00 Prologue
2020/03/12 内容は重いけど作者の頭はこんな感じなので
楽しんでいってください。
\(^o^)/
そこは戦場跡だった。
分厚く、黒い雲に覆われた空。
戦闘の傷跡残る朽ちた神殿。
罅割れて面影すら残らぬ神殿の中央に、少年は一人座り込んでいた。
左右の手のひらの中にあるのは一本の杖と首飾りだ。杖は半ばから折れ、首飾りの紐に通された虹色の石は輝きを失っていた。
雪のように真っ白な髪が木枯らしに弄ばれ、蒼天を映した瞳は今や曇天に覆われている。
心の支えだった親友は、魔神との戦いで灰すら残さず消えた。
少年――ルークは手の中の親友の形見をぼうっと眺めた。虹色に輝く綺麗なだけの石に紐を通しただけのもの。
ルークが親友へと送った最初の贈り物。
「魔神は倒したじゃないか。なのに何で……俺はお前を……」
血が滲むぐらい右手を握り締めた。
伽藍堂だった心にどす黒い炎が灯る。
小さな炎はやがて大火に変わり心を覆い尽くした。
「どうして!! どうしてッ!!」
右手で地面を殴る、殴る、殴る。
無意味なことと知っていながら繰り返した。血に濡れた右手。
その甲には十字の剣を模した紋章が刻まれていた。それは夜を照らす月の様に煌々と神秘的な光を放っている。
「なにが勇者だ……。なんもしてやれなかった、誰も救えなかった!! こんなモノが無ければ誰も失わなかったのに!!」
親友と一緒に勇者として人類の敵である魔神を倒したのだ。英雄譚の幕は「めでたしめでたし」の言葉と共に降りるはずだった。
「ふざけるなッ!!」
心の中で燻る激情の全てを拳に込めて吐き出した。皮膚が破れ、真っ赤な血が舞った。
冷たくざらざらした風が嘲るように頬を打つ。傷口がじゅくじゅくと痛み、灼けるように熱い。
――ザッザッ
血の匂いに誘われてか、はたまた美味しそうな獲物を見つけたから。背後から硬い地面を蹴る音が聞こえた。
振り向けば白い体毛に全身を覆われた猿の魔物がルークを睥睨していた。涎を垂らし、長い両腕を嬉しそうに左右に揺らしている。ともすれば口元も笑っているように見えなくはない。
「はっ……はは。慰めに来たのは魔物でしたってか?」
自分と同じ白い体毛に青い瞳。鏡写しのようにそっくりな色合いの魔物の双眸がルークの姿を捉えていた。
気味が悪く見た目も醜悪極まりない。そんな白猿の瞳に自分の姿が重なった。
ベルトに差した武器に視線を移す。それは片刃で特徴的な反りを持つ、刀と呼ばれるもの。自暴自棄になっていても体はいつも通り動くようで、鈴の音を鳴らして鯉口を緩め――抜刀。
全身が悲鳴を上げている。骨は軋み、筋肉は痙攣していた。鉄で出来た左腕は油を挿していないせいか、ぎぃぎぃと頼りない音色を奏でている。
できる事なら逃げ出してしまいたい。
惨めったらしく泣き喚いてしまいたい。
けれど、それを実行しようとは思わない。今はとにかく溢れる衝動に身を任せてしまいたかった。
「来いよ。真っ二つにしてやる」
全身の痛みが判断を鈍らせた。斬っては殴り飛ばされ、噛みつかれ。
結果は子供のチャンバラより酷い泥試合だった。それでも最後は勝った。勝てたのだ。
ボロボロで、例え内蔵の殆どが傷付き、骨が幾本か折れていようとも勝てたのだ。
「もっと、強くならなきゃ……」
世界に溢れる〝姿無き隣人〟達はそんな彼を見守り続けた。
勇者と呼ばれた少年の姿を。
力に飢えた青年の姿を。
「強くなるんだ。もう一度君に会いに――――」
陽の光さえ遮る暗雲に向けて手を伸ばして、時すらも曖昧なこの地でその名を呼んだ。
「――――アリス」
始めましての方はこんにちは、こんばんわ。
弓場 勢です。
当方の処女作は如何でしたか?
文章が鋼のように堅い? 処女作なので許してください。
感想お待ちしております。感想くれたら咽び泣きます。
もちろん喜びで。( ੭ ᐕ)੭