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第十六章 脅迫

 ジョーの宇宙艇はドミニークス軍の戦闘艇をあるいは撃破し、あるいはすり抜け、更に進む。

「カタリーナ……」

 ジョーがそう呟いた時、前方に途方もなく大きい三次元映像が映し出された。付近の数基の人工惑星から出されているようだ。

ドミニークスか?」

 ジョーは眉間に皺を寄せ、その映像を睨んだ。映像はやがてチラつきが収まり、ドミニークス三世の巨体と、手首と足首を拘束されて彼に吊り上げられた状態のカタリーナの姿をはっきりと映し出した。

「!」

 ジョーは目を見開いた。

「それ以上進むか、ジョー・ウルフ? それ以上我が新共和国を侵略するなら、お前の恋人はどうなるかわからんぞ」

 ドミニークス三世はニヤリとして、カタリーナを高々と掲げた。

「うう!」

 彼女は手首に全体重がかかっているので、思わず呻いた。

「止まるのだ、ジョー・ウルフ。そして、反転し、後方にいる蛆虫共バッフェンを殲滅しろ」

 ドミニークス三世の顔が狡猾になる。ジョーは宇宙艇を停止させた。

「ついでに、お前の仲間のジイさんにも、攻撃をやめさせろ」

 その言葉にジョーの援護をしていたフレッド・ベルトはムッとした。

「誰がジイさんだ!? お前にジイさん呼ばわりされたくないわい!」

 彼はバンとモニターを叩いて怒鳴った。

「しかし、カタリーナさんの命には代えられないな……」

 フレッドはミサイルの射出を止めた。

「ジョー、どうする? 儂はバッフェンを叩くのは構わんが?」

 フレッドが特別回線でジョーに尋ねる。盗聴を危惧したのだ。

「いや、バッフェンは叩かない。恐らく、狸の声は奴も聴いているはず。下手をすれば、狸とバッフェンに挟み撃ちにされる」

「ああ、そうか」

 さすがジョーだな、とフレッドは感心してから、

「で、どうするんだ?」

「爆弾を使う」

「え?」

 思ってもいない答えを聞き、フレッドはキョトンとしてしまった。

「取り敢えず、バッフェンに仕掛けるフリをする。奴もすぐには攻撃を仕掛けては来ないだろうから、その隙に狸のところにある爆弾を爆発させる」

「わ、わかった」

 ジョーの作戦の詳細を尋ねたかったフレッドだったが、今聞いても仕方がないと思い、戦艦を反転させ始めた。


 ドミニークス三世は、ジョーの宇宙艇とフレッドの戦艦が帝国軍の艦隊に進路を取ったのを知り、フッと笑った。

「所詮は、あいつも人間という事だ。好きな女のためなら、信念も誇りも捨てる」

 ドミニークス三世はカタリーナを床に下ろし、彼女を見た。

「卑怯者!」

 カタリーナはありったけの声でドミニークス三世を罵った。

「卑怯? そうかも知れんな。しかし、奴のような化け物とまともに戦うほど、儂は愚かではない」

 ドミニークス三世はニヤリとした。

「……」

 カタリーナはドミニークス三世を睨みつけ、歯軋りした。

「さてと。いかなジョー・ウルフと言えども、帝国軍の大艦隊を相手にそれほど戦えるはずもない。我々も備えるぞ。全宙域、戦闘態勢に入れ」

 ドミニークス三世は椅子に戻り、命令した。

 フランチェスコ星域の全ての人工惑星が武器を展開する。完全に展開が完了すれば、帝国軍も容易に侵攻できないであろう。

「帝国の艦隊もまた同じ。ジョーとフレッドを相手に無傷ではすまない。そこを叩けば、我が方の被害は少なくてすむ」

 ドミニークス三世はしてやったりの表情で豪快に笑った。


 一方、帝国軍艦隊は、ジョーとフレッドの戦艦が向かって来ているのを知り、慌てていた。

「騒ぐな、見苦しいぞ」

 バッフェンはスクリーンに映るジョーの宇宙艇を見て、

「あの男が、狸の脅迫に屈服したとは思えんな」

と呟き、

「連中が仕掛けるまで撃つな。我らの攻撃目標は、あくまでドミニークス軍だ」

と全艦に通達した。


 ジョーの宇宙艇は、帝国軍の艦隊を視認できる位置まで来ていた。

「そろそろかな?」

 ジョーは手にした通信機器を見て、

「腰を抜かしてもらおうか、狸!」

とボタンを押した。


「どうだ、ジョーは帝国軍と交戦状態に入ったか?」

 ドミニークス三世が確認した時だった。グオオオンと音がし、屋敷全体が揺れた。

「何事だ!?」

 彼はすぐに通信機に怒鳴った。

「ジョー・ウルフの乗って来た駆逐艦がいきなりミサイルを発射しました! 格納庫が全壊です」

「何ィッ!?」

 ドミニークス三世は仰天して椅子から立ち上がった。

「うおお!」

 また轟音と振動が伝わる。

「主砲が発射されました! 人工惑星全体が……」

 そして通信が途絶えた。ドミニークス三世は唖然とし、

「あの男は、自分の女がいるこの人工惑星ほしを破壊するつもりか?」

 しかしカタリーナは、ジョーの狙いに気づいていた。

(混乱を引き起こして、一気に攻め込むつもりね、ジョー)

 彼女は拘束具を外そうと動き出す。

(私もこうしてはいられない)


 ジョーが乗って来た駆逐艦は、次々に格納庫内を攻撃し、辺りを火の海にしていた。

「あのヤロウ、何を考えてやがるんだ!?」

 ケン・ナンジョーが叫びながら、消火作業に当たっていた。

「こんな事になっちまって、俺の立場はどうなるんだ?」

 彼はジョーを連れて来た事を後悔していた。

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