表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

始まり 的な?

漫画業界の流行と言うものは、非情で、残酷で、物悲しい。


最初は売れていても、読者の心は簡単に離れ、そして最終的には打ちきりが待ち構えている。


そして漫画家歴8年の俺も、その流行に勝てなかった一人であろう。

俺の力が無かったばかりに俺の作品『 The end of the story』は連載5年目にして、呆気なく終わった。


王道ファンタジーではあったが、様々な趣向を凝らし、あの手このてで生き残ってきた。


俺の人生の5年間は The end of the storyと共にあり、 その時の俺はThe end of the storyそのものであった。




だけど終わった。




俺のもとに残ったのは、未だに描かれていない、設定や資料、キャラクターの原画。どれもこれも思いでのつまった、俺の大切なものだ。


俺の作品を愛してくれた人、支えてくれた人、気に掛けてくれた人。たくさんの人に見守られながら育ったこの作品を、俺が終わらせた。不甲斐ない俺のせいで終わったのだ。




悔しい 悔しい 悔しい 悔しい 悔しい 悔しい 悔しい!!!!




あまりにも感情の無い声が、部屋の中で静かに、そして力強く紡がれていく。そして、その果てに涙のかれた、嗄れた声で最後に一つ。



悔しい。



と無意識に、無感情に、まるで何かにとり憑かれたようにポツリとこぼれ落ちた。


全ての感情を吐き出して冷静になった頭で、少しこれからの事を考えてみると、全く未来設計が上手くいかない。思い付く未来には必ずThe end of the storyが何処かに在って、離れようとしない。いや俺が無意識のうちに離そうとしないのだ。


心は未だにあの物語の中にある。それを実感させられる。


もしも、願いが叶うのならばきっと俺はThe end of the storyの続きを描かせてもらうことを願うのだろう。いくら見上げるほどの金塊があったとしても、俺は目もくれずに掴みとる自信があるね。


気分転換にと机を片付けることにする。さっきまで泣いていたから所々汚れているし、あちこち、ぐっちゃぐちゃになっている。それはもうひどいもんだ。


散らばっていたゴミを捨て、描きかけだった原稿をファイルの中にしまっていく、そして最後の一つとなった原稿の束を見やるとそこには俺の描いた記憶にはない題が銘打たれていた。その名も『Another』


The end of the storyの番外編と言うことだろうか?この話だけは俺は描いた覚えがないのだが・・・。中を見ればわかるかな?


パラリパラリと捲っていく、しかし、中は白紙だった。


何も描かれていない、インクの後も無い、マッサラサラの白紙だ。


全てのページを見終わって、不揃えになってしまった束を、机にトントンと叩きつけ、縦と横を整える。


思いがけない発見だったが、思いの外がっかりした内容だったな。


それにしても・・・・・


「『Another』、か・・・・・」


俺の構想の中にはなかった番外編と思われる物語。描くとしたらどんな風に描こうか・・・・・・。脇役たちをピックアップするのもいいかな。もしかしたら俺自身があっちの世界に行くのもいいかもしれない。うん、適当に言っただけだけど中々に良さそうだ。あっちの世界を漫遊して、色んな出会いを、俺目線で描く。新しいかもなそういうのは。


干渉に浸りながら、叶うことの無い夢を夢想する。そしてちょっとだけ空しくなってきたところで、苦笑しながら、空の原稿を机の上に置いた。瞬間だった・・・・・・。


突然原稿が光出したのだ!!


目も当てられないほどの光量で、視界は潰された。


そして幾ばくかの後に、原稿を中心として強風が吹き荒れ。部屋の中はぐっちゃぐちゃになる。折角綺麗にしたのに何と言うことだろう。先ほどまでの苦労は一体何処へ?と言う感じだ。回りからドッタンバッタン!!と破壊音が鳴り響く。不幸中の幸いとでも言えばいいのか、視界が瞑れているせいで殆ど何も見れないのが救いか、今何がどうなっているのか知らずにすむ。


何秒か、それとも何分か、もしかしたら何時間かもしれない時間のあと、ようやく光が収まり、瞳を開けると、そこには・・・・



ドラゴンがいた。


『ギャァァァァアアオォォォォォオオォォォォォ!!!!』


目の前で聞かされたせいで、ドラゴンの唾液が全身にぶっかかる。そして何と言っても耳が痛い。ふざけるなと言いたいほどの爆音を耳元で聞いたのだ当たり前か。とてつもなく頭がクラクラする。しかし、俺も俺で我慢できないので、さっきから俺のなかで駆け巡る衝動を吐き出す。


せーーーの!!


「何でーーーーーーーー!!!???」









拝啓お母様、僕は異世界に来たようです(混乱)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ