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ここは日本の異能島!  作者: 平平方
フェスタ編
204/474

最終日

 会場内には朝からどよめきが起こっていた。


「おい、二回連続不戦勝って…」


「え?あの地味な奴が決勝行くのかよ?」


「やり直せ!どうせ買収でもしたんだろ!」


 優勝候補だったフレディに続き、準決勝の相手であるサハーラの不在。


 予定時刻を過ぎた会場では、悠馬の不戦勝を告げるアナウンスが流れていた。


 そしてサハーラと悠馬の思惑通り、悠馬の株は下がり続ける。


 1戦目は地味に戦い、2戦目は投げて蹴って降参させ、3戦目は開始直後に降参。4戦目は不戦勝。


 おそらくこんな勝ち進み方をした学生は、未だ嘗ていなかっただろう。


 別に名誉なことではないが、案外偉業として刻まれるのではなかろうか?


 他の生徒たちのブーイングなど他所にその場から立ち去る悠馬は、そんなことを考えながら通路へと入る。


「あ、戀先輩」


 通路に入ってすぐ。

 通路脇で待機していた黒髪の男子生徒を目撃した悠馬は、その見覚えのある姿を見て声をかける。


「決勝進出、おめでとう」


「戀先輩も、その実力なら勝ち確定でしょう」


 どう足掻こうが、キングは戀に勝てない。

 純粋な戦力差を知っている悠馬は、戀が勝つ可能性が9割あることを知りながら頭を下げる。


「知ってるか?」


「?」


「俺っていう人間は、案外残酷な、どうしようもない現実を突きつけるのが好きな人間なんだ」


 悠馬の予想とは裏腹に、爽やかに笑ってみせた戀。


 そんな彼の残した言葉は、余りにも不気味で、そして何か意図でもあるかのような発言に聞こえた。



 ***



「おい暁〜、まさかお前が決勝行くとはな〜」


「なんてったって、暁闇様だぞ!暁闇様!あんな奴ら、闇でねじ伏せてやろう…って!あはは!」


 中二病チックな行動をとりながら冷やかしてくるモンジ。


 そんな彼に冷ややかな視線を送る悠馬は、横に来た銀髪の少女を見て頬を緩める。


「決勝進出、おめでと。対戦相手がどっちでも、頑張ってね。応援してる」


「ありがと…!」


 美月からのお祝いの言葉と応援。

 心に響くその声を聞いた悠馬は、屈託のない笑顔を浮かべながら美月を見る。


「は、話はそれだけ!それじゃぁ…」


 そんな悠馬を見た美月は、顔を真っ赤に染めながら去って行く。


 きっと、まさか悠馬がこんなに喜んでくれるとは思わなかったのだろう。照れているのがわかる。


「篠原さんからあんな言葉…羨ましい…」


「お前、ほんといい彼女ばっかだよな…」


「お前には勿体なさすぎるよ」


 去って行く美月を物欲しそうに見つめる変態四天王の3人組。


 呆れたご様子の悠馬は、美月が遠のいて行く後ろ姿を一瞥し席に着く。


「さてと。決勝の相手はどっちかな」


 叶うならキング、別に戀でもいい。


 キングをボコボコにしたいという気持ちはあるものの、それが叶わないと思っている悠馬は、この戦いの行く末を見守る。


「お前が双葉戀…日本支部の切り札か」


「俺はそんな風に呼ばれているのか?」


「大げさな異名だな。切り札なんて」


「お前のそのホープって異名の方が、ダサ大げさで俺は嫌だけどな」


「あ?」


 ホープなどと呼ばれ、満更でもない様子のキングを煽る。


 別に切り札が大げさだなんだと言われたから言い返したわけではなく、それが戀が抱く、キングに対しての純粋な評価だった。


「口だけは達者だな。日本支部は」


「人のことを言える立場か?」


「双葉戀。お前のことは色々と調べさせてもらったから知ってるぜ?」


 煽り合いから話を逸らしたキングは、戀に対する情報を事前に集めていたのか、自慢げに話しを始める。


「お前には攻撃が通らないと言われているが、それは結界のおかげなんだろ?」


 核心をついたように、王手と言いたげなキングは自信満々だ。


 悠馬ですら破れなかった戀の防御。

 1年間無敵であり続けたその防御を、結界のおかげだと断言してみせたキングは流暢に話す。


「予想からするに、結界はアキレウス。半神半人の、本来なら使い物にならないゴミ結界だ」


「…」


 結界は神と人との契約。

 神が与えられる恩恵は、自身の得意とする力ばかりで、自身の不得意とする力を与えることはできない。


 そして半神半人の神との契約というのは、普通の神々と契約をするよりも不安要素が高まる。


 一言で言うと契約をしたとしても、大した力を得られない可能性が高いのだ。


 原因はまだ不明だが、格落ち、半分しか神の力を持っていないのが原因なのではないか?と実しやかに囁かれる。


「しかしお前は違うんだろ?お前のアキレウスは、何の偶然か、お前に奇跡を与えた」


 本来であれば格落ち結界になるはずの、半神半人との契約。


 しかしこの契約において成功を収めた人間は、絶大な力を手に入れることができるのだ。


 半神半人。

 つまりはもともと、半分人なのだ。


 契約が全てうまくいけば、その契約者の身体に結びつくことさえできれば、神話と同じ力を発揮できる。


 戀はアキレウスとの契約において、結界なしでも攻撃を無効化できる(不死)という、おそらく世界で最も優れた恩恵を手にしていた。


 それは悠馬の再生にも匹敵する力だ。


「それがわかったら…お前は勝てるのか?」


「神話の通りなら、あるだろうが。()()が」


 わかったところで勝機なんてない。

 遠回しにそう言っているように聞こえる戀の発言に、キングは不機嫌そうに言い返す。


 神話通りなら、アキレウスには弱点がある。

 足元。踵が弱点のはず。


 異能祭でなぜ、悠馬の背後からの攻撃を避けたのか。


 それは間違いなく、弱点が神話通りだからだろう。


「ではこれより、日本支部代表、双葉戀VSアメリカ支部代表、キング・ホワイトライトの試合を開始する」


 審判が手を挙げ、コングが鳴り響く。


 弱点があると分析しているキングは、いくつもの分身体を作りながら白い歯を見せる。


「最強の防御を持ってるからって自惚れてると、痛い目見るぜ?」


「自惚れてるのはどっちだよ」


 10人ほどに増えたキング。

 そんな(おぞ)ましい攻撃を無表情で眺める戀は、攻撃を仕掛けることもなく悠然と立ち尽くす。


「お好きにどうぞ?ってか?随分と舐められたもんだな…!」


 戀の行動を見ていたキングは、それを挑発と受け取り攻撃を仕掛ける。


「残念だが、分身でいくら攻撃しようが弱点は見つからない」


 背後に回り、戀の踵へと攻撃をした分身体。

 そんな光景を冷めた目で見つめる戀は、彼の攻撃を分析しながら呟く。


「戀パイ、ボコられてね?」


「いや、大丈夫だろ!そもそも攻撃効かないんだぜ?」


「いやでも、さっきからカウンター仕掛けねえし、手も足も出てないんじゃ…」


 日本支部の中から聞こえ始める不安の声。


 アメリカ支部のキングは現在イケイケムードの波に乗っているし、八神があれだけボコボコにされレフリーストップが入るくらいなのだから、戀も厳しいんじゃないか?という可能性を考えているのだろう。


 遠目から見ればキングが大量に増殖し、リンチをしているような光景なのだから、そう見えても何らおかしくはない。


「悠馬、周りの奴らが言う通り、戀パイボコられてんのか?」


「いや…ダメージ自体は負ってない」


 日本支部の学生が2連ちゃんでキングに負ける。

 それが嫌なのか、不安そうな表情の通は悠馬へと声をかける。


 現状、1番戦況を把握出来ていそうな悠馬に聞く方が確実だと思ったのだろう。


「でも、戀先輩は攻撃をしてない」


 何か理由があるのかは知らないが、みんなの言っている通り、手を出せていないのは事実だ。


 何か思惑でもあるのか、それとも先ほどの発言が何か意味しているのか。


「してないって…アイツの手数が多すぎてついていけてねえってことか?」


「いや、それはないだろ」


 戀の異能は、確かノーモーションでも発動させること自体はできるはず。


 つまりはいつでもカウンターを仕掛けることのできる条件下にいるというのに、彼はカウンターを仕掛けていないということになる。


 悠馬のような広範囲に容赦なく異能を放つタイプではなく、分身という実体を持った、特定の数で攻撃を仕掛けてくるキングは、戀にとっては格好の的のはず。


 あらかじめ衝撃波を空間内に留めておけばあとは当てるだけなのだから、防戦一方などということはない。


「何がしたいんだ…?」


 戀の行動の意図がわからない悠馬は、彼が何をするためにこんなことを行なっているのか理解できず眉間に皺を寄せる。



「おいおい、どうしたどうした?さっきまではあんなに強者のような発言しておいて、防戦一方か?」


 試合開始からひたすら攻撃を仕掛けるキング。


 彼は戀がカウンターを仕掛けてこないこと、攻撃をしてこないことをいいことに、随分と調子に乗っていた。


 いや、キングのほどの自信家ならば、自分の攻撃に圧倒されて手も足も出ないとでも勘違いをしているのかもしれない。


 愉悦に浸るキングは、八神をいたぶっている時と同じように、ニヤニヤと下衆な笑いを浮かべながら攻撃を続ける。


「日本支部は本当に腰抜けの集まりだな!」


 前夜祭では何も抵抗をせずにボコボコにされ、フェスタでは八神に続き、戀が防戦一方。


 キングの目には、たしかに日本支部は腰抜け連中に映っていた。


「本当にそう思ってるなら、お前の底が知れたな。ホワイトライト」


「なに…?」


 底が知れたと言われたキングは、険しそうな表情を浮かべ動きを止める。


 自分が優勢なはずなのに底が知れたなどと言われたら、なにを言っているんだと戸惑ってしまうことだろう。


 現にキングは戀からの攻撃を一度も受けてはおらず、ノーダメージ。


「何が言いたい?」


 周りから見てもキングが攻めているようにしか見えない状況で、彼自身、戀が何を言いたいのかは理解できなかった。


 しかし動きを止めると同時に、否が応でも戀の言いたいことがわかってくる。


 戀の体操着には、傷どころか砂埃1つ付いていないし、弱点であるはずの踵にすら汚れも見えない。


 先ほどまではずっと動いていてダメージを与えられているのか、などということは確認できなかったが、立ち止まると見えてくる。


 キングは戀に、1のダメージも与えれていなかった。


「テメェ…!この俺を煽ってるつもりか?」


「何を言っているのか、理解できないな」


 1のダメージも与えれていないキングを見下しながら立ち回っていたとも取れる、戀の言葉。


 プライドを傷つけられたキングは、額に青筋を浮かべながら紫色のプラズマを周囲に放つ。


「徹底的に叩き潰してやるよ!双葉ァ!」


 まだまだ様子見だったであろうキングは、半舐めプ状態の戀を焼き殺さんと、容赦なくプラズマを放出させ戀の足元を確実に狙っていく。


「ははは!足が切れても知らねえぞ!」


 自身の分身も焼き切りながら攻撃を繰り出すその姿は、まさに独裁者のそれに近い。


 土埃を立て、そして焼けた匂いを漂わせるスタジアム内は、戀とキングの姿が見えなくなるほどだ。


「見えねえ…!」


「まだ勝負はついてないのか?」


 観客席からは、砂埃のせいで状況判断ができない。


 観戦している生徒たちはどっちが勝ったのか、はたまた決着が付いていないのかをいち早く知りたいのか、食い入るようにしてグラウンドを見る。


「これだけ焼けば、アキレウスとて無傷ではいられまい…」


 どんな異能だって、レベル10、つまりは最強のレベルの異能の全力を喰らえば、無傷ではいられないだろう。


 ある程度プラズマを放出したキングは、気分でもよくなったのかそれを中断すると、ゆっくりと手を下ろし砂埃の中に視線を落とす。


 見えるのは、立ち尽くしている人物の影。


「これだけの攻撃を受けて、まだ立っているのは褒めてやるよ。気絶してるのか?」


 対戦相手であろう、戀の影。

 そう判断したキングは、まだ立てている戀を称賛しながら、勝ち誇ったように歩みを進める。


「それがお前の全力なのか?」


「っ!?」


 しかしキングの勝ち誇った気分は、長くは続かなかった。


 歩みを進めるとすぐに聞こえてきた、いや、返ってきた声。


 それは数秒前まで話していた、戀の声そのものだ。


 砂埃が薄くなると同時に見えてくる戀の姿。


 そんな彼の姿を見たキングは目を見開くと同時に、ギリっと歯を食いしばった。


 戀は無傷だったのだ。


 砂埃も付いていなければ、足元にすらダメージを負っていない。


 キングが力に身を任せ放った異能にもかかわらず、仁王立ちを続けていていたということになる。


 あまりにもある実力差。

 舐められていたことを悟ったキングは、怒りを露わにする。


「貴様ァ…!」


「レフリー、降参だ」


 今にも掴みかかろうとするキングを横目に、砂埃で咽せているレフリーに降参を申し込む戀。


「なん…」


 このまま行けば、戀の勝利は確実。


 流石のキングもそのことを察しちょっとは焦っていたというのに、戀は何の未練もないのか降参を宣言した。


 キングにとっては、屈辱的な敗北。

 試合には勝ったものの、実質負けたようなもの。


「双葉戀の降参により、勝者をアメリカ支部代表、キング・ホワイトライトとする!」


 審判の宣言を聞き流しながら、キングはその場に立ち尽くす。


 初めて知った敗北の味。

 相手に明らかに見下されているような感覚。

 その全てが、キングにとっては屈辱的なものだ。


 両拳を握りしめプルプルと震えるキングは、横を通り過ぎると同時に、戀が発した声を聞き逃しはしなかった。


「精々頑張ってくれよ。こんなお遊戯会」


「…クソ野郎が…!」


 戀にとってフェスタはお遊戯会。

 最後の最後まで戀に見下されたキングは、小さな声でそう吐き捨てた。

異能祭の時に触れなかった戀くんの力が判明しました!

そして書いていて気づいたんですが、戀くんの過去に触れるのを忘れていました…すみません(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

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