表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/98

第十八章 再会

 ドミニークス三世のいる人工惑星に突入したジョーを待っていたのは、無数の戦闘艇だった。

「まだ蝿共がいるのか」

 彼はうんざりした顔で呟いた。戦闘艇は無人らしく、フォーメーションを組んでジョーの宇宙艇を攻撃して来る。

「面倒だな!」

 ジョーは再びフードを開き、立ち上がった。すると戦闘艇はサーッと離れて行く。

「なるほど、こっちの考えはお見通しって訳か?」

 しかしジョーは構わずストラッグルを撃った。戦闘艇はそれをかわすが、ストラッグルの光束はそのまま進み、人工惑星の外郭を貫いた。

「狸! いつまでこんなまどろっこしい事を続ける気だ!? ここを穴だらけにするぞ!」

 ジョーが回線を開いて怒鳴った。


 その頃ドミニークス三世は、カタリーナの追撃から逃れ、脱出の準備をしていた。

「ジョー・ウルフに乗り込まれた時点で、ここはもう捨てるしかない」

 彼はあっさりと人工惑星を放棄するつもりだ。

「閣下、どうぞ」

 脱出艦の発信準備が整い、ドミニークス三世は中に入った。

「やはり化け物か、奴は」

 ドミニークス三世は、自分の読みの甘さを悔やんだ。

(ここは一旦退き、ジョー・ウルフとアウス・バッフェンを戦わせる方が得策だな)

 彼は帝国軍艦隊を率いている親衛隊長アウス・バッフェンを利用しようと考えていた。

「出せます」

「よし、行け」

 ドミニークス三世を乗せた小型艦は、人工惑星を出た。


「む?」

 外で待機していたフレッド・ベルトが、その小型艦の動きに気づいた。

「何だ、あの艦は?」

 彼はすぐにジョーに通信した。

「ジョー、妙な船が出て来たぞ」

「多分狸だ。放っておいてくれ。今はカタリーナの救出が先だ」

 フレッドはニヤリとして、

「そうだな」


 そのカタリーナは、ドミニークスを追いかけていたが、途中何度も武装兵に妨害され、見失ってしまっていた。

「あの狸、今度会ったら絶対許さない!」

 彼女はムカムカしたまま廊下を走った。

「ジョー、来ているの?」

 思いは最愛の人に向けられた。

「きゃっ!」

 その時、再び武装兵が現れた。銃撃が始まり、カタリーナは近くの部屋に逃げ込む。

「しつこいわね!」

 彼女は愛用の銃「ピティレス」を見た。替えの弾薬がもう少ない。閉じ込められた時、ドアをぶち抜くのに使い過ぎたのと、敵が多過ぎるのが災いした。

「やれるだけやるしかない!」

 カタリーナが決心して飛び出そうとした瞬間、

「カタリーナ、そのまま!」

と声がした。

「え?」

 立ち止まった彼女の鼻先を巨大な光束が通過した。一瞬目が眩んだカタリーナだったが、

「ジョー!」

と叫び、廊下に飛び出した。その先には、見間違えようのない大好きな男が立っていた。

「待たせたな」

 ジョーはフッと笑ってストラッグルをホルスターに戻した。

「ジョー!」

 カタリーナはピティレスを放り出してジョーに飛びついた。

「カタリーナ!」

 ジョーはカタリーナのダイビングに驚きながらも、彼女を受け止めた。

「すまなかった。危ない目に遭わせちまったな」

「ううん、いいの。貴方は必ず助けに来てくれると思ったから」

 カタリーナは涙ぐんでジョーを見上げた。

「そうか。さ、脱出するぞ」

 ジョーはスッとカタリーナを突き放すと、走り出した。カタリーナはムッとしたが、

「ええ」

と彼に続いた。


「フレッド、カタリーナを救出した。この空域を離脱するぞ」

 ジョーからの通信を聞き、フレッドはニッコリした。

「了解。すぐにでもジャンピング航法をできるようにしておく」

「頼む」

 フレッドは後方から迫る帝国軍の艦隊を警戒しながら、準備を進めた。


 その帝国軍艦隊の旗艦にいるバッフェンは、ドミニークス三世の逃亡とジョーがカタリーナを救出した事を知った。

「狸め、我が軍とジョー・ウルフの戦闘を望んでいるようだな。それは只の消耗戦になる」

 バッフェンは通信機を取り、

「全艦帰還準備。帝国へ戻るぞ」

と命じた。


 ジョーはバッフェンが仕掛けて来るかと思い、警戒していたが、帝国軍艦隊がドミニークス領から撤退し始めたのを知り、驚いていた。

「貴方が怖いのね、バッフェンも」

 補助席のカタリーナが言うと、

「いや。奴はそんな男じゃない。無駄な戦いを避けたんだよ」

「そうなの?」

 カタリーナはつまらなそうに応じた。


 ドミニークス三世は、帝国軍が撤退し、ジョー達も追って来ない事を知り、ホッとしていた。

「各反乱軍の動きにも警戒を怠るな。帝国が退いたのをきっかけに仕掛けて来るかも知れん」

 ドミニークス三世は険しい表情で側近に命じた。

(ストラード・マウエルめ。この借りは必ず返すぞ)

 拳を震わせ、彼は思った。


 その帝国皇帝ストラード・マウエルは、ドミニークス三世がジョーを仕留め損なった事を知り、ニヤリとした。

「愚かな事だ。あの男を殺そうなどと思うのは、まさに天に唾するのと同じ」

 彼は椅子から立ち上がり、

「ジョー・ウルフはまた私を殺しに来る。警戒を続けろ。そして、親衛隊は組織を立て直し、ジョー・ウルフ抹殺に全力を注げ」

と命じた。


 ジョーはフレッドの戦艦に戻っていた。

「いやあ、本当に良かった、カタリーナさんが無事で」

 フレッドが操縦席から立ち上がって言った。

「ごめんね、フレッド。心配かけて」

 カタリーナが神妙そうな顔で詫びると、フレッドは驚いて、

「とんでもない。謝らなきゃならんのは儂の方だよ、カタリーナさん。あんたを一人にして、申し訳なかった」

「いいのよ。お互い様でしょ」

 カタリーナはフレッドを抱きしめた。心なしか、彼は嬉しそうだ。

「さてと、ラルミーク星系に戻るか」

 フレッドは操縦席に座り、操縦桿を握る。ジョーとカタリーナも席に着いた。

「ジャンピング航法に入るぞ」

 フレッドの戦艦はジャンピング航法で中立領のラルミーク星系に飛んだ。


 バッフェンは帝国中枢のタトゥーク星に帰還すると、すぐさまストラードのところに行った。

「ジョー・ウルフは必ずここに来るはず。今度こそ確実に仕留めよ。もはやあの男の役目は終わった」

 ストラードが冷徹な顔で言った。バッフェンは跪いて、

「はは!」

と頭を下げた。


 フレッドの工場に着くと、カタリーナは疲れからかすぐにソファで眠ってしまった。

「無防備な姫だな」

 フレッドは笑って彼女に毛布をかけた。

「じゃあ、またカタリーナを頼む、フレッド」

「ああ。今度は帝国か?」

 フレッドはジョーを見上げた。ジョーはニヤリとして、

「ストラードはあのままにしておけねえ。必ず仕留める」

「そうか。死ぬなよ、ジョー」

 フレッドが手を差し出す。ジョーはその手を握り、

「もちろんだ。こんな事で死ぬつもりはない」

と言うと、工場を出て行った。

「ジョー……」

 カタリーナの寝言にフレッドはビクッとしたが、

「すまないな、カタリーナさん。またあんたを騙さなくちゃならん」

と呟き、毛布をかけ直した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ