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拝啓、姉上様~異世界でも、元気です~  作者: 藤原 高彬
第四章:断罪は、その背景を調べてから行いましょう
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第08話 尋問・2

第02節 紋章〔2/9〕

◇◆◇ 翔 ◆◇◆


 最初に呼び出されたのは、柏木だった。

 そして数時間の後、ボロボロになって戻ってきた。勿論(もちろん)すぐに〔倉庫〕で〔再生魔法〕を使って治療したが。

 聞かれた内容は、衛兵と同じで「俺たちがどこから来たのか」。「南から」という言葉は受け入れられなかったようだ。

 モビレア公爵とギルマスの連名の特命状を出せばよかった、と思ったが、後の祭り。もっとも、ギルマスクラス以上(つまり軍なら将軍クラス)でなければ渡す訳にはいかないと考えると、下っ端衛兵(それもこっちの身分を疑ってかかっている相手)にホイホイ提出する訳にもいかなかっただろうけれど。


 ただ、一つ俺たちにとって安心出来る点は、取調室に〝メイド(エプロン)(ドレス)を着込んだ女性〟が同席していたということ。俺たちの昔の常識では、その女性は単なる使用人となるけれど、今となってはその意味が違う。最悪でも、ソニアの身の安全だけはその女性が保証してくれるだろう。

 そしてその尋問で、取調官が引き出したかった答えは、どうやら「魔物(ゴブリン)に魂を売って安全を買った裏切り者」としての立場、らしい。つまり、ローズヴェルト王国側も、カラン(ゴブリン)王国攻略の為には正面からの力押しではなく、まず兵站(へいたん)を破壊すべしと判断し、その輸送の任を(にな)う裏切り者の人間の特定を、と考えているようだ。もしかしたら山妖精(ドワーフ)は容疑者リストの筆頭近くに置かれているのかもしれない。


 また、今更だが俺たちの立場もここでは微妙だ。

 おそらく「対カラン(ゴブリン)王国でローズヴェルトとスイザリアが同盟している」という事は、現場の兵士・衛士たちには伝わっていないのだろう。とすると、俺たちは(れっき)とした敵国人。しかも、現状の敵であるカラン(ゴブリン)王国方面からやって来ているのだ。疑わない理由がない。

 その一方で、ドレイク王国の騎士(ソニア)が同道している。ドレイク王国もまた、スイザリアの敵国と考えると、場合によっては、俺たちは(ドレイク)王国の二重(ダブル)密偵(スパイ)? と認識されるかもしれないのだ。


◇◆◇ ◆◇◆


 そして一夜明けて、翌日。

 呼び出されたのは、俺だった。


「まずは名前を聞こう」

「俺の名はショウ。スイザリアの銀札(Bランク)冒険者だ」

「その銀札(Bランク)が、何しにベルナンドまで来た?」

「ギルドマスターからの特命で。ゴブリンの王国についての調査と、その内容をローズヴェルト側に提供することが目的だ」

「何故スイザリアの冒険者ギルドが、ローズヴェルトに利する行いをする?」

「人類の国家として敵対をしていても、魔物に対しては共通の敵だ。魔物の脅威に対しては、国境を越えて協力するのが冒険者の習いだからな」

「それを額面通り信じろと? 我々ローズヴェルトの民としては、スイザリアがゴブリンたちを誘導してあの地を占拠させたと言われた方がしっくりくる」

「魔物を支配し誘導する方法があるのか?」

「ドレイク王国は、一定の範囲で魔物を支配し軍に組み込んでいる。が、この研究は本来スイザリアが始めたものらしい。なら、スイザリアの研究は、ドレイクより進んでいると考えても不思議ではあるまい」


 ……やっぱり諸悪の根源は、〝魔王(サタン)〟だった件について。

 〝魔王(サタン)〟がスイザリアの研究を盗んだのか、それとも独自研究で追い越したのかは知らないけれど。しかも、魔物(カラン)王国の背後に(ドレイク)王国があると考えれば、この取調官の想像はあながち穿(うが)ち過ぎとも言えないのだし。


「さすがに、軍の上層部や王家政府の考えていることまでは知らないよ。だけどギルドとしては、魔物の王国の存在を認める訳にはいかないって言っていた。可能なら、ベルナンドの冒険者ギルドに出向し、対カラン(ゴブリン)王国戦に協力せよ、とも言われている」

「フム、ここまでのことは昨日の男の供述と矛盾はない。なら次だ。

 どうやってリュースデイルの関を超え、どうやってハティスを通過した?」

「リュースデイルは、地元の人たちが使う林道を使った。ハティスは、ドワーフの集落を経由してドワーフが使う林道を通ってここまで来た。疑うのならドワーフに問い合わせてくれ、『〝ア=エト〟という者がベルナンドに来ているが、知っているか?』とな」

「ア=エトとは?」

「俺のもう一つの名前だ。ドワーフの集落では、ア=エトで通っている」


 そこまで言うと、取調官は近くのメイドさんに何かを告げ、メイドさんは一旦席を外した。そして少しの後、違うメイドさんがやって来た。


「もう一度問おう。どうやってリュースデイルの関を抜けた?」


 新たにやって来たメイドさんから、何かを聞いた取調官は、改めてオレに同じ質問をしてきた。


「告げたとおり、地元の人たちが使う林道を使った」

「途中、破棄された集落が無かったか?」

「ああ、あった」

「どうやってそこを通り抜けた? あそこには大鬼(オーガ)が陣取っていたはずだ」

「そのオーガを撃破した」

「嘘を()くな。お前たちの貧弱な装備で、どうやってオーガを(たお)す?」

「嘘は吐いていない。俺たちが斃したオーガは、素材としてドワーフの集落に提供した。こちらもドワーフの集落に確認を取ってもらえばすぐにわかる」

「いい加減にしろ! お前たちがそうやって時間稼ぎをしていることに、気付かないと思ったか? 前線では、お前が稼ぐ一呼吸ごとに、兵士が一人死んでいるんだ。貴様の自己保身故の時間稼ぎを、俺たちが認めると思ったか?」

「無駄に時間を浪費しているのはアンタらだろうが! 一呼吸に一人だと? ゴブリンどもはそんな悠長なことはしていないさ。一呼吸で数十人、数百人が殺されている。これ以上無意味な犠牲者を出したくなかったら、すぐに俺たちを解放しろ! そして領主との謁見を認めろ!」


 と、俺が言った途端。取調官は問答無用で俺に殴りかかってきた。

 今の俺は、それを避けることも、クボタン(柏木から借りた)で迎撃することも出来る。が、敢えて受ける。

 その勢いで、取調官は俺に馬乗りになり、しばらく殴り続けた。


「それが、お前の、正体、か。領主、様に、害を、なす、ことを、許すと、思った、か?」


 殴られながらも、〔再生魔法〕を発動させている。〔再生魔法〕はゆっくりとしかその効果が(あらわ)れないが、現在進行形で殴られている時は、それゆえ不自然さなく治療が出来る。残念ながら、〔再生魔法〕では痛みをキャンセルすることは出来ないけれど。


「その辺になさってください。これ以上は聞きたいことも聞けません」


 (そば)に控えるメイドさんが、止めに入った。それで、この尋問は取り敢えず終わりとなった。

 けど、一つ疑問。


 このメイドさんは、カラン(ゴブリン)王国の背後に(ドレイク)王国がいる事を知っているはず。だとしたら、何を考えているんだろう?

(2,829文字:2018/05/07初稿 2018/11/30投稿予約 2018/12/31 03:00掲載予定)

・ 「冒険者ギルドのギルドマスター」は、平民ですが官僚扱いです。その為、身分は準男爵に劣りますが立場は貴族に準じます。軍に於いては、冒険者たちを直接指揮するときは中隊長扱い、魔物災害(スタンピード)に対する都市防衛戦に於いては現場指揮官(将軍)扱い、そして平時の身分としては上級士官扱いとなります。

 今回モビレアギルドのマスター・マティアスは、書状に於いて公爵の名前と紋章が附記されている為公爵の閣僚扱い(子爵級)となり、その特命冒険者は公爵家の家紋を背負っていることになります。

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