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拝啓、姉上様~異世界でも、元気です~  作者: 藤原 高彬
第五章:婚約破棄は、よく考えてから行いましょう
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第47話 邪神様の呼び声?

第09節 華燭の典〔4/4〕

◇◆◇ 雄二 ◆◇◆


 リングダッド王国王都チャークラ。

 リーサの引き渡しを終え、ボクらの依頼(クエスト)はこれで完遂。リングダッド王宮にて、スイザリア王太子殿下からのクエストの完了通知と報酬を受領する事が出来ました。

 つまり、借りた近衛騎士団の制服や儀仗(ぎじょう)を返さず真直ぐモビレアに帰ってもいい、ってことらしいですけど。(いいえ)、返さないと後で面倒なことになりそうですから返しに行きますけど。


 でもまぁ何日かは遊んで……じゃなく、リングダッドの隣国であるドレイク王国の情報収集をしてから帰途(きと)()いても、問題はないでしょう。

 という訳で、町の市場(いちば)素見(ひやか)しに行こうと足を踏み出したところ。


「おぅい、キミたち!」


 聞き覚えのある声が。そう、聖都で隣に住んでいた、密偵家族の旦那さんの声でした。


「こんにちは。お久しぶりです、と言うほどに時間は経っていませんよね?」


 松村さんの、如才無い挨拶。それに続いて髙月さんが、冗談交じりで続けました。


「奥さんはご一緒じゃないんですか? それとも、また逃げられたんですか?」

「おいおい、人聞きの悪いことを言わないでくれよ。最初の女房は任務中の殉職だし、彼女にはこれからちゃんと求婚(プロポーズ)しに行くことになっているんだからな」

「プロポーズしに行くって――」

「次の任地は、スイザリア王国ウィルマーの町だ。これまでのスイザリアとは全く違う形で開発されている、あの町をじっくり視察して来いって命じられた。

 だが、俺の正体はキミらと彼女を通じてスイザリア側に伝わっている。だから、密偵というよりは非公式な外交官、という立場だな。

 彼女にプロポーズすることも、陛下に申し出て許可を(いただ)いている。もっとも、スイザリア側で彼女が俺と所帯を持つことを認めてもらえるかは不明だし、仮に認めてもらえても、俺たちの国籍がどうなるかは今後話し合う必要があるだろうけれどな」


 それは、凄い。

 常識では考えられない、所属国の違う密偵同士の結婚。それも、駆け落ちのようなやり方で逃げるのではなく、正攻法で両国に認めさせようとするなんて。

 リーサも、こういう考えに至っていたら、もしかしたら違う未来があったかもしれないんですよね。


「わかりました。ではウィルマーに来たら、また声をかけてください。ボクらで出来ることなら協力します」

「それは、助かるな。ならその時は、遠慮なく力を貸してもらおう。


 それで、キミらはこれからどうするんだ?」

「取り敢えず観光がてら、町を見ようと思っていまして。

 あ、でも買い物をするなら両替をしなきゃいけないんですね」

(いいや)、スイザリア金貨はそのまま通じるぞ。手数料はかかるけどね。

 だけど、一番信用されている通貨は、実はリングダッド通貨でさえなく、ドレイク王国の『イェン紙幣』だけどな」

(YEN)紙幣?」


 『円』って、隠す気無いじゃないですか!


「ああ、これだ」

「だけど、紙に印刷……じゃなく、インクで()してある? んですか。

 こんなの、いくらでも偽造(ぎぞう)出来そうですね」


 と言うと、まるでそう言われるのを待っていたように。


「そう思うだろう? ところが、この紙幣は魔法がかかっていてな。

 本物は呪文に呼応して、紋章が(あらわ)れるんだ。

 見てろ。


 『いあ! いあ! しょごす ふたぐん』」


 ……………………


「へぇ、すげえな。その呪文、何か意味があるのか?」

「何でも、ドレイク王国では『聖なるかな、聖なるかな。我らが女神よ、永遠なれ』という意味の、善神(アザリア)(たた)える言葉らしい」


 ……………………


「だけど、どこの言葉だろう? 武田、何か知っているか?

 ……って、武田? おい、武田?」


 …………っ、はっ!


 柏木くんに肩を揺さぶられ、ようやく意識が再起動しました。

 いや、不意打ち過ぎるでしょう?

 眩暈(めまい)がするので目を(つむ)って顔を上に向け、(まぶた)を開けて青空を見て。ようやく気持ちを落ち着ける事が出来ました。

 そして仲間たちを見ると。

 飯塚くんと髙月さんが、ボクと似たような状況だったようです。うん、やっぱり二人は知っているんだ。


 でも、ボクらは今、「魔王」に挑もうとしています。けど、「魔王」の後ろには「大魔王」が、更にその後ろには「魔神」或いは「邪神」がいるのがお約束。

 そして、ショゴスを(たた)えるこの呪文。そうなると、(ドレイク)王は、ショゴスを(ほう)じる邪神教団の一員? そしてショゴスは、古の(Elder_)もの(Thing)の奉仕種族。だとしたら…………


 …………………………………………


「おい、武田! 考えるな。アイデアロールに成功しちゃっているぞ!」


 ………………っ、はっ!


 いけないいけない、SAN値が消し飛ぶところでした。

 飯塚くんの助言を受けて、取り敢えず忘れることにします。うん、怖い考えになるくらいなら、一時的健忘の方がマシです。うん、忘れました。

 ちなみに、何が嬉しいのかエリスは、紙幣に向かって「いあ、いあ」って言い続けてます。お願いだからエリス、自重して。っていうか、エリスは完全に、意味を理解していますよね。となると、エリスの正体は………………


「だから武田! 考えるなって!!」


 …………


「全く、どうしたっていうんだよ。

 なあ飯塚。武田がどうしてこうなったのか知っているのか?」

「済まない、柏木。何も知らないお前や松村さんが、(うらや)ましいよ」

「どういう意味だ?」

「ごめん、言いたくない。そのうち機会があれば、話すよ。出来れば日本に戻ってからにしたいけど…………」

「何だか知らないけど、了解した。色々知っているってことは、結構大変なんだな」

「わかってくれて嬉しいよ」


 取り敢えず、意識を切り替えて。

 今後、(ドレイク)王国と関わる為には、この問題に真正面から向き合わなければいけないのかもしれませんけれど、…………しれませんけれど、それを考えたら、たら、たら、ららららららら、っ。うん、今考えることではありませんね。


◇◆◇ ◆◇◆


 さて、リングダッドでもスイザリア金貨が使えるという話ですので、これでお買い物を。

 ……って思ったら、密偵旦那氏が案内してくれるって。聖都での礼だそうだけど、でもお礼されるようなことは、していませんよね?


「というか、それ以前に、旦那さんのことを何て呼べばいいんですか? まだ名前を聞いていませんけれど」

「ああ、いつも違う名前を使うからな。職業柄本名を名乗る訳にもいかないし。

 ウィルマーに着いたら、改めて名乗るから、今は単に『おっちゃん』でいいよ」


 という訳で、おっちゃんをガイドにショッピング。

 まぁ雑貨類で買いたいものはあまりないので、見て回るだけ。と思ったら。


「あれ、ガラスですか?」

「あぁ。ドレイク王国ではガラス製品も多く作られていてな。スイザリアやリングダッドで作ったら一脚で金貨何枚の値が付くだろうか、ってものも、銀貨で買える値段で売っているんだ。

 だけど、持って帰るのは大変だぞ? 特に良いモノ程、簡単に割れるから」


 でも、〔倉庫〕を使えば問題はありません。自分たち用に六脚一セットのグラスを二セットと、『青い鈴』へのお土産用に20セット購入しました。喜んで、もらえるかな?

(2,965文字:第五章完:2018/08/26初稿 2019/05/01投稿予約 2019/06/23 03:00掲載予定)

【注:「ショゴス」「SAN値」などの言葉は、前作『転生者は魔法学者!?』(n7789da)の、第三章第36話(133部分)の本文並びに後書を参照してください。また「アイデアロール」はTRPG『クトゥルフの呼び声』の用語のひとつで、通称「怖い考えになってしまった」ロールと言います。頭が良いと、いらんことに気付いてしまうんです】

・ 紙幣の真贋鑑定の呪文は、「文言」とその「意味」に乖離が大き過ぎて〔翻訳魔法〕の適用対象外となってしまっていたようです。というか、一般に知られている「意味」でさえ創作ですし。そうでなくとも某邪神様が何らかの介入をしていた可能性も否定出来ませんし。

 × 「邪神様の呼び声?」

 ○ 「邪神様を呼ぶ声。」

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