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第57話 ジョー ブランデンブルグ帝国へ

 ジョーとルイは古びたスクラップ寸前の小型艦に乗り込み、第4番惑星を飛び立った。

「間に合うか?」

 ルイが尋ねると、ジョーは前を見据えたまま、

「わからねえ。ブランデンブルグが、一体何を考えているのか、見当がつかねえからな」

「……」

 その小型艦は何とか大気圏を離脱した。

「むっ?」

 すると早速、ブランデンブルグ軍の戦艦が現れた。ジョーはニヤリとして、

「来やがったな」

「出よう。この艦では狙い撃ちにされる」

「ああ」

 2人はそれぞれの小型艇に乗り込み、小型艦を出た。小型艦はたちまちレーザーとミサイルの餌食となり、爆発した。

「こっちだよ!」

 ジョーのストラッグルが吠え、ブランデンブルグ軍の戦艦を貫いた。戦艦は爆発した。

「奴はどこだ?」

 ジョーは周囲を見回し、目を瞑った。


 ブランデンブルグは司令室の椅子に座って寛いでいたが、ジョーのイメージが頭の中を突き抜けるのを感じ、ハッとした。

「奴め、早くも気づきおったか」

 ブランデンブルグが立ち上がると、兵2人がカタリーナを連行して来た。ブランデンブルグはカタリーナを見るとニヤッとして、

「ほォ、もう来たか、カタリーナ」

「……」

 カタリーナはキッとしてブランデンブルグを睨みつけた。ブランデンブルグはカタリーナに近づき、

「そう怖い顔をするな。何もお前を殺そうというのではない。もっと良い話だ」

「良い話?」

 カタリーナは鸚鵡返しに尋ねた。ブランデンブルグはカタリーナの髪に手を伸ばし、

「お前を私の妃にするという話だ」

「何ですって!?」

 カタリーナはピシャリとブランデンブルグの手をはねつけた。ブランデンブルグはカタリーナの顔を覗き込み、

「お前程美しく、しかも強い女は初めてだ。私の妃となるに相応しい」

「何で私が貴方の妃になんかならなくちゃいけないのよ!?」

 カタリーナは一歩退いて怒鳴った。ブランデンブルグはそれに応じて一歩踏み出し、

「それとも、ジョー・ウルフを愛しているから、私の寵愛は受けられんかな?」

「……」

 カタリーナは全身の血が顔に集まるのを感じた。恥ずかしかったのである。

「ジョー・ウルフはお前に何をしてくれた? 只危険な目に遭わせているだけではないのか?」

「……」

 カタリーナは無言のまま俯いた。ブランデンブルグはサッと身を翻し、

「いいか、ジョー・ウルフのためでもあるのだぞ。お前が私の妃になれば、ジョー・ウルフの命は助けてやる」

 カタリーナはビクッとしてブランデンブルグを見た。ブランデンブルグはチラッと振り向き、

「どうだ? 悪い話ではあるまい?」

「ジョーはあんたなんかに負けやしないわ!」

 カタリーナは反論したが、内心は不安であった。そんな彼女の心を見透かすかのように、

「本当にそう思っているのか?」

 ブランデンブルグはカタリーナに近づいて尋ねた。カタリーナはブランデンブルグを再び睨みつけて、

「も、もちろんよ! ジョーは宇宙最強の男よ」

「大した惚気だ。嫉妬心が掻き立てられる」

 ブランデンブルグはニヤリとして言った。カタリーナはブランデンブルグの笑みにゾッとした。


 ジョーとルイの小型艇は確実にブランデンブルグの旗艦に接近しつつあった。

「あれか?」

 ジョーは前方に見える巨大戦艦を見据えた。ルイが、

「奴の事だ。何か仕掛けて来るに違いない」

「わかってるさ」

 ジョーは答えた。


「ジョー・ウルフとルイ・ド・ジャーマンの小型艇が、こちらに向かっています」

 レーダー係が告げた。ブランデンブルグはカタリーナから離れて、

「よし。中におびき寄せろ。奴の目の前で、私とカタリーナの婚礼を執り行う」

「私はあんたとなんか結婚しないわ!」

 カタリーナが大声で言った。ブランデンブルグはカタリーナを睨み、

「ジョー・ウルフを助けたかったら、私の言う通りにするのだ、カタリーナ!」

 怒鳴り返した。カタリーナはその迫力に気圧されてしまった。

(本当にこの男なら、ジョーを……)

 カタリーナの額に汗が伝わった。彼女は目を伏せて、

「わかったわ。言う通りにする……」

「そうだ。女は素直が一番だ」

 ブランデンブルグはニヤリとした。


 ジョーとルイの小型艇は難なくブランデンブルグの旗艦に接触した。

「妙だな? 何故仕掛けて来ない?」

 ルイが呟くと、ジョーも、

「中に入れって事か。何か面白い余興でも用意しているらしいな」

 その時、旗艦の下部のハッチの一つが開いた。

「はっ!」

 2人はすぐさまそのハッチから中に入った。

「こ、ここは?」

 そこは巨大な格納庫だった。人影は見当たらず、周囲は静まり返っていた。2人はハッチが閉じ切ると小型艇を着地させ、外に出た。ジョーはストラッグルに手をかけ、

「何のつもりだ、ブランデンブルグ……」

「やっとお出迎えが来たらしいぞ」

 ルイが声をかけた。ジョーはギラッと目を輝かせて前を見た。

「待っていたぞ、ジョー・ウルフ、ルイ・ド・ジャーマン」

 2人の前に現れたのは、全身を鎧で覆い、鉄兜を被った、3mはあろうかという大男であった。彼は腰のベルトに斧と剣、そして銃を下げていた。

「何だ、てめえは?」

 ジョーが尋ねた。大男はニヤリとし、

「俺は新人類1号のアールコット。お前達を始末するためにここに来た」

「なるほどな」

 ジョーは素早くストラッグルを抜き、アールコットの眉間を撃った。しかし光束は弾け、アールコットは無傷であった。

「何!?」

 ジョーとルイは仰天した。アールコットは勝ち誇ったように笑い、

「俺は新人類だと言ったはずだ。ストラッグルなど効かぬ」

「バカな……」

 今度はルイがアールコットの右眼を撃った。しかし光束は弾けた。

「コーティング剤か?」

「ならば!」

 ジョーはアールコットの口を狙った。

「無駄だ!」

 アールコットが大口を開けた瞬間、ストラッグルの光束がアールコットの口の中に飛び込んだ。しかし光束はアールコットの口の中で消滅し、彼は無傷だった。さすがのジョーもギクッとし、一歩退いた。

「何て奴だ……」

 ルイも唖然としていた。アールコットはニヤリとし、

「わかったか。ストラッグルは通用せん!」

「そうかい。しかしな、ストラッグルが何故万能銃と呼ばれているのか、知りたいと思わねえか?」

 ジョーは言った。アールコットはジョーを睨みつけ、

「何ィッ!?」

「ストラッグルは人間が最初に作った弾丸から、最新式の弾薬まで、全部使えるんだよ」

 ジョーはそう言って金属の弾丸を装填した。そしてアールコットの心臓を狙って撃った。弾丸は鎧を貫き、アールコットの肋骨で止まった。

「ぐわっ!」

 胸から血飛沫を上げ、アールコットは片膝を着いた。ジョーはストラッグルから薬莢を弾き出し、

「コーティング剤じゃねえ。てめえは新人類。つまり、あらゆる光を反射させる特殊な皮膚の持ち主なのさ。だからどこを狙って撃っても、光束じゃ効き目がねえのさ」

「さすがだな、ジョー・ウルフ。しかし、そんな大昔の弾丸ではこの俺は殺せんぞ!」

 アールコットは斧を振り上げた。斧の刃の部分が輝き始め、ジーッという音が聞こえた。

「レーザーアックス。掠めただけで人を斬り裂く!」

 アールコットはジョーとルイに突進した。ジョーとルイはストラッグルをホルスターに戻し、アールコットの斧から逃れた。

「無駄だ!」

 レーザー光が強くなり、周囲の壁に焼け跡が走った。斧は次第にジョーとルイを格納庫の隅へと追い込んで行った。

「死ねっ!」

 レーザーアックスがジョー頭に向かった。ジョーは素早くストラッグルを抜き、銃身でレーザーアックスを受け止めた。

「ストラッグルは銀河系最強の合金で出来ている。レーザーなんか、効かねえぜ」

「どうかな?」

 アールコットはニッと笑った。途端にレーザー光がさらに強さを増し、ストラッグルの銃身が溶け始めた。ジョーはハッとして、

「まさか!?」

 身をかわし、レーザーアックスから逃れた。ルイはアールコットがジョーに気を取られているので、アールコットの後ろに回り込み、彼の背中を弱い光束で連射した。アールコットはそれに気づき、

「貴様ァッ!」

 振り向いた。ルイはアールコットの斧をかわしながら、

「ジョー、奴の背中を狙え! 表皮を熱で焼くんだ!」

「わかった!」

 ジョーもストラッグルを連射し、アールコットの背中の鎧を真っ赤になるまで熱した。

「うわっ!」

 アールコットはその熱さに我慢できず、レーザーアックスを投げ出した。レーザーアックスは床に突き刺さった。彼は慌てて鎧を脱ぎ捨てた。

「そこだ!」

 ジョーのストラッグルがアールコットの背中に突き刺さった。

「ぐっ!」

 アールコットの身体を光束が貫いた。しかし彼は倒れなかった。

「こ、これしきの事で、やられるものか!」

「こいつ、不死身か?」

 ジョーとルイはギョッとしてアールコットを見上げた。アールコットは剣を抜き、

「貴様ら、八つ裂きにしてやる!」

 振り回し始めた。

「むっ?」

 ジョーとルイは剣が次第に長くなっているのに気づいた。アールコットは高笑いし、

「逃げ切れるかな? この剣は特殊な素材で出来ていて、遠心力によって伸びて行くのだ!」

 剣の先が段々ジョー達に近づいて来た。ジョーは無言で剣の回転を見ていたが、

「そうかい。それならこっちもそれを利用させてもらうぜ」

「何だとォッ!?」

 アールコットはズシンとジョーの方へ一歩近づいた。


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