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最終章 銀河系最強の男

 ドミニークス・フランチェスコ三世は、人工惑星に帰還したが、

「ここは屈辱の場所だ。粉微塵に破壊しろ!」

と命じた。

「ジョー・ウルフ、ストラード・マウエル……。儂はこのままで終わる男ではないぞ」

 ドミニークス三世は、ガシンと肘掛けを叩いた。


 その頃ジョーは、帝国領にジャンピングアウトしていた。

「待ってろよ、ストラード。てめえだけは何としてもぶっ殺す」

 彼はホルスターのストラッグルを触り、ギリッと歯軋りした。


 他方フレッド・ベルトは、人生最大の危機を迎えていた。

「どういう事よ、フレッド? 何でジョーはいないの?」

 カタリーナが目を覚ましたのだ。フレッドは工場の隅まで追い詰められていた。

「いや、その、忘れ物を取りに行ったんだよ。待ってれば、戻って来るって」

 フレッドの嘘はあまりにも見え透いていて、カタリーナは溜息を吐いた。

「貴方を責めても仕方ないわよね。ごめんなさい、フレッド」

「あ、いや……」

 あまりに悲しそうなカタリーナを見て、フレッドの心は痛んだ。

(ジョー、絶対に生きて帰ってくれよ)

 彼は強く願った。

「ありがとう、フレッド。私も行くわ」

 カタリーナの思わぬ言葉に、フレッドは仰天した。

「そりゃダメだ、カタリーナさん。あんたを行かせたりしたら、儂はジョーに顔向けできなくなる」

「そんな事ないわよ、フレッド。私を誰だと思っているの? 黒い女豹、カタリーナ・パンサーよ」

 カタリーナはフレッドにウィンクしてみせる。

「ジョーの仇は、わたしにとっても仇よ。止めないで、フレッド」

 カタリーナの目は強い決意を秘めていた。フレッドは肩を竦めて、

「わかったよ。その代わり、餞別せんべつを持って行ってくれ」

「ええ」

 カタリーナは笑顔で答えた。

 フレッドはカタリーナ愛用のピティレスを三丁と弾薬を山ほど提供した。

「それから、儂の戦艦を貸すよ。だから、必ず返しに来てくれ。もちろん、ジョーと一緒にな」

「ありがとう、フレッド。必ず返しに来るわ。ジョーと一緒にね」

 カタリーナはフレッドを強く抱きしめた。フレッドはまたニヤけていた。


「ジョー・ウルフです。たった一機で現れました!」

 監視兵の報告に、アウス・バッフェンはニヤリとした。

「バカな男だ。本気で皇帝陛下を手にかけるつもりか。返り討ちにしてくれる」

 彼は司令室の中央に進み出て、

「全艦出撃! 奴をこのタトゥーク星に近づけるな!」

と命じた。

 

 ジョーは、遥か前方に見える帝国中枢のタトゥーク星を見据えいていた。

「来たか」

 敵の接近を知らせるアラームが鳴る。レーダーには無数の機影が映っていた。

「俺一人に、随分と大勢で歓迎会か? 笑わせるぜ」

 彼は操縦桿をギュッと握り締めた。やがて敵の攻撃が始まった。ジョーの宇宙艇はそれを巧みにかわし、タトゥーク星を目指す。

「おっと!」

 更に別働隊が現れ、ジョーに襲いかかる。

「邪魔だ!」

 ジョーは宇宙服を着込み、フードを上げた。

「どけェッ!」

 ストラッグルが吠え、多数の敵機が撃墜される。

「む?」

 その後方から、駆逐艦が現れた。

「大袈裟な!」

 宇宙艇一機に軍艦まで繰り出す戦法に、ジョーは呆れていた。

「バッフェンめ、ストラードにどやされたか?」

 ジョーはフッと笑い、

「しかし、変わらねえ! 邪魔する奴は消し飛ばす!」

 ジョーはストラッグルに特殊弾薬を装填し、駆逐艦を撃った。巨大な光束が艦体を貫く。

「何!?」

 駆逐艦は大爆発した。ジョーの宇宙艇はそれに煽られ、揺れた。

(爆弾を仕掛けてあったのか?)

 彼はフードを閉じて操縦席に座った。態勢を立て直し、その宙域を離脱する。

「何だと!?」

 ジョーはすっかり艦隊に囲まれていた。知らないうちに、誘導されていたのだ。

「畜生、乗せられたか……」

 彼の宇宙艇を取り囲むように戦艦が現れ、砲塔とミサイル発射孔を向けて来た。

「くそ……」

 ジョーは目を閉じた。

(カタリーナ……)

 最愛の女の姿が浮かぶ。

(迷惑ばかりかけたな……)

 彼は死を覚悟した。その時だった。

「ジョー!」

 そのカタリーナの声が聞こえた。と同時に、艦隊の一角で爆発が起こった。多弾頭ミサイルが飛びかうのが見える。

「まさか……」

 ジョーは宇宙艇を動かし、爆発が起こって混乱しているところを突っ切った。

「ジョー!」

 またカタリーナの声が聞こえた。前方にフレッドの戦艦が見えて来る。

「カタリーナなのか?」

「そうよ。酷いわ、ジョー。また私を置き去りにして! そんなに私の事が嫌いなの?」

 カタリーナの声は涙声だった。

「あ、いや、そういう事じゃないんだ……」

 どんな敵を前にしても怖気づかないジョーが、慌てていた。

「話は後ね。今はここを乗り切る事が優先よ!」

「そうだな」

 ジョーの宇宙艇は戦艦の死角に入り、攻撃した。カタリーナは多弾頭ミサイルと主砲で正面の戦艦を撃破する。


 バッフェンは、加勢に現れた戦艦を見て焦っていた。

「フレッド・ベルトだと!?」

 武器商人としても、銃工としてもトップクラスのフレッドの戦艦は、並みの艦隊では勝ち目がないのをバッフェンも知っていたのだ。

「態勢を立て直せ。このままでは全滅するぞ!」

 バッフェンは後ろにいるストラードの気を感じ、絶叫するように命令した。


「チッ!」

 ジョーは最後の敵戦艦を撃破し、離脱した。

「ジョー」

 フレッドの戦艦がハッチを開き、ジョーの宇宙艇を収容する。そして、ジャンピング航法で消えた。


「行ったのか?」

 バッフェンはホッとしている自分に気づき、腹が立った。

(ジョー・ウルフに怯えたというのか、この私が……)


 ストラード・マウエルは、椅子に座り、

「当面の危機は凌いだか。しかし、これからだな。ブランデンブルグの動きも気になる」

と呟いた。


 ジョーはブリッジに上がった。

「ジョー!」

 カタリーナは、操縦席から飛び出し、ジョーに抱きついた。

「助かったよ、カタリーナ。ありがとう」

「え、うん……」

 最初は叱られると思っていたカタリーナは、ジョーの優しい眼差しに顔を赤らめた。

「さあ、帰りましょう。ストラードを倒すには、戦力不足よ」

 カタリーナはジョーを見上げた。ジョーはフッと笑って、

「そのようだな」

 フレッドの戦艦は、ラルミーク星系第三番惑星に降下して行った。


 ジョー・ウルフの本当の戦いは、これからである。


                                  ── 完 ──

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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