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ここは日本の異能島!  作者: 平平方
入学試験編
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入学試験7

  試験時間も中盤を過ぎ、焦り始めた生徒たちが、高得点を稼げそうな密集した別チームを襲い始め実技試験は大乱戦となっていた。


 その光景を陰で眺めている悠馬は、異能同士の激突を楽しげに見守っていた。


「あんな戦い、見てて楽しいの?」


「まぁ、そこそこ。見たことのない異能も見れるしな」


 悠馬の横に座っている美月は興味なさそうな眼差しでその光景を眺めていた。

 美月のゼッケンのカラーは赤。つまり赤チームだ。


 何故黒チームの悠馬と赤チームの美月が一緒にいるのか。

 それには理由があった。


 それは昨晩の話。



 ***



 風呂上がりの美月に役職とチームを尋ねた悠馬は、携帯端末を取り出した彼女の返答を待っていた。


「私は赤チームで、役職は占い師みたい」


「へぇ、占い師か。どうやって王を見つけるんだ?」


「…説明書かれてないんだけど」


「は?」


「使い方わからない!」


 悠馬に携帯端末を見せてきた美月は、ほら!何も書いてなくない!?と声を上げると、その場にしゃがみこんで長いため息を吐いた。


「書いてないな。占い師って、まさかゴミみたいな役職だったりする?結構鍵になるんだと思ってたんだけど」


「ご、ゴミとか言わないでよ!私の役職よ!?」


 悠馬にゴミと言われたのが心外なのか、その場で顔を上げて不貞腐れた美月は、私はゴミですよ。そうですよ!と呟きながら悠馬を睨んだ。


「ごめん。ゴミは言い過ぎた。ところで美月、俺は黒チームなんだけど、試験の中盤くらいで合流できない?」


「え?どうやって?試験会場山だから見つけるのは無理だと思うけど…」


 不思議そうに悠馬の方を見た美月。

 実は悠馬はこの時、地図アプリの本当の使い方を発見していた。


 それはペーパーテストが終わって、寮へたどり着いた頃。

 ベッドで横になっていた悠馬は、地図アプリで島の形を眺めていた。

 その時、なんとなく自分の名前を検索してみたのだ。


 中学生や高校生になら良くある、俺の名前◯◯の地名になってるぜ!的なノリで。


 結果として、自分の寮にマークが光った。

 それを発見した悠馬が面白がって連太郎の名前を検索した結果、連太郎がどこにいるのかが丸わかりになったのだ。


 そしてつい先ほど。

 持ち込み可能物が携帯端末、試験会場が山と知った悠馬は、この携帯端末が何故この島に来ると同時に貸し出されたのかを悟った。


 この試験は、生徒たちの異能の実力を測ると同時に、与えられたものでどれだけ優位に立ち回れるのかを確認するための試験なのだと。


 だから明確な採点方法が記載されていないのだろう。


「美月、地図アプリで俺の名前を検索してみて」


「何か出てくるの?」


 悠馬に言われた通りに地図アプリを開き名前を検索した美月は、何も喋らないまま何度か悠馬と携帯端末を交互に見ると、続けて何かを検索し始めた。


「え!すご!でもこれじゃあプライバシーも何もないじゃん!」


 全くもってその通りだ。

 しかしながら、悪用されることはないだろう。

 何故なら端末は今日配られ、明日には回収される。


 そのごく僅かな期間でこの情報にたどり着き、悪巧みをできる中学生が一体どれだけいるだろうか?


 ほとんどの生徒は、この機能を知らずに明日の試験を迎えることとなるだろう。


 悠馬だって、自分の名前を検索するなんておふざけをしなければ、気付かなかったはずだ。


「この地図アプリの使い方を知ってる学生なんて、殆どいないと思うよ。知ってるやつはほぼ100パー合格するような奴らだろうし、そんな奴らが入試前に悪用して不合格になるなんてヘマはしないと思う」


 入学目前でそれを自ら蹴るなんて行為は、この島を受験している生徒はしないだろう。


 なにしろこの島に入学しただけでも、家族はお祭り騒ぎになるくらいだと聞く。


「それじゃあ、試験30分が経過したころに、暁くんを検索してそっちに向かえばいいの?」


「ああ。なんなら検索して出てきた俺のマークに、フラッグでも付けておけばいい」


 この地図アプリにはもう1つの便利機能があって、フラッグをつけることにより、フラッグをつけた場所を常に把握できるのだ。


「ほんと凄い!暁くんってもしかして天才?」


「褒めてもなんも出ないぞ」


 美月に褒められて、実は今すぐ叫び声を出して喜びたい気持ちもあったが、これ以上恥の上塗りはできないと悠馬はクールぶって答える。


「あと、さっき篠原のこと虐めてた女子たちの名前も教えてくれ。開幕と同時にそいつらを狙う」


「ありがとうございます」



 ***



 そんなこともあり、悠馬と美月は30分を過ぎたころに合流を果たしていた。


 美月はまだ合流した意味を知らないため、不思議そうに異能の衝突を見る悠馬を眺めていた。


「なんで合流したの?」


「ちょっと報告をと思って。試験が始まって5分くらいで、いじめっ子たちは全員凍らせた。勿論、後遺症が残るほどは痛ぶってないけど、氷が溶けたとしても、試験終了まではまともに動けないくらいにはしてる」


「ありがとう。アイツら私より学力低いし、実技を落としたらほぼ100パーセント落ちると思う」


 それを聞いて安心した。

 いくら俺が妨害を頑張っても、ペーパーテストが100点満点だったりしたら、入試を合格される可能性もあった。


 その可能性がなくなっただけで悠馬は満足だ。


「それと、占い師の王の発見方法、1つ可能性がある方法を見つけたからさ。携帯端末貸してくれない?」


 試験内容には、王の情報は3人まで共有可能。とだけしか書かれていなかった。

 同じチームという色縛りがないのだ。


 つまりは、他のチームも合わせて3人まで共有することができる。


 普通、相手のチームと手を組むなんて事は想定していないのだろうが、今回はルールの穴を使わせてもらうことにした。


 いや、もしかするとこれも想定内なのかもしれない。反逆者の役職を手にしている学生が、占い師から情報を聞いた後に反逆できるわけだから、これは反逆者と占い師の立ち回りを見るためのルールなのかもしれない。


 悠馬は白の王と地図アプリで検索する。


 それと同時に白の王という文字が、美哉坂夕夏という名前になって、位置情報と共に現れた。


「まじかよ…!」


 予想はしていた。

 悠馬の寮の隣に泊まっていた美哉坂夕夏は、前総帥の娘なのだからそこそこのレベルなのだろうと。


 だが、まさか王に選ばれるほどの実力を持ってるとは思わなかった。


 変なことをしない限り温厚そうだった彼女が、デコピン程度の異能で他生徒を蹂躙している姿を想像すると、悪寒が走る。


「へぇ、女子なんだ」


 隣で悠馬の検索結果を見ていた美月は、興味深そうに、それでいて少し驚いたような声を上げた。


「あとは、赤の王だな」


 美月が赤チームということもあり、残りの選択権が赤しかないため、赤の王と検索する。

 まぁ、悠馬自身が黒の王のため、黒は最初から除外されているのだが。


「アダム・ベリアー?」


 赤の王と検索すると、日本人ではない名前と、山の麓にマークが出てきた。


 コイツ、スタート地点からほとんど動いていない。


「あ、その人わかるかも。ちょっと小柄な外国人が、入場ゲートにいた」


 美月は名前だけで誰かわかったようだった。

 日本支部の異能島なのだから、外国人が珍しいのは当然か。


 異能島は各国に存在するし、その入試難易度も、倍率もほぼ同じ。


 わざわざ入試のためだけに日本支部へ訪れるような奴はいない。


 そんな理由もあって、この島に通う生徒のほとんどは日本人で、入試を受けているのも9割型日本人だ。


「頼む!白チームの奴ら、近くにいたら援護してくれ!」


 悠馬と美月が会話をしているその先では、白チームが黒チームに押されているようだった。

 白チームの男子生徒が声を上げると、ぽつぽつと援軍が現れ始める。


「さて、言いたい情報も言えて、知りたい情報も聞けたし。次は50分ジャストに山頂に来てくれ。そして…」


 立ち上がった悠馬は、美月の耳元で何かを囁くと、その場から瞬時にいなくなる。


「え!?本気で言ってるの!?」


 美月は驚きを隠せない表情で振り返ったが、そこにはもう、悠馬の姿はなかった。



 ***



「ふぅ…」


 今すべき事は終わったし、なるべく平等な試験結果にしたい為、おふざけで通りすがった生徒を氷漬けにしたり、燃やしたり感電させることはできない。


 何もない芝生に寝っ転がった悠馬は、ギラギラと照りつける太陽を眺めながら、美月と再び会うまでの15分間で何をしようかと考えていた。


 正直な話、生徒同士の異能の扱い方は期待外れだった。

 上位能力、つまりコキュートスやニブルヘイムの様に名前が正式に決まっている異能ならまだしも、大した威力も規模もない異能に長ったらしい名前をつけて戦っているのがかなり…なんというか、残念だ。


 優秀な異能力者は味方を巻き添えにする可能性のある乱戦は好まないだろうし、さっき見てたのはあまりレベルの高くない生徒たちの戦いなのだろうが…


 悠馬は、想像していた木々が簡単に倒れるほどの異能同士の衝突じゃなかったのが、かなり残念だったようだ。


「どっかで強い異能力者が戦ってないかなー…」


 試験開始直後、悠馬が放ったコキュートス以降、地面が揺れるような、轟音が響くような異能が使われた雰囲気は一切無かった。


「あれ?暁…くん?」


 寝っころがっていると、不意に声が聞こえた気がして、悠馬は起き上がった。


「美哉坂…」


 まじか。たしかに強い異能力者戦ってないかなーとは言ったし、王同士の激突なら入試に影響を与えることもないだろうけど…


 想定外の事態に直面した悠馬は、作り笑いを浮かべながら彼女に向けてひらひらと手を振った。


「こんにちは。ちょっと今、怪我してて…出来れば見逃して欲しいなー…なんて」


 もちろん嘘だ。怪我なんてしていない。

 ただ、夕夏だって王だ。


 悠馬のことを王じゃないと判断しているのかは定かではないが、王という立場でアピールすることもないのに、知り合いを倒すということはしないだろう。


 何より、悠馬は自分が戦うのではなく、側から上位能力者たちの戦いがみたかったのだ。

 自分が戦うつもりは微塵もなかった。


「ならチャンスね。夕夏。やるよ」


「え、ちょっと!」


 悠馬が起き上がったものの、そこから立ち上がろうとしないのを好機と見たのか、夕夏の横にいた黒髪の女子生徒は前傾姿勢になりながら何かを掴むと、それを悠馬へと投げつける。


 慌てて立ち上がった悠馬は、そこそこのスピードで顔目掛けて投げられた木の枝を払うと、彼女が間合いに入っていることに気づき、距離を置こうとした。


 右上から振りかざされる拳をギリギリはところで回避しようとする悠馬。


 しかし、飛んで来たのは拳ではなく、大量の砂だった。


「っあ!」


 彼女の拳の軌道を読むために目を大きく開いていた悠馬には大ダメージだ。


 大きく跳躍して距離を取った悠馬は、両目を抑えながら異能を発動させた。


 トドメだと言わんばかりに駆け寄ってくる女子生徒と、砂が目に入り目を抑えている悠馬。


 ちょうど拳が入る間合いになった少女は、悠馬の金的目掛けて一直線に蹴りを入れた。


 が。


 悠馬はそれを片手で受け止め、もう見えるようになったのか涙を流しながら笑みを浮かべた。


「ちょっとタイム!」


「そんなの許すわけないでしょ!」


 悠馬に片足を掴まれながらも、まだ片目しか見えていないことがわかった彼女は、目を瞑っている方、即ち悠馬の視界が悪い方の顔面を殴ろうと、左の拳を振るう。


 悠馬はそれをすんなりと交わすと、彼女の足を引いて芝生へと倒した。


「加奈!」


「ちょっと待ってくれ美哉坂」


 加奈と呼ばれた小柄な少女を援護しようと異能を発動させた夕夏を、悠馬は手で制する。


「俺と美哉坂は知り合いだろ?だから流石に、入試で美哉坂の友達を戦闘不可にさせて、不合格、なーんてことはしたくない。そんなのお互い気分悪いだろ」


 夕夏はその話を聞いて、異能を使うことを辞めたのか手を下ろした。


「へぇ?それじゃあ、自分をアピールできるこの絶好の機会を、貴方は見逃すの?」


「うん。ある程度アピールはしてるし、知ってる人の友達をアピールの材料にはしたくない」


 実際は王だからアピールの必要がないんだけどね。

 やっと目が見えるようになった悠馬は、加奈から手を離すとそう微笑みかけた。


「優しいのね。貴方。でもその優しさが命取りにならなきゃいいけど」


 見逃してもらった立場で、随分と偉そうな物言いだな。


 今すぐここでとどめを刺してやろうか!?んん!?と怒鳴りつけそうになった悠馬だが、それをする前に、夕夏の背後、つまり悠馬から見ると真正面から、大量の黒と赤チームが雪崩れ込んできたことに気づき、驚きの表情を浮かべた。


「美哉坂!後ろ!」


 悠馬がそう叫ぶのとほぼ同じタイミング。

 赤チームの1人が放った火球型の異能は、瞬く間に速度を上げて夕夏へと向かっていく。


 この異能は間違いなく直撃する。


 そう判断した悠馬と、大きく目を見開く加奈。

 直後、ドン!という爆発音にも近い音が山中に響いた。

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