表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/98

第五章 離脱

「突入開始!」

 バッフェンのエアーバギーを先頭に、次々に車両が敷地内に入った。

「来るぞ。どうするつもりだ?」

 ケンが尋ねる。ジョーは、

「やるしかねえだろ」

とケンを見た。

 バッフェンは通信マイクを掴み、

「仕掛けるのは、私が合図したらだ。まだ何もするな」

 彼はエアーバギーから飛び降り、ゆっくりとジョー達のいる駆逐艦の方へ歩き出す。

「隊長、危険です!」

 親衛隊員の一人が叫んだが、バッフェンはそれを無視して歩を進めた。

「誰か近づいて来るぞ」

 ケンが外を見て言った。ジョーは、

「バッフェンさだ。奴め、何企んでやがるんだ?」

 バッフェンはあと数メートルのところで立ち止まり、

「ジョー。聞こえているか? 貴様の、そのずば抜けたビリオンス・ヒューマン能力をもってすれば、私が何を言いたいのか理解できよう?」

 ジョーは身を乗り出し、

「ヤロウ、俺を挑発するつもりだな」

 バッフェンはニヤリとし、

「あと五分待ってやる。その間に降りて来ない場合は、一斉に攻撃を仕掛ける」

 ジョーはフッと笑い、

「バカか、てめえは……」

「何!?」

 バッフェンはムッとした。ジョーはニヤリとし、

「この駆逐艦には、対艦用のミサイルが二十基搭載されているんだぜ。そいつに火がついたら、てめえら全員消し飛ぶぞ」

「ぐっ……」

 バッフェンは汗を滲ませた。

(奴がこの艦を選んだのは、そのためだったのか……)

 彼は意を決した。

「ならば、私が素手で貴様を始末するまでだ」

 バッフェンは駆逐艦に飛び乗り、たちまちのうちにブリッジの近くまで昇った。

「来るか?」

 ケンが身構えた。ジョーはスッとストラッグルを構え、窓越しにバッフェンを撃った、光束が窓をぶち破り、バッフェンに向かう。

「やった!」

 勝利を確信したケンが叫んだ。しかしジョーはストラッグルを構えたまま、

「いや、まだだ!」

 バッフェンは光束をかわし、ブリッジに取り付いた。

「甘いぞ、ジョー! この私に銃などで立ち向かうつもりか?」

 彼は開けられた穴からブリッジに飛び込んで来た。ジョーはストラッグルをホルスターに戻し、

「拳で十分か、てめえなんかよ」

「ほざけ!」

 ケンは身震いして二人から離れた。

(この二人、どっちが上だ?)

 バッフェンが先に仕掛けた。彼の右ストレートがジョーの顔に向かう。ジョーはそれを左手で受け止め、右アッパーを見舞う。バッフェンは素早く身を退けてこれをかわした。そのかわしながらの状態から、右脚を動かし、ジョーの左脇腹にトゥーキックを繰り出した。ジョーはそれを肘で(さば)いた。

「くっ!」

「うぬっ!」

 二人は互いに離れ、相手を睨んだ。

「腕を上げたな」

 バッフェンが言うと、ジョーはフフンと笑って、

「年食ったんじゃねえか、隊長さんよ」

「黙れっ!」

 バッフェンはジョーに突進した。ジョーは窓の外へと飛び出し、甲板に降りた。バッフェンもそれを追いかける。

「おおっ!」

 親衛隊員達がどよめいた。バッフェンの頬から、血が流れ出したのだ。バッフェンはその血を拭い、

「貴様、いつの間に……?」

 ジョーはそれには答えず、ストラッグルを再び構えた。バッフェンはフッと笑い、

「ストラッグルで私は倒せんよ」

と走り出した。

「普通の弾薬だったらな!」

「何!?」

 バッフェンは蒼ざめた。

「まさか!?」

 ジョーはストラッグルを撃った。

「ぐはっ!」

 巨大な粘着状のものがバッフェンを覆ってしまった。バッフェンはもがいて転げ回った。

「フグーッ!」

「そらよ!」

 ジョーは甲板からバッフェンを蹴落とした。

「隊長!」

 落下するバッフェンを隊員三人が受け止めた。ジョーはそれを見下ろして、

「あばよ、バッフェン。今はちょっと忙しいんでな。また後でゆっくり相手をしてやるよ」

と言うと、ブリッジに戻った。

「バッフェンを撃退するとは思わなかったぞ」

 ケンが声をかけると、ジョーは防護シャッターを下ろしながら、

「さてと。長居は無用だ。一気に脱出するぜ」

と操縦席に座った。

「駆逐艦が!」

 隊員の一人が叫ぶ。駆逐艦のエンジンが始動し、艦体がゆっくりと動き出した。

「何をしているのだ? 足を止めろ!」

 やっと粘着物かを破ったバッフェンが怒鳴る。

「何としても食い止めろ! 親衛隊の名にかけて!」

「はっ!」

 隊員達はエアーバギーに積んであったバズーカ砲や地対空ミサイルを撃った。しかし、駆逐艦はビクともしなかった。バッフェンは歯軋りして、

「ヘリにエンジンを狙わせろ! 機銃や小型ミサイルでは、そこを叩くしかない!」

 ジョーはレバーをいっぱいに引き、垂直上昇用のエンジンを始動させた。駆逐艦はゆっくりと上昇を始めた。そこへ武装ヘリが接近して来た。ヘリはエンジン後方に回り込む。ジョーはこれをマルチスクリーンで確認し、

「エンジンを潰すつもりか……。そう簡単に!」

 彼は噴射を最大にし、ヘリを威嚇した。ケンが、

「まずいぞ。エンジン付近には迎撃用の武器がない」

 ジョーもさすがに焦っていた。大気圏内の速度では、小回りの利くヘリには敵わない。

(こんなところでやられてたまるか!)

 ヘリの攻撃が始まった。ジョーは艦を動かして直撃をかわしたが、それにも限界があった。

「どうやら、修理中の艦だったらしいな」

 ジョーはシステムエラーの表示が明滅するのを見て呟いた。

「おい……」

 ケンも焦りの色を濃くした。駆逐艦はヘリを振り切ろうとするが、ヘリは執拗にエンジンノズルを狙って来る。

「畜生、しつこい奴らだ……」

 ジョーは思わず舌打ちした。その時、前方からエアーバイクが一台、滑空して来た。

「むっ?」

 ジョーとケンはスクリーンに映るそれに気づき、目を見張った。それには対ヘリ用バズーカを構えたカタリーナが乗っていたのだ。彼女はバズーカ砲でたちまちにうちにヘリを全滅させ。駆逐艦の前に出てテールを振る。

「乗せろって合図してるぞ」

 ケンがジョーを見た。ジョーは通信マイクに、

「カタリーナ、後方ハッチを開く。そこから入ってくれ」

「了解!」

 エアーバイクは、駆逐艦の後方のハッチに回り込んだ。

「何者だ、あのエアーバイクは?」

 バッフェンが怒鳴った。隊員が、

「どうやら、カタリーナ・エルメナール・カークラインハルトのようです」

「うぬっ!」

 バッフェンは拳を握りしめ、

「おのれっ! すぐに追撃隊を編成し、駆逐艦を追うのだ。奴らをこの星から生かして出すな!」

と命令した。


 ハッチからエアーバイクが入り、中に着地した。ジョーがカタリーナを出迎えた。カタリーナはジョーを見るなり、バズーカを投げ出し、彼の胸に飛び込んだ。ジョーは驚いて、

「おい、カタリーナ、どうしたんだ?」

 するとカタリーナは、

「どうして脱獄したのに、私のところに来てくれなかったのよ? 私、待ってたのよ。そしたら、軍からの密報で貴方がここにいるって聞いて……」

と涙ぐんで答えた。ジョーは溜息を吐いて、

「カタリーナ、あんたが今した事がどういう事か、わかっているのか?」

「だって……」

 カタリーナはジョーを見上げた。

「あんたは、親衛隊、つまるところ、帝国に銃を向け、しかも撃っちまったんだぞ。今はもう、俺と立場は同じだ」

 ジョーの厳しい表情に堪え切れず、カタリーナは俯いた。ジョーはカタリーナから離れ、

「とにかく、ブリッジに上がろう。ここは危険だ」

「ええ……」

 二人は格納庫を出た。

 駆逐艦は上昇を続け、次第に艦首を上に向け始めた。

「奴ら、宇宙艇を繰り出して来たぞ」

 ブリッジに戻ると、ケンが言った。カタリーナはケンを見るとあっと叫び、

「貴方がどうしてここに?」

「知り合いか?」

 ジョーはケンを見た。ケンは苦笑いして、

「士官学校で同期だったのさ。ジェット・メーカーも確かそうだったよな」

と答えた。ジョーは無言のまま操縦席に座った。カタリーナも補助席に座り、ケンも身体を前に向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ