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当日の朝

時の流れというものは早い。


今日は公演当日。俺にとっても初めてになるステージ。


俺はその舞台となる文化センターの入口の前に立ち動けないでいた。

普段は何も気にしないでくぐっていたそのエントランスがやたら大きく感じる。

まだ本番には早い...どころかまだ一般開場もされていないというのに心臓はバクバクだった。

とにかく落ちつこうと深呼吸を繰り返す。


傍から見たら完全に変な人だった。

早朝、誰もいない文化センターのエントランス前で深呼吸を繰り返すだなんて...

「あら、おはよう。」

「...ッ!?...ゴホッゴホッ...!!」

突然背後から何者かに声をかけられついむせてしまった。

咳き込みながら振り向くとそこには最近よく会うサイドテールーー

「お...おはようございます。椎菜先輩。早いっすね。」

「あら、そうでもないわよ?ただの日課の散歩だもの。」

「こんな場所までですか?」

椎菜先輩の実家である『よしき書店』からここまで車でも20分ほどかかる。

「今日は距離を延ばしてみたの。」

そう言い先輩は後ろを向き手を振った。

「?」

その行動の意味が分からず先輩の後ろのほうに位置している駐車場に視線を向けると俺がいつもお世話になっている『よしき書店』の店主、そして椎菜先輩のお父さんが車の脇に立って手を振っていた。

「歩いて来たんじゃないのかよ!?」

つい敬語も忘れてツッこむ。

「あら、ちゃんと日課はやったわよ?今日も朝起きて自室をぐるぐる回ったわ。」

「それ散歩じゃないですから!?...っていうか毎日そんなことやってんですか!?」

「そんなわけないでしょう。冗談よ。」

「でしょうねぇ!!」

本当、この先輩は本気と冗談の区別がつかない。

言っていること全部が冗談なんじゃないかとさえ思える。

「でも緊張は解けたでしょう?」

「そ、そういえば......」

いつも通りのノリの先輩に大声でツッこんでいたからか固まっていた体がほぐれている。心臓もいつも通りに脈打っていた。

「じゃあ、行きましょうか。関係者入口はこっちよ。」

「あ、は、はい。」

落ち着く暇もないまま俺はスタスタと歩き始める先輩について行った。



「おはよう。」

「おはようございます。」

割当てられた控え室に椎菜先輩に続いて入る。

割と早めに来たはずなのにそこには既に俺以外の全員が揃っていた。

「朝陽くんおはよう~。椎菜先輩もおはようございます。来てくれたんですね!」

葉音はのん先輩が台本から顔を上げてニコッといつも通りに笑った。その顔にはあの放課後の暗い影はない。

葉音先輩に続いて他のメンバーとも挨拶を交わす。

「よし、じゃあ全員揃ったね。まだ時間もあるし最終調整しようか!椎菜先輩、監督お願いしますね。」

「分かったわ。」


そして通し練習が始まった。

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