Trick or?
俺、御堂 健には幼馴染という存在がいる。
名前は藤井 夏帆。成績優秀で容姿端麗。その上人当たりも良い。なんなんだこいつ。
物心ついた頃から一緒で高校生になった現在も同じ学校に通い、家もお隣さんとマンガや小説のような関係だ。
兄弟同然で過ごしてきたからかとても仲の良い俺たちだが、相手に不満がないというわけではない。
特にその高すぎる行動力だけはどうにかしてほしい。毎度毎度イベントごとに巻き込まれ、毎度毎度苦労する。バレンタインの時などそのせいで、そのせいで!チョコは彼奴からしか貰えなかった。そんな今日はハロウィン。日本にはお盆というものが存在するし、ケルトの祭りをなぜ行うのか、理解に苦しむが、どうせ何かしらやらされるのだろう。
そんなことを考えている今も階段を駆け上がる音が聞こえてくるほどだ。
「健君!ハロウィンですよ、ハロウィン!早速近所を回ってお菓子をもらいに行きましょう!」
「貴様は阿呆か、歳を考えろ。そんな格好したやつと出歩きたくない、ご近所さんに変な目で見られたどうする」
いや、まぁすでに生暖かい目で見られているから手遅れな気もするが。
「大体なんだその格好は」
「魔女ですよ魔女!似合いますか?」
確かに、お前のようなスタイルの良い奴が着れば似合うだろうさ。だが、
「なんでそんなに露出が多いんだ。痴女か?」
「違います!…はぁ、わかりました」
ヤバい、こいつがこんな風に言い出す時は大体ろくなことにならない。
「その代わり」
「その代わり?」
ほらみろ、やっぱりきた
「TRICK or treat!健君が私にお菓子を与えてください。それが無理ならイタズラします」
「なんだそんなことか、ほら」
「え?」
「お前とどれだけ長い付き合いだと思っている。どうせ言われるだろうと思って用意している」
綺麗に包装された手元の物体。ハロウィンにちなんでカボチャクッキーだ。ちなみに手作り。
「わーカボチャクッキーですね、すごい美味しいですよ!」
そうかそうか、それは良かった。全部食いきったみたいだな。
「なぁ夏帆」
「なんですか?」
「TRICK or treat」
「え?」
「だから、お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞ?」
まぁ持ってないだろうが。ざっとさっき見た感じなかったし、あったとしても人からもらったものだろう。
「うぅー」
案の定なかったようで、涙目になっている。
「無いならイタズラだな」
そう言って夏帆に近づいて、
「んむっ!?」
一気に唇を重ねた。
そのままベットに押し倒す。
「こんな格好で、男の子部屋に来てんだ、どうなっても文句は言えないだろう?」
「え、えぇ!?ちょ、ちょっと何してるんですか健君!」
「押し倒してんだよ、うるさいな」
「いや、そういう何をじゃなくてですね...なんでこんなことしてるんですか!」
「あぁもうごちゃごちゃ五月蝿い!」
無理やり唇で夏帆の唇を塞いだ。
この程度で『イタズラ』が終わるわけ無いだろうが、逃がすかよ。
TRICK or treat!
素敵な文句ですよね。でも気をつけないとこんなしっぺ返しを食らうかもしれません。
皆さんもお気をつけください