もう一つの完結
「ん~~~っ!!」
茜色に染まる空の下で葉音先輩が伸びをした。
「終わったね〜。」
舞台はこれ以上ないほどに大成功だった。
数時間経った今でもあの拍手の音が耳に残っている。
「打ち上げにでも行くか?」
「いいですね!ぱあっと盛り上がりましょう!」
柊先輩の提案に上月が同意する。
舞台でのテンションが抜けきれていないのかいつもよりテンションが高いように感じた。
「じゃあここはあたしにーーー」
そう言いかけた葉音先輩の言葉が不意に止まる。
葉音先輩はある一点を見つめたままパッと動きを止める。
「葉音。」
その視線の先にはーー
「...お母さん......」
女性はスっと歩き葉音先輩に近づく。
「...帰ろうぜ。」
ポンと俺の肩を柊先輩が叩く。
「そうですね。」
ここに俺達がいても邪魔になるだけだ。
これは葉音先輩のーー2人の問題なのだから。
「一花先輩、行きましょう。」
心配を隠しきれない様子の先輩を促し4人で歩く。
「きっと大丈夫です。...すれ違いは、きちんと確かめ合えばすれ違いじゃなくなるから...」
「朝陽君...うん、そう、だね。」
チラッと後ろを振り向くと涙を流した葉音先輩が母親に抱かれていた。
その声は微かに聞こえる。
どうやら上手くいったみたいだ。
「こうして俺の初めての舞台は幕を閉じた。」
「椎菜先輩!変なモノローグ入れないでください!?」
「あら、由真くんの顔から推測して言っただけなのだけれど違ったかしら?」
「ち、ちちち、違いますよっ!?」
「朝陽君。声裏返ってるよ?」