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世にも奇妙な異世界物語  作者: ジョン・タオレサーナ
2/5

第2話 異世界的言語学習

あと2、3話続きます


 右腕の大きな痛みのせいで覆いかぶさった豚野郎をどかすことができない。

 左腕で豚野郎の肩を押し這い出ようとするが体が引っ掛かり動かなかった。

 指先から光の矢を放った男が何か叫びながら駆け寄ってきた。

 男は俺のそばまで来ると小指で前髪を払って何かを言った。でも、俺には何を言ったのか聞き取れなかった。

 男は何かを言いながら豚野郎の脇腹辺りに手を入れ持ち上げ、少し浮かせた。歯を食いしばり顔を真っ赤にしている。

 あまり力は無いようだった。


「ありがとよ。助かったぜ」


 豚野郎の下からなんとか這い出した俺は、その場に座り込み男を見上げた。

 皮の茶色いブーツに膝が土に汚れた白いズボン、襟付きの深い青の服はサイズが合っていないのか少し大きい様に見える。鼻の辺りまで伸びた前髪を小指で払うのが癖なのだろうか、男の細い目が見えた。

 男は何かを捲し立てるように一気に喋るとひどく突き出した前歯をベロベロと舐めた。

 男が何を言っているのかやはりわからなかった。

 今度は聞き取れなかったわけでは無く、意味が理解できなかったのだ。

 外国人なのだろうか。知らない言語だった。しかし、表情から何か嬉しそうな感じが伝わってきた。


「あんた俺の言ってることわかるかい?」


 男は俺の問いかけには答えず、俺の右腕を下から持ち上げるように触った。

 折れているのだろう、それだけの事なのに激痛が走る。

 俺は歯を噛みしめ痛みを我慢した。弱いところを見せてはいけないと思ったからだ。

 男はもう片方の手を俺の右腕にかざすと何かをぶつぶつと呟きだした。すると男の手から光が溢れ俺の右腕を包み込んだ。光は暖かく痛みが和らいでいく。

 俺はぼんやりとその様子を眺めていた。

 どれくらいそうしていたのだろうか、俺は少し眠ってしまっていた。

 気付いた時、男は俺の服の袖を捲り、腕を見ていた。そこには跡形もなく傷が消えていた。




 結局その男が何を言っているのか俺には分からなかったし、男も俺の言っている事を理解できなかった。

 なんとかここがどこなのかを聞こうと身振り手振りで伝えてみようとしたが無理だった。

 しばらくすると男は諦めた様にため息を吐き、付いて来い、と言う様に手招きをして歩き出した。

 行く当ても無い俺は大人しく付いて行くことにした。

 10分くらい歩くと森から抜けることができた。

 森の外にはなだらかな丘と草原が広がっていた。遠くには木が生えていたりボロい平家の様な建物がある。やはり見たことの無い場所だった。

 道は舗装されておらず土が踏み固められているだけのもので、時折窪みがあったり大きな石が転がっていた。

 男はたまに俺に何かを喋りかけてきたが、何も分からなかった。

 どうにかしてこの男の言っている事が分からないか考えていると、ある事を思い出した。

 俺は道に落ちていた木の枝を拾い、前を歩く男に声をかけた。それから俺は地面に適当に絵を描いた。なるべく訳の分からないものでなくちゃいけない。まず六角形の柱を描き、天辺に針の様な尖った物をつけたした、それから柱の下の方には虫の足の様な物を6つ描いた。最後に鳥の様な羽を4枚付け足し、完成させた。

 その絵を枝で指しながら俺は男の方を見た。男は眉間にシワを寄せ、両手をコメカミの辺りに当てながら前歯をペロペロ舐めた後、こう言った。


「ガウス」


 俺はその言葉を忘れないように頭の中で何度か唱え、次の絵を描いた。1つ目同様、なるべく訳の分からない絵だ。

 そしてそれを男に見せる。

 男は1つ目の絵の時同様、眉間にシワを寄せ前歯を舐めなた後、困った顔で、ガウス、と言った。

 俺は試しに男の靴を指差し、ガウス、と言ってみた。すると男は自分の靴を指差しながら、ティーラ、と答え俺の顔を見た。

 俺は自分の靴を指差し、ガウス、と言ってみる。やはり男は、ティーラ、と答えた。

 これは何、が、ガウス、で靴は、ティーラ、なのだろうか。

 俺は自分の靴を指差し、ティーラ、と聞いてみた。男は、ニャオ、と応えた。次に自分の手を指差し、ティーラ、と尋ねると、男は、バウ、と眉をしかめた。

 何、はい、いいえ。この三つの言葉がおそらく、ガウス、ニャオ、バウ、なのだろう。

 これだけ分かれば後はなんとかなるだろう。

 俺は自分を指差し、サガラ、とゆっくりと男に言った。

 男は俺の真似をしてゆっくりとサガラと繰り返した。最後に俺は男を指差し、ガウス、と言うと、男は、ヤチ、とゆっくりと言った。



 

 街が見えてくるまでの間、俺は色々な物を指差し、ガウス、とヤチに尋ねた。ヤチは不思議そうに俺の顔を見ながら一々こたえてくれた。

 街が見えるとヤチは街を指差し、ディスアウラ、と言って笑顔を見せた。街のことを言うのか、街の名前なのかは俺には分からなかった。

 街は石の塀に囲まれていて中の様子は見えない。

 入り口は木の扉で閉ざされていて、その上には見張り台がある。見張り台には男が一人退屈そうにしているのが見えた。

 入り口の近くまで来るとヤチが見張り台にいた男に声をかけた。

 男は俺の方を指を差し何かを言いヤチとしばらくやりとりをした後、見張り台から降りてきて扉を開けた。

 

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