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拝啓、姉上様~異世界でも、元気です~  作者: 藤原 高彬
第二章:依頼は選んで請けましょう
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第02話 エリスという名の娘

第01節 エリスに導かれて〔2/4〕

◇◆◇ 雄二 ◆◇◆


「ショウくん! エリスちゃんをお布団に連れ込んで、一体何をしていたの?」

「こんな小さな娘に欲情するのか。飯塚、終わってるな」

「畜生、この世界での事案はどこに通報すればいいんだ?」

「美奈、松村、柏木。頼むからもう少し冷静にだな」

「うぅ~、ぱぱ、うるしゃい」


 なんか、凄いことになっています。

 けど、問題にすべき点が間違っていますね。


「皆さん、落ち着いてください。

 もっとほかに考えることがあります」

「ショウくんのロリコン疑惑以上に大事なことって何?」

「だから俺はロリコンじゃねぇ!」


 ……駄目(ダメ)だ、こいつら。


「いいから落ち着いてください!

 別に、飯塚くんの()し上げをするなとは言いません。煮るなり焼くなり、後でゆっくりしていいんです。

 けど、今その前に緊急で話し合わなければならない問題が発生しているんです」

「何だ? エリスちゃんが飯塚に襲われかけているって最中に、別の問題が起こっているっていうの?」

「襲ってねぇ!」

「襲いつつあった、と言うべきだな」

「だから違うっての……」


「その、エリスちゃん自身が問題なんです」


 (らち)が明かないので、力技で話を進めましょう。


「エリスちゃんが可愛過ぎるのが問題ってこと? ショウくんみたいな野獣(けだもの)(そば)に置いておいたら、大変なことになっちゃうものね」

「だから何もしてないって、信じてくれよ美奈」


 取り敢えず無視して。


「エリスちゃんは、いつ、どうやって〔亜空間倉庫〕(ここ)に入って来たんですか?」


 シー…ン。


 一瞬で、騒ぎが収まりました。そう、それが問題なんです。


「ボクたちが〔倉庫〕を開いた時、間違ってエリスちゃんを連れてきてしまった。

 そういう可能性もあったかもしれません。けど、ミーティングをしているとき、この娘はここにはいませんでした。そして、仮眠を取ることにした時も。

 なら、この娘はいつ、どうやってここに来たんでしょう?」

「……」


 誰も、答えられません。当然でしょう。


「この〔倉庫〕がある〝場所〟がどこなのか。それはボクらにもわかりません。

 けれど、この娘は〝ここ〟に来れた。それは、この娘が〔空間転移〕に類する力を持っているからなのでしょうか。

 そして、仮にそうだとしても。外界では、ボクらが〔倉庫〕に入ってから、まだ一瞬たりとも時間が経過していないはずです。では、この娘は〝いつ〟ここに来たのでしょう?」


 それが謎。百歩譲って、エリスちゃんに空間転移の力があるのなら、〔倉庫〕に入ってくることは可能かもしれません。けど、ボクたちが〔倉庫〕から出る時、入った時と同じ時間に出ることを考えると、今この瞬間、外の世界の時間は流れていないはずなんです。

 言い換えると、エリスちゃんはボクたちがいなくなったことを認識出来ないはずなんです。だって、その次の瞬間には、エリスちゃんの前にはボクらがいるはずだったんですから。


 そう考えると。あまりにも謎が多いのです、このエリスという少女は。


「エリスちゃんは、どこかに閉じ込められていた、と言っていました。

 そして、近くで(にぎ)やかな声が聴こえたから、そちらに行ったら、ボクらがいたと言っていました。


 空間転移の力を持つこの娘を、どうやったら閉じ込めることが出来ますか?

 そして、この娘はどこで、ボクらの声を聴いたのですか?」


 すると、何かに気付いたのか、飯塚くんが口を開きました。


「エリスが閉じ込められていた場所。それは、この〔倉庫〕に似た場所。つまり、誰かの〔収納魔法〕で作られた空間、という可能性はどうだろう?

 〝ここ〟が何処かは俺にもわからない。けど、もし〔収納魔法〕で作られる〝空間〟は、魔法的な意味で近い場所にあるのなら。そして、〔収納魔法〕では生き物を収納することは出来ないとされている。けど、俺たちは今ここにいる。つまり、エリスにとって初めてこの空間で、生き物の声を聴いたんじゃないだろうか?」


「だとすると、エリスちゃんの存在は空間と時間の両方を超越している、という事になるぞ」


 松村さんが、飯塚くんの仮説をもとにエリスちゃんの正体について言及します。


「う~ん、それははっきり言って、どうでもいいことじゃないかな?」

「美奈、それはどういうことだ?」

「それこそ武田くんが言っていた、『金星人と火星人』のお話と同じだよ?

 この世界の人たちって、DNA的に美奈たちと同じ人間(ホモ=サピエンス)なの?

 って言っても、そんなことはどうでもいいことだよね?

 なら、エリスちゃんが人間か魔物か神様か、なんてことも、どうでもいいことじゃない?

 エリスちゃんは可愛い。可愛いは正義だよ!」


「そうだな。俺たちは、エリスを疑うつもりはない。エリスを敵だなんて思いたくない。エリスを守ってあげたい。

 もしかしたら将来裏切られることになるかもしれないけれど、裏切られるかもしれないから冷たく当たる、なんてことはしたくない。裏切らないと確信が持てるまで警戒する、なんてことは考えたくもない。

 俺たちはもう、エリスを受け入れている。だから、エリスを可愛く思うんだ」


 ……。


「と、容疑者は供述しております」

「もはや自供した、と解釈しても問題は無いかと」

「髙月裁判長、判決は?」

有罪(ギルティ)!」

「だからなんでだ!」


 まぁともかく。


「それじゃぁエリスちゃんを着替えさせるから、男子は一旦ここから離れて?」

「柏木。飯塚が(のぞ)かないように押さえておいてくれ」

「わかった」

「覗かね~って言ってんだろうが」


「エ、エリスちゃん。それは頭に(かぶ)るモノじゃないからね? 腰に()くモノだからね。はい、こっちに足を通して」

「それにしても、綺麗な肌だね。赤ちゃんみたい」

「この歳ならほとんど赤ちゃんと同じだよ」


 女子も、四苦八苦しながらエリスちゃんに服を着せ、改めてミーティングをすることにしました。


◇◆◇ ◆◇◆


 そして、ミーティング。

 初参加のエリスちゃんは、当たり前のように飯塚くんの(ひざ)の上に座っています。


「で、議題は、あたしたちの新しい家族であるエリスを、そこの変態(ロリコン)から如何(いか)に守るか、だったな?」

「違うだろう! ってか、いつまでそのネタを引っ張るつもりだ?」

「取り敢えず美奈の機嫌が直るまでだが何か?」

「……勘弁してください、美奈さん。俺は美奈一筋です。美奈以外の女に心を動かしたりしません。一生美奈だけを見つめています。だから許してください」

「駄目。それじゃもし美奈が女の子を産んだら、その子がパパに嫌われることになっちゃうもん。そんなの絶対駄目」

「じゃぁ美奈と俺たちの子供だけ愛し続けます」

「う~ん、でもそれじゃぁ将来美奈は自分の娘に嫉妬(しっと)しちゃうかも」

「じゃぁどうすれば良いんだ?」

「男の子と女の子、二人産めばいいよね? そうしたら、ショウくんが女の子を可愛がって、美奈が男の子を可愛がるの」

「……駄目。そうしたら俺は息子に決闘を申し込むことになるから」

「ショウくん、嫉妬深いパパは嫌われるよ?」

「美奈。そのダブルスタンダードはどうにかならないのか?」


「いい加減にしろ! いつまで夫婦(めおと)漫才(まんざい)を続けるつもりだ!」

「ネタ振りしたのは松村だろうが!」


 どうでもいいですが、本題に入りましょうよ。

(2,964文字:2017/12/25初稿 2018/04/30投稿予約 2018/06/30 03:00掲載予定)

【注:「可愛いは正義」は、〔ばらスィー著『苺ましまろ』KADOKAWA電撃コミックス〕のキャッチフレーズです。同作品のアニメ化を機にネット上で爆発的に広まりました】

・ エリスは、「暗いところにいた」と言いましたが、「暗いところに『閉じ込められて』いた」とは言っていません。武田雄二くんたちが勝手にそう解釈しているだけです。

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