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世にも奇妙な異世界物語  作者: ジョン・タオレサーナ
5/5

第5話 世にも奇妙な異世界転移

これにて終了です


「さっきから何してるんだ?」


 昼飯を食べ終えたヤチが眠そうに言う。


「ん、木を削ってんだよ」

「似合わないなぁ、何でそんな事してんだ?彫刻家にでもなる気か?やめてくれよ、俺の相棒はガウレリオしかいないんだからさ」

「別に、暇つぶしだよ」


 4、5センチ四方の薄い木の板を俺は小さなナイフで削っていた。

 彫刻なんて簡単だろうと思っていたが、意外と難しい。


「怪我なんてするなよ、治すのは俺の仕事なんだから、余計な仕事増やさないでくれよ」

「大丈夫だって、心配すんなよ」


 そう言ってヤチを一瞥した刹那、ナイフが指の腹を滑った。


「いって」

「だから言ったじゃないか」


 ヤチは両手を挙げ大袈裟に言った。


 今日はまだ1匹も魔獣を見ていなかった。

 ヤチが仕掛けておいた罠にも痕跡は無く、午前中は足跡や木の傷、糞を探して歩き回った。

 調子の良い日は2匹狩ることもあるが、今日は良くない日のようだ。

 俺はナイフと木の板をしまい軽くストレッチをする。


「午後はもう少し奥まで行くか」

「そんなに張り切らなくてもいいんじゃない?森の奥は危険だよ?」

「なんだよ、どうせ帰ったってやる事もないんだし、金だって必要だろ」

「お金は大切だけど、別に困ってないしさ、ガウレリオと組んでからは特にね、他の奴らは普通3日に1回しか狩りに行かないんだよ、普通はハントと戦ったら何かしら怪我をする、そうすると精神的にもくるし、相棒の魔法使いは治癒に攻撃に魔法を使うから凄く疲れちまう、なのに俺達は2日に1回も来てる、ガウレリオは滅多に怪我しないしほとんど一人で倒しちゃうんだから、俺はトドメにちょっと魔法を使うだけで大助かりだよ、ガウレリオみたいな奴は初めてだ、大した防具も付けないし、剣も槍も棍も使わない、手に変な金属の塊握ってハントを殴って倒すんだからさ」


 ヤチは一気に捲し立てると前歯をベロリと舐め、前髪を小指で弾いた。

 ヤチはメリケンサックの事を変な金属の塊だと思っている。わざわざ鍛冶屋に頼んで特注で作ってもらったのに。

 

「そろそろ行こうぜ、ヤチ」

「あ、待ってよ」


 俺が立ち上がるとヤチは急いで水筒から水を飲み荷物をカバンに詰め込んだ。




 正面に座るユムアは果物が練りこまれたクッキーの様な物を頬張っている。


「何の本買ったんだ?」


 今日は朝からトレーニングをした後、ユムアの買い物に付き合っていた。

 本を買った後カフェで昼食をとり、今はユムアの家にいる。

 間取りはヤチの部屋とほとんど同じだったが、家具やカーテンの色は明るく、窓際やテーブルにはユムアが育てていた花が飾ってある。

 白い花弁にピンク色のハートの模様の入った小さい花で、ユムアが一番好きな花らしい。


「お花の本だよ」


 ユムアはカバンから買った本を取り出しテーブルの上に置く。


「去年のお誕生日にお母さんにもらった花がもうすぐ咲くんだけど、ちょっと元気ないんだ、枯らしちゃったら大変でしょ、だから育て方ちゃんと調べとかないと」

「もうすぐ誕生日だったな。ユムアは何歳になるんだ?」

「んーとね、今年で26だよ」


 ユムアを自分より年下だと思っていたせいで一瞬驚いたが、この世界の1年と俺の知っている世界の1年が同じ日数なのかわからない事に気付いた。


「サガラは何歳なの?」


 前の世界だと18歳だったが、ユムアには何歳に見えているのだろうか。


「俺は何歳に見える?」

「んーーー、30くらいかな?」


 前の世界だと30はおっさんと呼ばれる年齢だったが、さほど歳の変わらないユムアはまだあどけなさが残っている。少し頭が混乱してしまったので歳のことは考えない事にした。


「まぁ、それくらいだよ。それよりお母さんにもらった花はどれだ?」

「あ、待ってね、えーっとね、これだよ」


 ユムアは開いたページを指差し言う。薄いピンク色の大きな花弁を持った花の絵が写っていた。


「綺麗だな」

「そうでしょ、咲いたら絶対見にきてね」

「あぁ、楽しみにしてるよ」


 家に入る時、軒先に植木鉢が3つ並んでいた。きっとあれが母親からもらった花なのだろう。

 30センチくらいの茎に大きな蕾が沢山付いていた。


「将来はね、大きな庭のある家に住んで、お花や野菜を育てたいな」

「ユムアは植物が好きだな」

「愛情を注いで花や野菜が実と、とっても嬉しいでしょ?」

「子育てしてるみたいだな」

「そんな大袈裟じゃないけどね、でも子供も大好きだよ、サガラは何が好き?」

「俺の好きなもの?」


 そんな事考えたことがなかった。ボクシングは別に好きと言うわけではない。趣味も特にない。なんだろうか。

 ふと見るとユムアが小指で自分を差しニコニコしながら俺を見ていた。




 雲が太陽を遮り森は蒼然としている。


「雨なんか降ってきたらやだなぁ、今日もまだ1匹も狩れてないのにさ、どうするガウレリオ、今日はもうやめにして帰るかい?」


 ヤチは体力が無く頻繁に休憩を取ろうとする。今度からトレーニングに付き合わせて鍛えてやろうか。


「ヤチ、お前体力無さ過ぎだぜ、最近あんましハント狩れてねーんだからよ、ちったー気合い入れてくれよ」

「だからってあんまり森の奥に行くのはオススメしないね、森の奥にはガウレリオでも倒せないようなでかいハントがいるんだから、噂では普通のハントの倍くらいあるって」

「なんだよ、噂かよ、大丈夫だって、もしそんなでかいのがいても二人で倒しゃ良いじゃねーか、ほら、立てって」


 俺はヤチの腕を取り立ち上がらせる。


「はぁ、わかったよ、行くよ」




 どれくらい歩いただろうか。獣道を外れ今まで来たことの無い場所までやってきた。


「見ろよヤチ」 


 俺は声を潜めヤチに教える。1匹のハントが木の根本にいた。地面に転がっている何かを食べている。

 

「どうだヤチ、不意打ちできそうか?」


 ハントとの距離は20メートルくらいはありそうだ。

 俺達は地面から突き出した岩の影にいる。


「無理だよ、この距離じゃ魔法が届かない、届いてもほとんど威力が無いよ」

「そうか、じゃぁ俺がもう少しこっちにおびき寄せて戦うから、隙を突いて頼むぜ」


 ハントは再生能力が高いらしく、殴ったり切ったりしただけじゃ倒せない。

 最も簡単な倒し方が魔法で頭か胸を貫くことなのだが、ハントの動体視力だと普通に魔法を放ってもよけられてしまう。そのために動きを止めたり、注意をそらす相棒が必要になるらしい。

 俺はストレッチをしてポケットから取り出したナックルを手にはめる。


「ガウレリオ、ちょっと待って」

「どうした?」


 ハントは急に顔を上げるとどこかへ走り去って行った。


「気付かれたか」

「ち、違うよ、奥だよ、森の奥」


 ヤチは指を差し囁くように言った。

 森の奥から巨大なハントが出てきた。


「この森の皇帝だ、見るのは初めてだけど間違いないよ」

「なんだよヤチ、冗談かと思ってたぜ、俺たちでも倒せないでかい奴がいるなんてよ。さすがにあんなでかいのとは戦いたくねーな、やり過ごすか」


 岩から少しだけ顔を出し皇帝を観察する。体長は普通のハントより2回り程でかく、頭には枝分かれした鋭い角が2本生えている。

 皇帝は先ほどまで別のハントが食べていた物を手に取ると一口で飲み込んだ。

 食事が終わると皇帝は顔を上げキョロキョロを顔を動かし、俺達の隠れている岩の方を向くと歯を見せて笑った。


「まずい、気付かれてるぞ!」


 俺がそう叫んだ瞬間、皇帝が突進を始めた。


「ヤチ、時間を稼ぐから先に逃げろ」

「ガウレリオはどうするんだよ!」

「すぐ追いつくさ、ヤチは脚遅いだからよ、早く行きな」


 巨大な衝撃と音が響く。皇帝の角が岩に突き刺さっている。


「そうだ、これユムアに渡しといてくれ」


 ポケットから指輪を取り出しヤチに渡す。木を削って作った指輪に、街で買った小さな宝石をいくつか嵌め込んだ物だ。


「結構良い出来だろ?」

「じ、自分で渡せばいいだろ!」

「いいから早く行けよ」


 俺はヤチを突き飛ばし岩陰から駆け出す。


「絶対帰って来いよな!」


 ヤチの叫び声が聞こえる。

 皇帝は岩から角を抜くと雄叫びを上げた。

 






「どこだ、ここは」


 気が付くと道路に横たわっていた。

 ぼんやり霞んでいた視界がゆっくりと鮮明になっていく。

 辺りは薄暗く、目の前には細長いトンネルがあった。

 俺の住んでいる地域にはこんなトンネルは無かった。

 なぜこんな場所にいるのだろか、記憶喪失にでもなったのだろうか?

 俺の名前は、サガラガウレリオ、歳は30、友人と森へ狩りに来ていたはずだが・・・。

 




媚びようとして少し長引いてしまいました

ヒロインはいらなかったですね

ここまで読んでくれた人はいったい何人いるのでしょうか

ありがとうございました

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