットカウンターの列に並ぶ。
今いる場所は、町にある小さめの遊園地だ。
(まあ、隙を見てひとりになるつもりだったから言いでござるが……これだからリアルは……)
心の中で、ぼやきながら自分の番を待つ。
土曜日ということもあり、かなりの数の人がいる。
「わりー。お待たせ」
肩をたたかれ振り向く。
「え、花殿。……そちらの子は……」
振り向くと金髪にギャル風メイクの花が、見知らぬ小さな女の子を連れて立っていた。
「ああ、妹。ほら、挨拶」
「高野メイ、五歳です。姉がお世話になってます」
礼儀正しく、お辞儀をしてて挨拶をしてくれる。
「おお、小生は山田忠信であります」
「へー。そういう名前だったんだ」
花と呼ばれた子がそう言う。
「な、小生の名前を忘れていたでござるか?」
「ごめん、ごめん。。まだちゃんと自己紹介してなかったから、小生だと思ってた」
笑いながら言われる。
「まあ、言いでござるが。まひる殿はまだでござるよ」
「ああ、こないよ」
「ふぁ!? どういうことでござる」
「あの二人には違う場所を教えて、いけなくなったて、言ってあるから」
「そんで、よく考えたら小生君の連絡先知らないから、直接来たみたいな」
「そうでありますか……ではこれで小生も、用がありますゆえ」
「ねえ、遊園地はいるなら一緒していい?」
「ふぁ!? な、なぜであります?」
「妹が遊園地行きたがっててさ、用事も付き合うし大勢のが楽しいでしょ?」
(リア充理論でありますな……だが今日の用事は……)
「お姉ちゃん、まだ入れないの?」
「メイごめんね、後ろ並び直さないと」
忠信が迷惑がっていると思ったのか、「じゃっ」と言って離れいく。
「まつでござる。小生はかまわないでありますよ。寧ろ、妹君は言いでありますか?」
「メイはいい?」
「うん。このお兄ちゃん面白いし」
「面白いでござるか?」
「うん、ござるなんて言う人初めて見たよ?」
「ふふ」
そのやり取りに、花は少し笑い声をもらす。
「そうでござるか……とりあえず、今日はよろしくでござるよ。メイ殿」
「うん。お兄ちゃん」
こうして三人で遊園地で遊ぶことになった。
「ようやく入れたでござる。メイ殿は、何処からまわりたいでござる?」
人の少ない端に移動して、作戦を立てる。
「メイね、ポリキュアに会いたいの」
(小生と同じ目的でござるか……ラッキーでござる)
「あ、ごめん。そういうショーがあるらしいんだ。その間、別行動でいい? こっちの都合ばっかで、ごめんね」
「いや、小生もポリキュアを見に来たので、一緒するでござるよ」
「ほんと~。なら、一緒にいこ、お兄ちゃん」
「ホントにいいの?」
「もちろんでござる。最前列で見るでありますよ」
「おー」
メイが忠信の声に反応して、こぶしを突き出す。
・・・・・・・・・・
「楽しかった~」
「いやー意外と楽しめるんだね、こういうの」
「そりゃあ、ポリキュアは国民アニメでござるからな」
各々感想を話しながら移動する。
「そろそろ、お昼でござるな? メイ殿、何が食べたいでござるか?」
「う~ん。メイ、もう少し遊びたい」
「そうでござるか……花殿も大丈夫でありますか?」
「うん。てか、小生はいいの?」
「小生の用事は終わったでござるから、花殿達に付き合うでござるよ」
「そ……ありがと」
色々なアトラクションを周り、お昼にフードコートでハンバーガーを食べ。またメイが乗りたがった、アトラクションに乗りまくり気が付けば日が沈み始めていた。
「……」
「メイ、まだ寝ないでね」
「メイ殿、かなり張り切っていたでござるから、疲れたんでござるな」
「ね、今更なんだけど……何で名前で呼んでくるの?」
(な、今日まで知らなかったからとはいえ、こんなモブのような男に下の名前で呼ばれたらやはり、不快でござるな。ここは謝って……)
「すまないでござる。花殿の苗字を知らなかったので、次からは気を付けるでござる」
「いや、花でいいけど。そうなんだ……今日はありがとね、妹の相手まで」
「小生このような経験なかったでござるから、楽しかったでござるよ」
「そうなんだ。じゃあさ、またどこか行く?」
(何でござろう、これはいい感じなのでは? いや、落ち着くであります。相手は、金髪ギャル、これはキモオタをいじくって、楽しもうと……)
「まあ、暇があればいいでござるが」
「良かった! じゃぁ。また学校で」
はじけるような笑顔でそう言って、メイをおんぶし花は遊園地の出口に歩いて行く。
(ふぁぁぁぁぁー。惚れてまうやろーーーーー)
一時間ほど呆けて、忠信も帰路についた。