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第66話 ブランドールJr.散る!

 ブランドールJr.はベルトのホルスターから変わった形の銃を取り出した。

「この銃が貴様にとってどれほど恐ろしいものか、すぐにわからせてやる」

「早くやってみろ」

 ブランデンブルグはニヤリとして言った。ブランドールJr.はバッと銃を構えて、

「この一撃で、貴様は肉体も精神も崩壊する!」

 引き金を引いた。光束が飛び出し、ブランデンブルグに向かった。ブランデンブルグはスッと右手を開いて突き出し、

「どれほどのものか試してやろう」

 光束を手の平で受け止めた。次の瞬間、彼の全身に激痛が走った。

「うぐわぁっ!」

 ブランデンブルグは全身から光束を噴き出し、転げ回った。ブランドールJr.はニヤリとして一歩踏み出し、

「終わりだ、ブランデンブルグ。この銃の弾薬には、ビリオンス・ヒューマンの特殊な遺伝子構造を揺るがす成分が含まれている。貴様がビリオンス・ヒューマンである以上、この恐怖から逃れる事はできない」

 ブランデンブルグは七転八倒の苦しみを味わっている状態だった。床を転げ回り、遂には口から血を吐き、身体中の血管を浮き上がらせた。

「ぐはーっ!」

 ブランデンブルグ絶命するか、と思われる瞬間だった。


 ジョーは防弾服を手に取り、周囲を見、中を覗いた。

「むっ?」

 彼は内側にディスクケースが取り付けられている事に気づいた。

「これは……」

 ジョーはケースを取り出し、ふたを開けた。中にはディスクが一枚入っており、そこにはマイクのサインが書かれていた。フレッドがそれを見て、

「マイクが残したディスクか?」

「見てみよう」

 ジョーはすぐに再生機にディスクをセットし、モニターを見た。やがてモニターにはマイクが映った。

「これを見ているのがナブラスロハでない事を祈る。もしジョー、お前が見ているのなら、私の遺言を聞いて欲しい」

「やっぱりマイクはブランデンブルグを知っていたか」

 バルトロメーウスが呟いた。マイクはさらに、

「ナブラスロハ・ブランデンブルグは、生まれついてのビリオンス・ヒューマンで、しかも奴の能力は桁外れだ。お前もビリオンス・ヒューマンの片鱗を見せているようだが、奴とは比べ物にならない。そこで私は、ストラッグルを造っている金属、通称ブラックダイヤと呼ばれている合金αの研究をした。αがエネルギーを通しにくい物質であることから、私はストラッグルの材料に選んだのだが、そのαを使って、防弾服を造ってみようと考えたのだ」

 マイクの顔は暗くなった。

「実験は成功し、防弾服は完成した。今お前のところにあるのがそれだ。ところがナブラスロハに私のストラッグルの中でもとりわけ精巧にでき、しかも100%ビリオンス・ヒューマン能力を発揮できるものを奪われてしまった。奴は恐らく私が防弾服を完成させた事を知り、私を殺しに来るだろう。もし私が死んだら、それがどんなに自然な死に方でも、ブランデンブルグによるものだと思ってくれ。そして、同じ地球人でありながら、己の野望のために多くの同郷人を殺し、宇宙を我が物にしようとしている奴の狂気を打ち砕いて欲しい」

 ディスクはそこで終わって、モニターは停止した。ジョーはすっかり驚いていた。

「奴が、地球人……?」

「そうか。それで奴はジョーの事をよく知っていたのか。カタリーナさんを連れ去ったのも頷ける」

 フレッドが言うと、バルトロメーウスが防弾服を見て、

「とにかく、こいつさえあれば、奴の力なんか怖くないぜ。さァ、行こう、奴の城へ」

「いや、まだ疑問がある」

 ジョーか言った。バルトロメーウスとフレッドは異口同音に、

「えっ?」

 ジョーを見た。

「奴がマイクを知っていたという事は、奴は10年前にすでに化け物だったという事だ。どう見ても俺達と同年代の奴が、それほどの野望を持つだろうか?」

「その答えは私に言わせてもらおうか」

 ルイがマリーを伴って現れた。その後ろにムラト・タケルもいた。ジョーはルイを見て、

「どういう事だ?」

「奴は見かけより遥かに長く生きている。我々の5倍は生きていると言っていた」

「何だって? じゃあ奴は、100歳を超えているっていうのか?」

 バルトロメーウスが大声で言った。ジョーはニヤリとして、

「化け物もそこまで行くと笑えるな」

「確かにな。しかし、ブランデンブルグは医学の力で若さを保っているようには見えない」

 ルイは言い添えた。フレッドが腕組みをして、

「ふーむ。となると、奴は一体どうやって若さを保っているのかな?」

 一同の周囲に、筆舌に尽くし難い緊迫感が漂った。


 ブランデンブルグは口から滴る血を右手で拭って立ち上がった。ブランドールJr.は銃をブランデンブルグに向け、

「これで終わりにしてやる。出力はさっきの5倍。お前は跡形もなく消し飛ぶぞ」

「どうかな?」

「強がりを言うな! 死ねっ!」

 再び光束がブランデンブルグに向かった。ブランデンブルグはそれを右手の平で受け、弾き飛ばした。

「何!?」

 ブランドールJr.は仰天してブランデンブルグを見た。ブランデンブルグはニヤリとして、

「この程度で私を殺せると思ったのか。愚かな奴だ」

 ブランドールJr.は銃を見て、

「バ、バカな……。ビリオンス・ヒューマンがこの銃の光束を受けたら、間違いなく死ぬはず。俺はアンドロメダ大星雲の実験場でそれを見たのに……」

 ブランドールJr.の額から汗が流れ落ちた。ブランデンブルグはスッとJr.に近づき、

「それは雑魚だったのだ。ビリオンス・ヒューマンは急成長する人類。貴様の銃が仮に昨日の私を殺せたとしても、今日の私は殺せぬ。ましてや、一撃目を手加減し、私に反撃の機会を与えるような戦い方では、決して私を殺す事は出来ぬ」

「くっ……」

 ブランドールJr.は思わず一歩退いた。ブランデンブルグは一歩踏み出し、

「今度は私の番だ。宇宙最強を自負する男の力、地獄への手土産にするがいい」

「……」

 ブランドールJr.の全身から冷や汗が噴き出した。

( く、くそう……。こんな形でやられるのか……? )

「お前の銃の礼に私も銃で反撃しよう」

 ブランデンブルグがマントの下から取り出したのは、ジョーのストラッグルより一周りくらい大きいストラッグルであった。

「ストラッグル? ハハハ。そんなものでこの俺を殺せると思っているのか?」

 ブランドールJr.は安心したように言い返した。しかしブランデンブルグはニヤリとして、

「これは普通のストラッグルではない。一度味わってみるか?」

 狙いもつけずに引き金を引いた。光束はブランドールJr.の右へ大きく外れた。ブランドールJr.は高笑いをして、

「バカめ、そんな腕でこの俺を……」

 その時、彼の背中を10本ほどの光束が襲った。ブランドールJr.は前に弾き飛ばされ、突っ伏した。

「ググッ……」

 ブランドールJr.はブランデンブルグを睨みつけた。ブランデンブルグはスーッとストラッグルを上に向け、

「ほォ。アンドロメダの防弾服はさすがに優れているな。しかしいつまで保つかな?」

 また発射した。光束は天井に向かい、また10本に分かれて今度は降下してブランドールJr.に向かった。

「くそっ!」

 ブランドールJr.は一瞬の差でそれをかわし、立ち上がった。しかし光束は床には当たらずにもう一度曲がり、立ち上がったJr.の腹に命中した。Jr.はその勢いで後ろへ吹っ飛ばされた。

「うわーっ!」

「まだ立てるとはなかなかタフな男だ。しかしもうゲームは終わりだ」

 ブランデンブルグはストラッグルをJr.に向けた。Jr.はやっと立ち上がり、

「一体これは……?」

とどめだ、ブランドールJr.」

 ブランデンブルグは目を細めてストラッグルを撃った。ブランドールJr.はその途端ブランデンブルグに突進した。

「むっ?」

 光束はブランドールJr.とすれ違ってから再び10本ほどに分かれてUターンし、ブランドールJr.の背中に向かった。

「どおっ!」

 ブランドールJr.はブランデンブルグに組みついた。ブランデンブルグはハッとして、

「何!?」

「光束から逃れられないのなら、貴様を道連れだ、ブランデンブルグ!」

「うおおっ!」

 ブランデンブルグはブランドールJr.に押され、一歩二歩と退いた。ストラッグルの光束はブランドールJr.の背中に突き刺さり、それを貫いた。

「ぐわーっ!」

 ブランドールJr.は口から血を吐き、ブランデンブルグに倒れかかった。

「貴様も終わりだ……」

「終わりはお前だけだ」

「何?」

 ブランデンブルグから崩れるようにしてブランドールJr.が離れた時、全てがはっきりとした。ブランドールJr.の身体を貫いた光束は、ブランデンブルグの軍服に焦げ目すら着けていなかったのである。ブランドールJr.はそれに気づき、

「何故……?」

 ブランデンブルグは嘲笑してブランドールJr.を見下ろし、

「ストラッグルの光束は私自身の力。私のビリオンス・ヒューマンエネルギーだ。自分の力を自分にぶつけられても、擦り傷一つ負いはしない」

「くっ……」

 ブランドールJr.は屈辱に塗れていた。ブランデンブルグはストラッグルをブランドールJr.の眉間に押し当て、

「地獄に着いたら、ストラードやバッフェンによろしく言ってくれ」

 引き金を引いた。光束がブランドールJr.の頭を埋め尽くした。


 フレッドの工場にいた者全員が、ブランドールJr.の思惟が飛び散るのを感じた。

「死んだか、ブランドールJr.」

 ジョーが呟くと、ルイが、

「とうとう銀河系は奴の手中に落ちたな。支配者を自称する連中の全滅によって」

「行くぜ」

 ジョーはバルトロメーウスを見た。バルトロメーウスはキョトンとして、

「どこへ?」

「決まってるじゃねえか。奴の城だよ。カタリーナを助け出して、奴をぶっ潰す」

 ジョーはそう言って研究室を出て行った。バルトロメーウスはすぐにそれを追いかけた。ルイがそれに続いた。

「もう俺達にしか奴は倒せないからな」

 バルトロメーウスが言うと、ジョーはニヤリとして、

「確かにな」

 3人の男達が、遂にブランデンブルグの大宮へ向かう事になったのである。

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