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ここは日本の異能島!  作者: 平平方
入学編
15/474

ハプニング

 ドーナツ屋の中。同じクラスの申し出を受け入れた悠馬は、テーブルを動かしている、彼女の奥の女子を見て、完全に思考を停止していた。


「あ。もちろんアタシだけじゃないわよ?ほら、今日は女子会でさー!」


 4人が自分たちの会話でヒートアップしていた為、まさかAクラスの大半の女子が来ているなどとは気づいていなかった。


「は、はあ」


 女子会に男子が入っていいのだろうか?遠慮気味な八神と悠馬を無視したのは、通と連太郎だった。


「はいはーい。俺連太郎!君はー?」


「私は美沙〜よろしくー」


 ノリは連太郎よりのご様子だ。やっぱり、チャラチャラした者同士性格が似ているのだろうか?意気投合している2人を他所に、悠馬は銀髪の少女を目で追っていた。


 よかった。どうやら彼女は、自分自身の居場所を作り出せている様子だ。クラスの女子たちの中心にいる美月を見た悠馬は、安心した表情を浮かべた。


「ちょっと、そこの茶髪。なに美月ちゃんの方ジロジロ見てんのよ」


「えぇー?いきなりジロジロ見るのは常識ないよねぇ?」


 美月の周りにいた女子たちは、悠馬の視線に気づいたのか、彼女の身を守るように前に出ると、悠馬に向けて冷たい視線を向ける。


「ごめん。誤解だ。中学の時の知り合いかと思ったんだ」


 みんながみんな、悠馬や八神を見て喜ぶわけではないようだ。元々、そういうつもりで美月を見たわけじゃない悠馬は、真剣な表情で弁明を始めた。


「いやぁ、私は好みよ?ジロジロ見てくる男子。ほら、舐め回すような視線?」


 美沙と呼ばれた女子は、そう呟きながら悠馬の方に歩み寄ると、手慣れた様子で悠馬の頭に胸を乗せ、首に手を下ろす。


「ワンチャン狙ってるなら、アタシとかどぉ?」


「悪いが俺には心に決めた相手がいるんだ。友達以上の関係を求めているなら遠慮しておく」


 頭を下げて、美沙の胸から離れる悠馬は、彼女の手を優しく掴むと、そっと手放した。


「ちょ、國下さん節操なさすぎー」


「ちょっと試してみただけよー。ほら、美月の事を下心あってみてたわけじゃないってわかったでしょ?」


「確かに!」


 そこで試されていたことに気づいた悠馬は、冷や汗をダラダラと流しながらオレンジジュースを口にした。これが女子の世界。男を釣るような真似をして、釣れたら袋叩きにする算段なんだ。なんて恐ろしい。


 早く終わらないかな、女子会。恐怖のあまり、心の声が漏れそうになる。


「ちょっとー、男子も手伝ってよー。席動かすの」


「はいはーい!今行きまーす!」


 通はイキがいいな。女子の声を聞いて、大きく右手を上げると早足で手伝いに向かう。

 八神も連太郎も手伝うようだ。自分も何か手伝おうと、横に流れてきた机をくっつける作業を手伝おうとした悠馬は、隣に来た女子生徒と、肩をぶつけてしまった。


「あ、ごめ…」


「あ!暁くん!久しぶり、話すのは入試以来かな?」


 肩がぶつかったのは、入学試験で知り合い、今は寮が隣の美哉坂夕夏だった。相変わらずの可愛らしい表情で、誰にでも平等に微笑んでくれる彼女は、まさに女神と言えよう。


 だが、悠馬はその程度で屈する男ではなかった。

 浮かれていた自分の心にムチを打ち、表情1つ変えずに会釈をする。


「そうだね。とりあえず合格おめでとう」


 夕夏は白の王だった為入学が決まっていたことは知っていたが、とりあえず形だけでも、と祝いの言葉を述べる。

 席のくっつけ作業は終わったようだ。ゾロゾロと戻ってきた男子3人を見た悠馬は、そのまま席に座った。


「隣、いい?」


「どうぞ」


 テーブルを並べ終えた同じクラスの女子生徒たちは、ゾロゾロと椅子に座り、和気藹々と話し始める。悠馬の横には、夕夏が座っていた。

 少しだけ意識している悠馬に対して、夕夏は全く意識をしていなかった。ただ、目の前に椅子があったから座った。その程度の意識しかない。


「はい、はいはーい!クラス内である程度自己紹介は終わってるけど、レベルの話とかまだしてないよね?みんなのレベルっていくつ?」


 バラバラに話し始めた女子生徒達を見かねてか、美沙が司会進行をしてくれるご様子だ。くるっとテーブルを囲む生徒たちを一周見た美沙は、じゃあまずは男子から!と言って通を指差した。


「え、俺!?」


 こいつ、ついさっきまであれだけはしゃいでいたのに、いざ女子と同じテーブルに着くと緊張でガクガクじゃないか。若干挙動不審になりながら、顔を赤くしている通は、ゆっくりと席を立って自己紹介を始めた。


「もう自己紹介はしたけど、もう一回。俺は桶狭間通だ。レベルは8だから、まぁ、そこそこなのかな?」


 通が自分のレベルを言って、パチパチと拍手が起こる。女子生徒たちが、ヒソヒソと何かを話しているように見えたのが不安だったが。


 そんな中、悠馬は1人真剣に考え事をしていた。自分がレベル10だと言えば、当然異能の詮索もされるだろう。レベル10の異能力者は人数が極めて少ない為、興味本位で尋ねてくる生徒や勝手に調べ始める生徒も少なくないと聞いた。


 だが、悠馬には調べられると困る異能があった。うっかり口を滑らせるだけでも終わってしまうような異能、闇の能力を手にしているからだ。

 ここは視線や質問が集中しないように、レベルを1つか2つ下げて話した方がいいだろう。今しがた自身のレベルを言って、特に異能の質問をされなかった通を見た悠馬は、通と同じレベルを言おうと心の中で決めていた。


「はい、じゃあ悠馬〜!」


 すでに名前を覚えてくれていたのか、通に続いて悠馬に指名が入る。通を真似て席を立った悠馬は、落ち着いて自己紹介を始めた。


「暁悠馬です。レベルは8です。よろしくお願いします」


 自己紹介を終えると、すぐに席に座る。続いて、八神、連太郎、女子がレベルと自己紹介を口にしていく。ここにいる殆どのメンバーがレベル8で、レベル9がほんの少しだけ混ざっているようだ。レベル9だと誰かが口にすると、拍手とざわめきが大きくなる。


「篠原美月です。レベルは9です」


 女子たちの半分が紹介を終え、美月の自己紹介が終わる。ゆっくりと銀髪をなびかせながら座るその姿は、まさに清楚そのものだ。


「あぁー、さすが美月。可愛くてレベル高いとか最強よ」


「私と付き合って欲しいくらいだよ」


「抱きつきたいぃ」


 美月の時だけダントツで盛り上がり方が違う。八神の時もそこそこ盛り上がったとは思うが、それでも女子たちは控えめな対応をしていた。しかし美月の時は隣の女子が彼女に膝枕をしてもらったり、ハグをしたりしていた。モテる女は辛そうだ。


「美月ちゃん、大丈夫?薬飲んでるけど」


「あ、うん。これを飲めば大丈夫だから。運動はできないけどね」


「そっかー。美月ちゃん、体育はできないんだ…」


 膝枕とハグを受け入れながら、薬を飲んでいた美月に視線が集まる。悠馬も初めて見た光景だったが、なにかの薬を飲まないと、彼女はマズイことになってしまうようだ。


「ああ。可愛くてレベル高くてか弱いって、篠原ちゃん最強かよ」


 悠馬の左隣に座る通は、今にも昇天しそうな勢いで美月の方を眺めていた。どうやら通の心は美月のスペックに射止められたらしい。胸を押さえながら、机にゆっくりと突っ伏して、女子には聞こえないように何かを呟いている。

 その間も自己紹介は行われ、最後に自己紹介するのに相応しいと選ばれたのは、悠馬の右隣の女子生徒だった。


「み、美哉坂夕夏です。レベルは10です、よ、よろしくお願いします、」


 緊張しているのか、若干ぎこちないお辞儀をした夕夏は、凄い勢いで席に座ると、真っ赤になった顔を隠していた。彼女はこういう人前での挨拶に、あまり慣れていない様子だ。辺りを見回すと、全く関係のない生徒たちまで、夕夏の自己紹介を聞き入っていたようだ。それは緊張する。


「え、あの子レベル10?」


「まじで?やばくない?最強じゃん!」


「レベル10とか生で初めて見たんだけど」


 周りの席の生徒たちは、口々に夕夏のことを話題にしている。

 悠馬は、自分のレベルを偽って話をして良かったと心から思っていた。


「いぇい!夕夏ちゃん最強!」


「うちのクラスにはハイスペック女子が2人もいるもんね!美月と夕夏!」


 女子はすっかりと纏まっていた。本来であれば、入試の時のように蹴落としあいが始まっていてもおかしくなかったが、美月と夕夏がいることによって、うまく纏まったようだ。男子とは大違い。

 男子はというと、この光景を目にすればわかるはずだ。何故悠馬たちは他の男子と絡まないのか。実は今日、通や悠馬は、他の男子に声を掛けていた。その結果は悲惨なものだ。


「俺は馴れ合いなんて御免だ」


「俺がリーダーってならグループに入ってやってもいいぜ?」


「なんで男と仲良くしなきゃいけねえんだよ」


 などと、我が強い男子たちから、威嚇のようなものを受けていたのだ。結果として、男子たちはごく小規模のグループでお互いに干渉し合わないという方針が決まってしまった。

 二大派閥と言っても過言ではない女子たちとは大違いな状況だ。


 夕夏を中心において、キャッキャウフフしている平和な光景を眺めながら、通と悠馬は、今日男子たちから言われた言葉を、全てその光景で洗い流していた。


「青春だ」


「あー!そうだ!男子も連絡先交換しようよ!君らノリ悪い感じじゃないし、変に着飾ってないし仲良くなれそう!」


「ほんとほんと!Aクラスの男子に八神くんいて良かった!聞いた?Bクラスの南雲くん入学初日で停学だって!やばくない?」


 女子たちが思っていることも同じようだった。その声を聞いて大はしゃぎする連太郎と通、八神も嫌じゃないのか、すんなりと承諾する。席を立って女子生徒たちと連絡先を交換し終えた頃には、時刻は既に19時近くなっていた。


「外ももう暗いし、おひらきにしちゃう?」


「そうだね、入学早々事件には巻き込まれたくないし、早めに帰ろっか?」


 補導時刻までまだまだ余裕はあるが、まだ入学2日目ということで、早めに帰るという選択で満場一致だったメンバーは、食べ終わった人たちからトレーを片付けて外へと出て行く。


「ねぇ、暁くん」


 ドーナツは食べていたものの、オレンジジュースを飲んでいた悠馬は、不意に横から声が聞こえ、座っている少女の方を見る。


「ん?どうかした?」


「あの…そのね?ずっと謝りたかったんだけど、機会がなかったからさ…今日の夜、空いてる?」


「あ、うん」


 申し訳なさそうな表情をしている夕夏。それが一体何故なのかわからない悠馬は、若干不思議そうな表情をしてそう答えた。


「そっか!わかった!じゃあまたね!」


「またね」


 嬉しそうな表情でトレーを持ち去って行く少女。その発言の真意を、悠馬はすぐに知ることとなった。



 ***



 寮へと帰り、しばらく時間が経過した頃。

 今日の夜ご飯を買い忘れていたことに気づいた悠馬は、風呂を上がって間もない状態で髪を拭きながら、ため息を吐いていた。


 今日は遊びに出かけていたのだから、ついでにコンビニに寄ってくれば良かった。そんな後悔が、今更になって現れる。


「風呂入ったのに外に行くのはなぁ」


 面倒だ。タオルで丁寧に髪の毛の水分を取り除きながら、独り言を呟く。


 そんな中、コンコンと、脱衣所の扉が叩かれる音がして、悠馬は立ち上がった。一体こんな時間にどうしたのだろうか?何か問題でもあったのだろうか?

 ゆっくりと立ち上がった悠馬は、髪を拭いていたタオルを首に回し、脱衣所への鍵を解除した。


 数秒の間があった後に、扉がゆっくりと開かれる。

 入ってきたのは、制服姿ではない、私服姿の夕夏だった。


「お邪魔しま…あ?」


 初めて聞く、夕夏の唖然とした声。何かにあっけにとられているように、口をぽかんと開けたままの夕夏は、勢いよく扉を閉めた。


「え!?ちょっと!?」


 俺何かした!?と言いたげに寮の中を見回す。何か変なものでも置いてあったのか、それとも変な虫でもいたのか。目が回るほど辺りを見回した悠馬は、何もいないことを確認してから、扉をノックした。


 対する夕夏。扉越しで座り込んで、顔を真っ赤にしていた。美哉坂夕夏という少女は、小中と社長の1人娘や、富豪の娘しか通わないような女子校、その中でもトップに位置するお嬢様学校に通っていたのだ。

 生徒はおろか先生も女だけ。そんな環境で育ってきた夕夏にとって、風呂上がりの同い年の男子というのは、あまりにも刺激が強すぎた。


 いい匂いがした!髪の毛ちょっと濡れてた!ラフな服着てた!女子たちが暁くんのことカッコいいって言ってたけど、今なら分かる気がする!そんなことを考えながら、夕夏は一度深呼吸をすると、再び扉に手を掛けた。


「ご、ごめんね?少し驚いちゃって」


「いや、全然気にしてないし大丈夫だよ」


 嘘である。悠馬は自分が何かしでかしたのではないか、その情報が今日のうちに出回って、自分が何が悪いかもわからないままハブられ始めるんだ。などと、軽いうつ状態に入っていた。


「そして、入試の日に蹴ったこと、すみませんでした。謝るだけじゃ許されないこともわかってます。慰謝料も払います!だから私の親には言わないでほしいです」


「え?」


 謝りたいって、もしかしてあの時に済んだ話のことだったのか?全く別の何かだと思っていた悠馬は、口をぽかんと開けたまま立ち尽くす。

 悠馬としては、あの件は既におあいことして処理されていた為、今更慰謝料の請求なんてする気がない。

 そもそも、悠馬は遺産を手にしてそこそこのお金がある状況なのだ。

 加えて、昨日美月と連太郎に相談した、携帯端末のチャージ料金もある。あの金は結果として、不具合の可能性が最も高いという結論に至った。そのうち治るだろ。と3人で話し、そのまま放置している。


「いや、お金欲しくないし…」


「じゃ、じゃあどうすれば…?」


 悠馬がお金はいらないと言ったことにより、夕夏は青ざめた顔をしていた。自分のお小遣いでなんとかなるならと思っていた夕夏にとっては、悪いお知らせである。


 直後、悠馬のお腹が鳴る。


「あ…そうだ。ご飯作れる?」


「え?うん。作れるよ」


 自分のお腹が鳴ったからか、顔を赤くした悠馬は、この場を平和的に乗り切れそうな、後に響かないような和解方法を見つけ出した。


「ご飯作ってほしいな。それでチャラ。俺は許す」


 どんなに不味くたって、許すことにしよう。別に謝罪が欲しいわけでも、何かが欲しかったわけでもない悠馬は、何か詫びを入れないと気が済まないといった表情の夕夏にそう告げた。


「そんなのでいいの?」


「そんなのがいいんだよ」


「ちょっと待っててね!私寮でご飯作ってたから!持ってくるね!」


 今日の夜ご飯は確保完了だ。夕夏の詫びの気持ちも受け取り、自分は腹を膨らますことが出来る。まさに一石二鳥だ。

 脱衣所の扉を通過し、自身の寮へと戻る夕夏を見送った悠馬は、何も置いてないテーブルを眺めて、何かを思いついた。


「少し寂しいから、そのうち花でも置くか」


「お待たせしました!」


 脱衣所の扉から、中くらいの大きさの鍋を手にした夕夏が現れ、それをキッチンへと持っていく。


「炊飯器も持ってくるから、ちょっと待っててね」


「うん。ありがと」


 行ったり来たりを3回ほど繰り返した夕夏は、悠馬の寮に元から置いてあった食器を取り出し、彼の承諾を貰ってから盛り付けを始めた。


「今日は肉じゃがです!お口に合うかはわからないけど、自信作だから是非食べて欲しいな!」


 何それ怖い。お口に合わなくても、彼女の自信作だから頑張って食べないといけないじゃん。

 そんな恐怖を感じた悠馬は、テーブルへと運ばれてきたごく普通の肉じゃがを見てひと安心する。


 見た目は普通だ。第1関門は突破したと言ってもいいだろう。勝手に見た目で評価している悠馬は、運ばれてきたご飯と、サラダを受け取り、向かいに座った夕夏を見る。


「一緒に食べるのか?」


「う、うん。ダメかな?寮に戻って食べるの二度手間だし…」


 完全に彼女の夜ご飯のことを配慮していなかった。勝手に1人で食べようとしていた悠馬は、1つ返事でそれを承諾すると、いただきますをした。


「いただきます」


「いただきます」


 肉じゃがを口に運ぶ。懐かしい味だった。真正面で笑顔を振りまく彼女が、まるでお母さんのようで、3年前に戻った気持ちになれた。

 祖父の家に越してきてからは、ずっと1人での食事しかしてこなかった。


「暁くん…?泣いてる?」


「え…?ごめん」


 夕夏に話しかけられ、我に返った悠馬は、自身の頬を流れる涙に触れ、顔を下に向けた。


「こちらこそ!ごめんなさい!」


 泣くほど美味しかったのか、泣くほど不味かったのかわからない夕夏は、手をアワアワと動かしながら、オロオロとした表情で悠馬を見つめた。


「ごめん。ほんとごめん。俺…何年か前に親が死んで…美哉坂とご飯食べてるとそれ思い出して…」


 家族と食卓を囲んでいた景色が、頭の中に過ぎる。

 もしあの時、少しでも何かが違かったら、未来は変わっていたのだろうか?ありもしない妄想が、後悔が心の中に渦巻く。


「ごめんなさい…嫌なこと思い出させちゃったよね…」


 夕夏は、それを聞いて席を立とうとした。彼にとって嫌なことを思い出させてしまったのかもしれない。そう思った夕夏は、その場から去ろうとした。


「待って。嬉しいんだ。こんなことずっとなかったから。こうして誰かと一緒に食卓を囲めて嬉しいんだ」


「そう…そっか。よかった」


 この、食卓を囲む家族のような温かみが、俺は嬉しかったんだ。どんなに足掻いても、どんなに望んでも、それはもう戻ってこないと思っていたから。


 その温かみが、懐かしさが、今目の前にあるから。


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