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第43話 フレンチ軍滅す

 帝国中枢部が存在する銀河系の中心部に、フレンチステーションがジャンピングアウトした。

「来おったな、フレンチめ」

 中枢を守護する近衛兵団の団長が呟いた。彼らは専用艦でフレンチ軍を待ち受けていたのだ。

「連中はバッフェン達を内部に抱え込んだままだ。言わば爆弾を持っているようなもの。我々はバッフェンらとほぼ同時に行動を開始する。ステーションの動きを封じれば、勝利は我々のものだ」

 団長は近衛兵に言った。


「攻撃開始!」

 ベスドムの命令で、ステーションの全砲門が火を噴き、ミサイルが雨のように帝国中枢の惑星に押し寄せた。各所で爆発が起こり、炎が広がった。続いて、帝国の反撃が開始された。ビームとミサイルが宙をよぎり、ステーションに向かった。しかしその多くは弾幕に阻まれてステーションにほとんど届かなかった、ベスドムは椅子から立ち上がり、

「軽身隊、出撃だ!」

 各ハッチから何百と言う数の軽身隊が出撃した。彼らは小型ブースターを背負い、レーザーガンを構えて宇宙を進んだ。

「軽身隊が出ました」

「我々も出るぞ」

 団長の命令で近衛兵も各艦から出撃した。両者は何十秒と経たずに接触し、混戦状態に入った。しかし近衛兵団は全く軽身隊に歯が立たず、たちまち総崩れとなってしまった。団長は苛立ち、

「何をしている!? ステーションへの攻撃をもっと強くしろ!」

 通信機に怒鳴った、帝国中枢からの援護により盛り返した近衛兵団は、ジリジリとステーションに接近した。団長は、

「もう一歩だ!」

 その時だった。ジョーとカタリーナを乗せたフレッドの艦がジャンピングアウトしたのは。ジョーはスクリーンに目をやり、

「真正面にステーションだ」

「攻撃するの?」

 カタリーナが尋ねると、ジョーは席を立ち、

「いや、小型艇で出る。艦を戦線から離しておいてくれ」

「私も行くわ」

「ダメだ」

 ジョーはキッパリと言うと、操縦室を出て行った。カタリーナはプーッと剥れて、

「いつもそうやって人を邪魔者扱いするんだから!」


 一方ドミニークス三世は、フレンチと帝国が交戦状態にある事を病床で聞いていた。

「いかがいたしましょう?」

 側近が尋ねると、ドミニークス三世は、

「帝国と新共和国は同盟関係にある。フレンチに宣戦布告だ。それにジョー・ウルフも現れたのであろう?」

「はい、そうです」

「ならばなおさらだ。急げ。機を逃すな」

「はっ!」

 ドミニークス三世はベッドに身を沈めて目を閉じた。

( 老いた……。儂は心底ジョー・ウルフを恐れている……)

 側近は敬礼して出て行ったが、ドミニークス三世は目を閉じたままであった。

「儂の命、彼奴が死ぬまで保つのか?」

 ドミニークス三世は呟いた。


 ステーションの装甲に巨大な穴が開けられた。ベスドムはスクリーンを睨み、

「何事だ!?」

「後方に小型艇を一艘確認! ジョー・ウルフです!」

「何だと!?」

 ベスドムは驚愕していた。

( 何故奴がここに? )

 彼にはジョー出現の理由が全くわからなかった。


「親衛隊は全滅したのか?」

 ジョーはストラッグルの引き金に指を掛けながら呟いた。

「いや、あのヤロウがそんな簡単にくたばる訳がねえ。中か!?」

 ストラッグルが再び吠え、ステーションに穴を開けた。


 ベスドムは憤激し、

「軽身隊をジョー・ウルフの方に回せ! 帝国の方はステーションのみで食い止める」

と叫んだ。


「むっ?」

 ジョーは前方から軽身隊が来るのに気づいた。彼は軽身隊の攻撃を無視し、ステーションに接近した。

「後方攻撃開始! 軽身隊を巻き込んでも構わん!」

 ベストムの命令で、ビームと砲火がジョーの小型艇を襲った。小型艇はそれを巧みにかわした。軽身隊はまさかと思っていたためにその大半がやられてしまい、何人かが何とかジョーを追うに留まった。ジョーは後部ミサイルを発射し、追撃する軽身隊を全滅させた。そして前方を見据えて、

「バッフェン、今日こそでめえの息の根、止めてやるぜ!」

と叫んだ。


「ジョー・ウルフがステーション内に侵入しました!」

「何!?」

 ベスドムはハッとして、

「奴に親衛隊を閉じ込めている部屋を破壊されたら終わりだ。毒ガスを送り込んで、親衛隊を殺してしまえ」

「はっ!」

 ベストムはニヤリとしながらも冷や汗をかいていた。


「何だ?」

 バッフェンは天井の換気口から聞こえて来るシューッという音に耳をそばだてた。そのうちにガスの臭気が鼻を突いた。

「毒ガスか?」

 一同は換気口から噴き出すガスを見た。バッフェンはニヤリとして、

「大昔地球でこういう事をして戦争に負けた男がいるのをベスドムは知らんようだな」

 バッと飛び上がり、換気口の網を掴んでねじ切り、その奥に合ったガスを噴出されているパイプを捻ってガスを止めてしまった。そしてスッと床に戻り、

「そろそろ出るとするか」

「しかし、どうやって?」

「こうやってだ!」

 バッフェンの右拳がグワンと壁にめり込んだ。隊員達はビックリしてバッフェンを見た。

「我々はもう筋力増強剤の効果が切れ始めているのに……」

「お前らは私が何故隊長になったのか、わかっておらんようだな」

 バッフェンは右拳をギシギシと音を立ててめり込ませ、壁に穴を開けた。彼はスッと右拳を穴から抜き、

「私は本物のビリオンスヒューマンだ。筋力増強剤の効果も、お前らの比ではない」

 穴に両手を掛け、ズバッと穴を広げ、壁を引き裂いてしまった。隊員達は唖然としてそれを見ていた。バッフェンは穴から外に出て、

「行くぞ」

 隊員達を見た。


 ベスドムはジョーが次々にステーションの内部を破壊している事と、バッフェン達が脱出した事を知り、気も狂わんばかりだった。

「ジョー・ウルフめ! 奴さえ、奴さえ現れなければ!」

 ベスドムは大声を上げて頭を掻きむしった。


「ケリはつくな。我々は引き上げだ」

 近衛兵団の団長は呟き、部下達に通信すると、撤退した。


 フレンチステーションの各部で爆発が起こり、崩壊も時間の問題となっていた。

「どこだ、バッフェン!」

 ジョーは通路を宇宙服姿でストラッグルを構えて歩いていた。あちこちで爆発音がし、煙が出ていた。


「ジョー、大丈夫なの?」

 カタリーナはスクリーンに映るステーションを心配そうに見つめていた。

( 彼は親衛隊への復讐のために今日まで生きて来たと言ってもいいわ。もしそれが果たせたら、彼は一体…… )

 カタリーナの胸に不安がよぎった。その時、レーダーが別の飛行物体を捕捉した。カタリーナはハッとしてスクリーンを切り替えた。そこにはドミニークス軍の艦隊が映っていた。

「ドミニークス軍が?」

 カタリーナは仰天した。


「ステーションに向け、砲撃開始!」

 ドミニークス軍の司令官が命令した。ステーションに無数のビームと砲火が突き刺さり、爆発が拡大した。

「おおっ!」

 バッフェン達はその振動でふらついた。

「どうしたというのだ? 近衛兵団は撤退したはずだ」

 バッフェンが言うと、隊員の1人が、

「ドミニークス軍が現れたようです。ステーションに砲撃しています」

「何!?」

( 狸め、いらぬお節介を……)

 バッフェンは舌打ちして、

「よし、小型艇に戻るぞ。このステーションはまもなく爆発する」

「はっ!」

 バッフェン達が通路を走って行くと、前方にジョーが現れた。バッフェンはハッとして立ち止まった。ジョーはニヤリとして、

「久しぶりだな、バッフェン。まだてめえが隊長なのか? 帝国も人材不足のようだな」

「ほざけ!」

 ジョーは間髪入れずにストラッグルを撃った。しかしバッフェンはそれを軽くかわし、後ろにいた隊員の頭が吹き飛ばされた。

「今貴様とやり合っている暇はない!」

 バッフェンの一撃がジョーの腹に決まり、ジョーは勢い余って天井に激突した。

「ぐっ……」

 バッフェンはニヤリとし、隊員達と共にそのまま駆け去った。ジョーは腹を押さえながら床に降り立ち、

「くっ……。バッフェンめ……」

 振り向いたが、すでにそこには誰もいなかった。


 ステーションの爆発が続く中、バッフェン達の小型艇が脱出した。バッフェンはステーションを見やり、

「ジョー・ウルフ、貴様とはいつか決着をつける事があろう」

と呟いた。


「ええい、こうなったら、死んでも帝国を倒してやる!」

 ベストムは操縦士を突き飛ばすと、ステーションを帝国中枢部の惑星に向かって突撃させた。


「むっ?」

 ドミニークス軍の司令官、バッフェン、近衛兵団の団長がこれに気づいた。

「何をする気だ?」


 ジョーは小型艇に辿り着き、脱出した。彼はステーションが帝国の中枢に向かっている事を知った。

「もう少しで道連れにされるところだったのか……」

 ジョーは小型艇を大きく旋回させ、フレッドの艦を目指した。


「ぬおおおおっ!」

 ベストムは狂っていた。ステーションは帝国の最終防衛ラインの攻撃を受け、ほとんど崩壊寸前で前進していたが、やがて幾筋もの光を放ち、大爆発を起こした。


「フレンチが、滅んだか……」

 ドミニークス軍の司令官が爆雲を見て言った。


 こうして銀河系には、帝国とドミニークス軍の2つの勢力が残った。

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