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第65話 ブランドール・トムラーJr.の帰還

 アンドロメダ大星雲を背景にして、外宇宙を航行する大艦隊があった。その中の旗艦である超大型戦艦には、トムラー軍の紋章が入っていた。

「銀河系に異変が起こっていると商船の連中が言っていたが、確かに様子が変だ。親父と連絡が取れないのも、そのせいか」

 司令室の中央にあるキャプテンシートに座っている、目つきの鋭い長髪の若い男が呟いた。彼はトムラー家の継承者、ブランドール・トムラーJr.である。Jr.は立ち上がり、

「トムラー領に急げ。親父達の消息が知りたい」

「はっ!」

 Jr.の大艦隊は、銀河の光の中へと進んだ。


 ジョーとフレッドとバルトロメーウスは、マイクの残したストラッグル全てを艦内に運び、地球を出発した。

「マイクはあまりに天才過ぎた。だから俺達凡人にはわからないような謎を山のように残して逝っちまった」

 席にもたれ掛かってジョーが言った。フレッドは操縦をフルオートに切り替え、

「そうだな。確かにあいつが何かを言おうとしているのはわかるが、それが一体なんなのかはわからんからな」

「結局、地球に行ったのは全くの無駄足だったのかな?」

 バルトロメーウスが呟いた。するとジョーは、

「いや、そんな事はない。ブランデンブルグがここ何日か静かにしていたのに、俺達が地球へ向かったと知ると、すぐにあんな化け物を差し向けて来やがった。間違いなく、奴は何かを恐れたんだ」

「ストラッグルとビリオンス・ヒューマン能力との関係か?」

 フレッドが尋ねた。ジョーはフレッドを見て、

「だろうな。そしてもう一つ、ブランデンブルグはマイクを知っているはずだ」

「何だって!?」

 フレッドとバルトロメーウスは異口同音に叫んだ。ジョーはフッと笑って、

「これは俺の勘だけどな」

と言った。


 Jr.は茫然自失の体で、トムラー領の荒廃ぶりを窓から見渡していた。

「たった半年……。たった半年、外へ行っている間に、我が故郷はまさに跡形もなしとは……」

 Jr.はギラッと目を光らせ、

「一体何があったんだ?」

 彼は身体中から怒りのエネルギーを放出していた。すると通信兵が、

「確認が出来ました。ブランデンブルグです」

「何ィ!?」

 Jr.はブランデンブルグに関しては全く知識ゼロであった。

「何者だ?」

「星雲間を航行し、宇宙に君臨する、まさしく最大最強の男です。奴はまた、ビリオンス・ヒューマンでもあります」

 するとJr.はニヤリとし、

「ビリオンス・ヒューマンか。面白い。ブランデンブルグとやらが、この俺とどこまで渡り合えるか、確かめてみるか」

 Jr.はビリオンス・ヒューマン必殺の秘策を胸に秘めていた。


 ブランデンブルグはカタリーナのいる部屋を訪れていた。カタリーナはすっかり衰弱し、その美しさも少しずつ失われていた。

「もう一週間も何も口にしていないそうだな。いくら帝国軍で鍛えていたとは言え、これ以上無理を続けると、死ぬぞ」

 ブランデンプルグが顔を近づけて言うと、カタリーナは顔を背けて、

「貴方にも他人を気遣う心があったの。驚きね」

 擦れた声で皮肉を言った。ブランデンブルグはニヤリとし、

「それだけの事を言えるのなら、まだ死なぬ。安心した」

「……」

 カタリーナは何も言わなかった。ブランデンブルグはさらにカタリーナに近づき、

「ジョー・ウルフに会いたいか?」

「……」

 カタリーナはやはり何も答えない。ブランデンブルグはフッと笑い、

「まァ良い。もうすぐ奴はここに来る。お前を取り戻しにな。そして私に殺されるのだ」

 カタリーナはキッとしてブランデンブルグを睨んだ。ブランデンブルグはその時、Jr.のイメージが頭の中を突き抜けるのを感じた。

「むっ?」

 彼はカタリーナから目を離し、辺りを見た。

( 何だ、今の男は? 私の意識に深く入り込んで来おった )

「……?」

 カタリーナは一瞬ブランデンブルグが慌てたように見えたのでハッとした。

( 何かしら? この男の冷たい心を揺るがしたものは? )


 フレッドの艦はラルミーク星系に戻って来ていた。

「何? それは本当か?」

 フレッドは仲間からの通信でブランドールJr.が銀河系に戻った事を知った。バルトロメーウスが、

「Jr.って確か、嘗てビスドム・フレンチの最大の好敵手(ライバル)と言われた男だ。奴にはあのメストレスさえも一目置いていたと聞いたぜ」

「Jr.が何故今頃戻って来たんだ?」

 フレッドが通信機に言うと、

「銀河系に異変が起きているって聞きつけたらしいぜ。こりゃまた一波乱ありそうだな」

「ああ」

 フレッドは肩を竦めてジョーを見た。ジョーは窓の外に目をやり、

「とにかく、今はそんなヤロウの事より、マイクの遺品の謎を解く方が先だ」

「そうだな」

 フレッドの艦は、第4番惑星に降下して行った。


 ブランデンブルグは皇帝の間の椅子に寛ぎ、部下からの報告を受けていた。

「アンドロメダから戻ったというのか?」

 ブランデンブルグは眉をひそめた。部下はディスクを差し出し、

「はい。そやつの正体は、ブランドール・トムラーの息子です」

「……」

 ブランデンブルグはいつになく焦っていた。

( まさかと思うが……。しかし、アンドロメダに行っていた以上、ビリオンス・ヒューマンの弱点を知らぬはずがない )


 ブランドールJr.は艦隊をブランデンブルグの大宮に向かわせていた。

「ジョー・ウルフ打倒のため、アンドロメダに渡り、ビリオンス・ヒューマンの研究の最先端を吸収して来たが、まさかブランデンブルグとかいう男にその方法を試す事になるとはな」

 Jr.はキャプテンシートに座って呟いた。

「いずれにしても、銀河を手中に収めるには、その男、排除しなければならないようだな」

「見えて来ました! ブランデンブルグの居城です!」

 レーダー係が伝えた。Jr.はスクリーンに目を向けた。そしてそこに映る大宮を見てニヤリとし、

「何が居城だ。あれは化け物屋敷だ。悪趣味の極致だな」

と言った。


 ブランデンブルグは大宮の司令室に椅子ごと移動して来た。兵の1人が、

「ブランドールJr.の軍が、大宮に接近しています」

「来たか、小僧」

 ブランデンブルグは先程とは打って変わって落ち着き、冷酷な笑みを浮かべていた。

「貴様はこの私の力を恐らく見誤っているだろうな」

 彼は呟いた。

「攻撃はして来ない様子です。如何致しましょう?」

「気にするな。好きにさせておけ」

 ブランデンブルグは立ち上がった。側近がハッとして、

「陛下御自ら……?」

「そうだ。奴には私以外では勝てぬ。ジョー・ウルフ程ではないが、ブランドールJr.も相当な実力の持ち主のようだからな」

 ブランデンブルグはマントを翻して言った。


 ジョー達はフレッドの工場の研究室にいた。バルトロメーウスがマイクの工場で見つけた防弾服のようなものを机の上に置いた。フレッドはストラッグルを詰め込んだプラスチックのケースを見下ろして、

「マイクの遺品、一体どうすればあいつの残した謎が解けるのかな?」

「全然わからねえな。ジョー?」

 バルトロメーウスがジョーを見ると、ジョーは防弾服に手をやり、

「こいつが鍵だ。フレッド、こいつをストラッグルで撃ってみるから、赤外線スコープでエルルギーの流れを見てくれ」

「わかった」

 フレッドはすぐに部屋の隅にスコープをセットし、防弾服を見た。ジョーは2、3歩退がり、ストラッグルを構えた。バルトロメーウスはキョトンとして、

「一体何が?」

 ジョーが引き金を引くと、光束が飛び出し、防弾服に当たった。光束は防弾服を一瞬輝きの中に消した。

「わわっ!」

 スコープを覗いていたフレッドが叫んだ。ジョーはフレッドを見て、

「どうした?」

 その時輝きが失せて、光束が防弾服の反対側へ抜け、壁をぶち抜いて消えた。

「と、とにかく今の現象をディスクに記録したから、それを見てくれ」

 フレッドはディスクをスコープから取り出して再生機にセットした。モニターに防弾服が映り、ストラッグルの光束が当たった。

「こ、これは!?」

 ジョーは仰天した。光束は全て防弾服の周囲を這うようにして反対側に回り込み、あたかも突き抜けたかのように壁に向かったのだ。フレッドは再生機を停止して、

「何故こんな現象が起こるのか、儂には全くわからん。しかし言える事は、ストラッグルを造っている金属は、ストラッグルの光束を全く受けつけんという事だ。だからこそ、戦艦もぶち抜く弾薬を撃つ事が出来るんだな」

「それはわかっていた事だった。俺は、金属がこんな風に光束を弾くのを見た事がない。もしこれが全てのエネルギーに通じるとしたら?」

とジョーが言うと、バルトロメーウスがポンと手を打って、

「ビリオンス・ヒューマン能力の攻撃を完全に防ぐ事が出来る、という事か」

「そうだ」

とジョーは答えた。


 ブランドールJr.の旗艦は、大宮の射出口の一つから易々と中に侵入した。

「ブランデンブルグめ、どういうつもりだ? 自信があるという事か」

 ブランドールJr.は旗艦を停止させ、1人で外に出た。そこは格納庫になっており、戦艦級の艦が10隻は入るスペースがあった。そんな中に1人、ブランデンブルグが立っていた。

「貴様がブランデンブルグか?」

 ブランドールJr.が近づきながら尋ねると、ブランデンブルグはニヤリとして、

「そうだ」

「命をもらいに来たぞ」

「そううまくいくかな?」

 ブランドールJr.の顔が険しくなった。ブランデンブルグは相変わらずニヤニヤしていた。

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