〇〇 門と壁
―――芹沢戒が次目覚めた時にまず目に入ったものは、大きな門と城壁だった。
―――なんだこりゃ。
錆が出ているが、それでも強固そうな金属の門。そして、その横にまっすぐにのびる石とレンガを複雑に組み立てた壁。
そして、その門に大きく“B2”と書いてある。
なんだこりゃ。
あの仏像は「異界の地」といっていたが、Bも2も前の世界にあった字である。異界への転生だと考えたらもう不審な点だ。
「B2……」
ぱっと思いつくのは鉛筆の固さだが、
そもそもここは異世界。鉛筆があるかどうかが謎だ。
逆を見ると、門の前には大きな目抜き通りになっており、その左右には様々な建物が建っている。そのほとんどが木造で、現在の日本の建物とは構造が違うことが見ただけでわかった。
どちらかといえば西部劇とか、そっちに出てくる街並みに似ている。
―――少しわくわくしてきたぞ。
と、思う反面、この世界で生きていかないといけない不安もある。
この街がいわゆる“B2”なのか?それとも、“B2”とは別に意味があるのだろうか。
街には行商人や主婦、農夫など様々な格好の人が行き交っている。
話を聞いてみて、まずは情報を得たほうがいいだろう。
が、そうなった時にかんがみるのはこの格好である。
あの仏像。ご丁寧に、シャツとパンツのみの格好でこちらに送ったらしい。
この格好で誰彼かまわず話しかけて大丈夫だろうか。自分自身も恥ずかしいという気持ちもあるが、保安官みたいな人に捕まってしまうのかもしれない。
ふと、道の端でよたよたと進んでいる老人を見つけた。
ぼろぼろの布を一枚体にまとい、重そうな麻袋を背中に担いで進んでいた。背骨は曲がり、顔はヒゲだらけ、何ヶ月も洗ってないかのような汚らしい姿だった。
―――あの人なら自分のこの姿に似ているからいけるんじゃないか。
「すみません」
「んあ?」
老人はゆっくりと振り返る途中で体勢を崩した。戒はあわてて駆け寄り、麻袋を支える。
「唐突にすみません!ここがどこか教えていただきたいのですが」
麻袋をそのまま担ぎ上げながら単刀直入に話に入る。
「ここがどこかだって?」老人は目を丸くしながら答える。「ここは、B1最南の街。ホメラナイトだが……おぬしは誰じゃ?」
B1最南の街だと。“B2”ではないのかここは。
思っていたあてが外れると同時に、B2が何かが少しわかった気がした。
つまり、ステージ名なのだ。
ここは、始まりのステージ“B”の中の“1面”なのだとしたら。
そして、ここで行われることを乗り越えた先にあるのが“2面”だとしたら、ここは最初の目的は“B2”に行くことなのではないか?
全て推測の域だが、信憑性はそれなりにあるような気がする。
―――そして私は……
正直に答えても信じてもらえる保障もなく、なんと言うべきか非常に迷う。
「私は、北の方から来た旅人だ。こんな大きな壁を見たのは初めてだ。ここがどんなところかを知りたい」
怪しいことを言っているだろうか……しかし、核心を突いていかなければ解らないことばかりだ。
「北……もしかして、おぬし、外から来たのか」
老人は怪しむように戒の全身を見た。
「よかろう……こちらに来い」
そう言うと老人は路地裏の方に入っていった。
あわてて追いかけていくと、人目につかないところまで来て、老人はきびすを返し、戒に向き合った。
「わしの名はアルカバル」
老人は麻袋を置き、背筋を伸ばした。途端、今までの印象がガラリと変わった。
すっと伸びる背は、戒よりも高く、全身は細いが鍛えられた筋肉に覆われていた。
顔はヒゲだらけで相変わらず汚らしいが、その奥から覗く双眸は力のあるものだった。
「元、勇者だ」




