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第42話 フレンチ軍 VS 帝国軍最終戦

 ルイ、ジョー、カタリーナ、フレッド、バルトロメーウスの5人は、町外れの墓地にいた。

 5人の前には新しく建てられた墓標があった。

 テリーザ・クサヴァーの墓である。カタリーナが跪いて墓標に花輪を掛けて目を閉じた。

「テリーザさん、貴方はどうして自ら命を絶ったの?」

「……」

 ルイは無言のまま墓標を見つめていた。

( 何故だ? テリーザ、お前は何故死んだ? )

「私は、ジョー・ウルフを助けたの……。貴方のために……」

 ルイの耳にテリーザの声が聞こえた。ルイはハッとして目を見開いた。カタリーナは立ち上がってルイを見た。

「これからどうするつもり? このままテリーザさんの死を無駄にするの?」

「……」

 ルイはしばらく黙っていた。カタリーナがムッとして何か言おうとした時、彼は口を開いた。

「いや。テリーザの死は無駄にはしない。私は今まで愛というものは抽象的なもので、決して目に見えるものではないと思っていた。しかし、テリーザはそれをやってのけた。愛というものを私に見せてくれたのだ。彼女にはすまない事をした」

「ルイ……」

 カタリーナはニッコリした。ルイはジョーを見て、

「軽身隊にはお互い借りがある。いつかまとめて返さんとな」

「そうだな」

 2人はフッと笑って互いを見た。ルイはクルリと踵を返すと、墓地から出て行った。ジョー達はそれを黙って見送った。


 アウス・バッフェンは謎の人物がいる部屋にいた。

「フレンチの後ろにいた者の正体がわかったのか?」

「はい。メストレスでした。奴はフレンチに殺され、エフスタビード軍も軽身隊に全滅させられたようです」

 バッフェンは跪いて言った。すると謎の人物は、

「わかった。ならばフレンチ軍を討て。お前が指揮を執り、必ずフレンチを滅ぼせ」

「はっ!」

 バッフェンは深々と頭を下げて答えた。


「妙だ」

 工場への帰り道でフレッドが言った。するとバルトロメーウスが、

「何が妙なんだ?」

「軽身隊だよ。何故連中はジョーを襲ったんだ?」

「そりゃ、連中にとっちゃジョーが脅威だからさ」

「しかし今フレンチには帝国の方が脅威のはずだ。あれだけ仕掛けて、帝国が黙っている訳がねえ」

「そうかァ」

 バルトロメーウスは尋ねるようにジョーを見た。

「まァ、考えないでおこうか。疲れたよ」

 ジョーは答えた。カタリーナはその言葉を聞いてホッとした。

( またどこかへ行ってしまうんじゃないかと思ったわ )


 フレンチステーションは修理をほぼ終えていた。

「ジョー・ウルフの事はもうどうでもいい。狸の軍も、見かけほど戦力がない事もわかった。いよいよ帝国を討つ時が来たのだ。メストレスの考えた作戦でな」

 ベスドムは言って、ニヤリとした。その時である。観測官の1人が叫んだ。

「ステーション前方にジャンピングアウト反応! もの凄い数です!」

「何ィ!?」

 ベスドムは仰天して正面のスクリーンを睨んだ。そこには次々に親衛隊の小型艇がジャンピングアウトしているのが映っていた。

「て、帝国?」

 ベスドムは一瞬身じろいだが、すぐに気を取り直し、

「願ってもないチャンスだ。ステーション内に誘い込め!」

 同時にステーションからの攻撃が始まり、親衛隊の小型艇が次々に撃破された。バッフェンはステーション下部の攻撃が手薄なのに気づき、

「私に続け!」

 先導してステーションの下部に回り込んだ。しかしそれがベスドムの作戦だったのである。バッフェンはバッフェンで、ステーション内部に侵入し、早めに戦闘を切り上げなければならないため、罠かチャンスか判断する余裕はなかった。

「あそこから入れるか」

 バッフェンはステーションの射出口を発見し、小型艇を接近させた。しかし攻撃はほとんどなく、バッフェン以下20艘あまりの小型艇はすんなりと中に侵入できた。

「妙だな。何かある……」

 バッフェンは呟き、周囲を見てレーダーを見た。外では他の親衛隊がステーションとの戦闘を続けていた。

 バッフェン達の小型艇は奥まで進み、着地して外に出た。するとそこへ軽身隊が現れた。

「奴らにステルスは通用しない。肉弾戦だ」

 バッフェンは言い、ヘルメットを取ると軽身隊に突進した。

 両隊入り乱れての戦いが始まった。床、天井、壁を利用しての軽身隊の作戦に、さすがの親衛隊も苦戦を強いられた。

「場慣れしている連中と戦うのはやはり不利か」

 バッフェンは素早く動く軽身隊を2人捕まえて、頭をぶつけた。頭蓋骨がグシャとひしゃげて、2人の軽身隊は床に落ちた。親衛隊はそれを契機に反撃に移った。不利と悟ると、軽身隊は撤退し始めた。バッフェンは最後尾にいた軽身隊を1人捕まえ、

「ベスドムはどこだ?」

「知らん!」

「そうか……」

 バッフェンの鋼鉄のような右腕がグイッと軽身隊の首を締め上げた。軽身隊員はもがき苦しんだ。

「ぐええっ!」

「言わんとこのまま絞め殺すぞ」

 バッフェンの右腕がさらに軽身隊員の首に食い込んだ。軽身隊員は息も絶え絶えで、

「わ、わかった……。教えるから助けてくれ……」

 バッフェンはニヤリとした。


「フレンチと帝国が交戦中?」

 フレッドは修理した地上艇を受け取りに来た男から話を聞いて仰天した。男は頷いて、

「ああ。たった今、港に入った商船の連中が見かけたらしい。帝国は親衛隊が出て来たようだ」

「親衛隊!」

 フレッドはハッとして奥へのドアを見た。そこにはジョーとバルトロメーウスが立っていた。ジョーは男に近づき、

「その話、確かなのか?」

 ジョーの視線があまりにも鋭いので、男はギクッとして、

「ええ、確かですよ。商船には海賊船探知用の精密な監視カメラがありますからね」

「そうか」

 ジョーはストラッグルに手をかけ、そのままスッと工場を出て行ってしまった。3人は唖然としてそれを見ていたが、カタリーナが奥から現れて、

「ジョー、どこへ行くの?」

 ジョーの前に立ち塞がった。しかしジョーはカタリーナを避けてそのまま港の方に向かった。カタリーナはすぐにそれを追いかけた。

「親衛隊……。今度こそ決着をつけてやるぜ」

 ジョーは呟いた。


 バッフェンは血まみれの軽身隊を押し立てながら、通路を進んでいた。

「この先だ。この先の部屋にベスドム様はいらっしゃる」

 軽身隊は震えながら前にある扉を指差した。バッフェンはフッと笑って、

「そうか。案内ご苦労!」

 軽身隊を壁に叩きつけた。軽身隊はグシャッと音を立ててひしゃげてしまった。

「行くぞ」

「はっ!」

 バッフェンの後を20人の親衛隊員が続いた。バッフェンは鋼鉄の巨大な扉の前に立ち、それを砕こうとしたが、その前に扉が開いた。バッフェンは不信に思いながらも、中に入った。全員が入り切ると、扉はガシンと閉じた。

「罠か?」

 バッフェンは周りを見た。そこは窓一つなく、無論ベスドムの姿もなかった。壁の一部がスクリーンに変わり、ベスドムが映った。

「ようこそ、親衛隊の諸君。ここが君達の墓場だ」

「何!?」

 親衛隊員は周囲を見た。しかし武器らしいものは何もない。ベストムはニヤリとして、

「お前らの最大の弱点は時間だ。後もう1日で、筋力増強剤の効果がなくなる。その時までお前達はそこにいるがいい!」

 高笑いをして消えた。親衛隊員達は狼狽えて壁を叩いたり蹴ったりした。しかし全く何もならなかった。バッフェンが、

「やめい! 見苦しいぞ。死中に活を求めるのが我々親衛隊だ。狼狽えるな!」

「隊長……」

 隊員の1人が声をかけた。バッフェンはニヤリとし、

「恐らくこの作戦はメストレスの入れ知恵。しかし、メストレスさえ知らぬ事が親衛隊にはあるのだ」

と呟いた。


 ジョーは港で自分の小型艇に乗り込もうとしていた。するとカタリーナが、

「待ってよ、ジョー」

 小型艇の前に立った。ジョーはカタリーナを見て、

「2人乗りはできねえよ」

「フレッドの艦なら、2人じゃ広過ぎるわ」

 カタリーナはウィンクして言った。ジョーは苦笑いして、

「わかったよ。来るなと言っても無理のようだな」

 カタリーナはニッコリした。


 ベスドムは司令室前方の窓の外を見て、サッと右手を突き出すと、

「帝国に向けて、ジャンピング航法限界!」

 ステーションの周囲で戦っていた親衛隊は、ジャンピング航法の巻き起こす空間の歪みに引き込まれて四散してしまった。ステーションはやがてその空間から姿を消した。そこに残ったのは、小型艇の残骸と、親衛隊員の剥き出しになった死体だけだった。


 それからしばらくして、残骸が漂う宙域にフレッドの艦がジャンピングアウトした。カタリーナが、

「ステーションがいないわ」

 ジョーも外とレーダーを見て、

「ステーションごと帝国に向かったのか。追うぞ」

「了解」

 フレッドの艦は左90度回頭し、ジャンピング航法に入った。

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